22日、ガーデンが東証スタンダード市場に上場した。初値は公開価格の3200円を4.37%下回る3060円を付け、2895円で引けた。M&Aを活用して飲食事業を展開しており、「横浜家系ラーメン壱角家」や「山下本気うどん」といった店舗の運営や保有するブランドのフランチャイズ展開、不動産事業を行っている。ラーメン事業が売上高の66.5%(2024年2月期)を占めており、そのほかにレストランやステーキ事業などを営んでいる。川島賢社長が東京証券取引所で上場会見を行った。
-初値についての印象は
基本的に初値を当社がどうこう言う筋合いはないわけで、あくまで他人が評価することなので、それを真摯に受けとめてどう考えるかなので、コメントはない。
-上場できた率直な感想は
上場は非常にうれしいし、周りの方々のサポートがないと上場できなかったと感じていて、その気持ちに応えたいし、感謝を伝えたい。ありがたいということと恩を返していかないといけないという気持ちが非常に強い。上場の準備で従業員が非常に大きく成長したし、今までやる気のなかった従業員が気持ちを切り替えて頑張ってくれた姿を見てうれしかったし、感動した。
-今まで企業再生型のM&Aをやってきた会社にとって今回の上場の目的は。また、成長の考え方もこれまでより大きなものになってくるのか。「外食産業のトップになる」と言っているが、上場会社だと売り上げ1兆円ぐらいのゼンショーホールディングスがあり、例えばその1兆円を超えるといったものなのか
予算を達成しないといけないので、M&Aに関しては赤字の企業を黒字化するのが最善だが、黒字の企業の収益を何倍にもするものも企業再生と考えている。M&Aについては、うちが取りかかればすぐに良くなるよ、という案件を探す予定だ。ブランドにこだわるか、ブランドにこだわらないでリーズナブルに変えて、シナジー効果はあるのか、海外展開があるのか、そういった将来性、展開性があるのかなど様々な側面でいいものがあれば買っていく。
-海外への展開はあるか
東京・渋谷のスクランブ、ル交差点近くにビルを1棟、新宿歌舞伎町だけで27店舗も展開しているので結構問い合わせはある。ただ大きな企業から問い合わせはまだない。ブランド力もないし非上場だったし、誰も知らない会社なわけだから仕方がなかった。もし今大きな会社から声がかかって進めていたとしても交渉力がない。
私は日本の企業の下手というか弱い、もったいないのは海外との条件交渉がうまいところが少ないことだと思っている。当社は今回上場してさらにブランド力を高めて企業価値を高め、日本の会社で何かとんでもないのがいるぞというところを認知されたい。そうなっていくと、向こうから声をかけてくる。こちらから声をかけるとどうしても向こうが上になってしまうが、向こうから話が来るまで日本でこれだけの外食産業があるんだということを示したい。
交渉力を高め、海外の優良企業と合弁会社を作りたい。そういった力がある会社であればその国内で展開するスピードがめちゃくちゃ速いと思う。僕のイメージだが、米国のマクドナルドの海外展開の日本版のようなものを展開したい。日本でそれをやったことがある会社は今までにない。
-飲食業界は人手不足が言われているが、ガーデンではどうか
「山下本気うどん」は、女性誌などのメディアに取り上げられたり、有名人に来てもらったりしているので非常に人気があり、スタッフは集まりやすい。
ただ、ラーメン店はあまり良くない印象を持たれている方が多く、人材が非常に足りない。困ってはいるが、今、タイミーを活用していて、その利用者はリピート率が6割以上と高く、利便性が良かったり働きやすかったり、マニュアルができているのでオペレーションもきちんとできているので、「もう一度働きたい」という方が多く、こちらから声をかけることもある。当社の専属のアルバイトになって、正社員になって、となると非常に強い。新卒より中途の採用が多く、大手の外食企業にいた人が結構多い。大手の上場企業の外食企業で働いていた人が当社の労働環境の良さなどに驚くこともある。そうした人が元いた職場に声をかけて引っ張ってくれることがあり、これは他社にない強みだ。
それから、外食業界は一般的に賞与が出ない。朝礼で何年も前から言っていることで、利益率をトップにし、その過程で賞与も必ず2倍3倍出す、いついつまでに出すということを約束してきた。
初値については、タクシーのなかで出だしが少し悪そうだなと証券会社の人と話していた。僕としては証券会社の営業マンがいたり、期待していた人もいるので、ある程度責任を果たせなかったのかなという思いはある。だが、責任っていうのは、今後上場してこれから数字を出して右肩上がりにしてばいいだけなので、僕は初めは低くて良かったと思う。決算説明会のときに説明通りの数字だと思う投資家を裏切ることになることはあると思っていて、決算通りの数字を出しても株価は下がることがある。右肩上がりの数字でも1円でも高い利益を出していく。
また、上場を目指すうえで従業員に言ってきたのは、数字よりもまず1番にするのは守りだというところ。利益は重要視しても守りが薄くなったら絶対それは上場をやめたほうがいいと。しっかりと利益を出していき、右肩上がりになっていけるような信頼を得られれば、必ず投資家がついてきてくれると思ってるので、そういう企業になっていきたいと考えている。
―外食企業は厳しい状況が続いていると思うが、売り上げが高いのはなぜなのか、それをどう実現してきたか。また今後の強みとビジョンについては
当社の利益率が高いのは、利益率の高い20のブランドのなかからさらに利益率が高いものを選んでいるから。ただ、コロナが過ぎたころにだめになるだろうという自社ブランド躊躇することなく何十店舗も閉鎖した。利益が薄いブランドを残していても仕方ないというところもある。
それから、利益が出やすい立地を選べばいいだけっていうこともある。そうした立地ではもちろん勝てる。でもさらに利益が高い立地にいいブランドが入ればさらに利益がでる。そこに従業員のQSCAやセールス力が向上すればさらに良くなる。物件や仕組みが悪いのに従業員が汗水たらしてセールスが頑張っても利益は出ない。だったら利益が出る土台を、仕組みを作ったうえで従業員が頑張って、外食でトップの利益率を出している。
いろいろな会社の事業再生をしてきた。数字を良くしてあげると、赤字を黒字化転換していくと、どんどん良くなって元気が出てきて、そのなかにおいて約束した通りに給料を上げて賞与も出すようにする。だからそうした事例を多く見てきて失敗も含めてあらゆる企業のケースを見てきた。リーマンショックもあったし、6年前には僕が会長職だったときにつぶれそうになったし、それ以外でもつぶれそうになったことや、もうだめだと思ったことが5回くらいある。当社は何が得意かっていうと、もう明日がないってくらいの失敗をしてきたことだ。それに加えて他社の失敗を見て、自分の会社の再生もしている。経営上そういうことで追いつめられることもあったからノウハウができたし、追いつめられたので思いっきりメスを入れることができた。
目的のために頑張らないといけない。目的をしっかり持って、この会社の事業から離れるまでは僕は社長であると言っている。あと20年くらいやろうと思っているが、必ずやる。社長として絶対にやり遂げるという責任を持ち、あとは、今までにない外食産業の在り方であったり、労働環境の実現だったり、それをするために何をしなきゃいけないかというと数字を出さないといけない。労働環境の改善や、今まで外食企業のあり方でなかったものを1番やりたくて、そのために上場した。上場は数字を出す手段だ。先ほど話したが、数字が出ないと何もできない。外食産業に恩返しをするためにも数字が出せないと影響力も持ち得ない。
ー今後の出店ペースを上げていく予定はあるか
ほかの外食産業でよくあるのが、上場前と直後に急速に展開をして、何十店舗も出店して、利益率の額がそこでピークになって下降していく会社が昔から多いという印象がある。当社はこれから利益率を上げていくので、無理な出店はせず、しっかりと利益が出るような出店しかしない。年間だいたい10店舗から15店舗くらいで来年、翌年と続けていき、出店ペースは変えない。
出店のペースが低いから成長できないと言われることがあるが、実際は成長できるM&Aがある。しっかりとした店舗の物件を取得し、今以上の利益を積み上げて企業価値を高めていくなかで、より良い条件でM&Aをすることが可能だと思っているので、それによって将来的に成長できると思っている。
-直営店以外にフランチャイズもしているがその展開を今後どう考えているか
出店予定に関しては、まだまだ1都3県中心に乗降客5万人以上の駅前で空いているところがあるし、新宿だけで27店舗内に構えてカニバリがない。だから出店しても出店しても既存店が減少することはない。東京の渋谷、新宿、池袋でも出店の余地がある。年間10店舗から15店舗の出店と言いながら出店の余地が100店舗くらいあるので、十分すぎるほどだ。フランチャイズに関しては実はあまり力を入れていない、というのは直営店で儲かってしまっているからだ。
ただ、海外は土地勘がないのでフランチャイズという形で進めるが、国内においては直営の爆発的な利益が出るような物件を計算して探すと同時に、フランチャイズについては申し込みがあれば選別する。フランチャイズの申し込みがあったらしっかりと話をして、必ず儲けてもらうというのが信念なので、そうした立地で出してもらう。増店の話が入ってきており、千葉などで増えている。
外食業界でもガーデンを知っている人が非常にいない。収益状況も見られないし。だから、上場して業界の人たちが騒然としているというか、信じられないと思っていると思う。ガーデンがそんな利益を出していたのかと受け止められていると思う。そうなると実績があることでフランチャイズも集まってくる。「山下本気うどん」も問い合わせが来ていて、上場承認後、さらに多くなってきている。
「山下本気うどん」も17店舗で検証しなければならない部分があるので、フランチャイズを拡大するよりも、来月か再来月に岡山市に「山下本気うどん」がオープンするが、そこまで直営でやってきちんと利益が出るのであれば、フランチャイズとして募集ができるようになるので、しっかり増やしていきたい。特に地方は仙台とか福岡とか問い合わせがあれば「山下本気うどん」は進めていきたいと思っている。
-経営理念として大事にしていることは
心の在り方と行動だけだと言っている。いつも朝礼では、現場に対してどういうテクニックで売上利益を上げるといった話はせず、笑顔でポジティブだけでいいと伝えている。これをやっていれば売り上げが上がるだろうと信じているのでそれしか朝礼では言わない。
経営陣で利益が出る仕組みを作り、頑張って数字が上がる。経営面でしっかり仕組みを作って、笑顔でいて本当に売り上げが上がると信じている。やっぱり元気があるといいものを呼び込むので、不平不満を持つのをやめようと。6年前、会社がつぶれそうなときに不平不満だらけだったが、今はほとんどいない。不平不満を言わない人たちばかりが集まっているので、言いづらい。そういう環境の会社になってきたのはすごくうれしいし、ありがたい。だからチームに元気でポジティブに考えていくだけでいいよと言う。あとは行動。元気でポジティブでも行動しなければ意味がないというのは現場で話す。元気で笑顔でみんな一緒に行動していると手を抜けない。手を抜けば自分に返ってくる。これをやってるだけ。
-配当について具体的な考えは
決算説明会のときに公表したい。いろいろ考えている。何が株主にいいのか、投資家に評価してもらえるのかを考えたい。だから、優待券だけかもしれないし、配当を増やすことなのか、ほかのことなのかもしれない。
[キャピタルアイ・ニュース 松尾 さゆり]
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