株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:Sapeet<269A>、プロの技をAIで

29日、Sapeetが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1500円を52.33%上回る2285円を付け、2510円で引けた。「Expert AI」で専門的で暗黙知が多い「顧客のコア業務」をデータと論理によって分析・可視化。デスクレスワーカーや健康寿命の延伸を支援するサービスを提供する。築山英治社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

プロダクトやソリューションで培ったデータやAIの技術アセットを活用して、物販や集客、人材などのプラットフォームビジネスにもチャレンジしていくと話す築山社長

―初値の受け止めは
ある程度評価されているのはそのまま受け止めつつ、一喜一憂せずに適正に開示をしながら業績を作って、安定的に成長していきたい。それらを通じて引き続き株主や株主候補の人たちの期待に応えられるようにしていきたい。

PKSHA Technology<3993>が資本参加した際の決め手、同社はSapeetのどのような点を強みと見たのか
M&Aに至った背景としては、当時、カラダ分析の画像技術のところを主にソリューション提供していたところで、彼らとしては、そういった画像をベースに3Dアルゴリズムを掛け合わせたような技術がなかったので、そこを魅力的だと思ってもらえた。また、そのような技術を持つエンジニアが揃っているところが魅力に映ったと聞いている。

―主力プロダクトである「シセイカルテ」はどういうもので、顧客は誰でどのような課題を解決しているのか
「Expert AI」のなかでも、整形外科医や理学療法士、柔道整復師など体の専門家の姿勢分析の専門ノウハウを再現したAIを提供している。全身写真を撮って、その人の姿勢を点と線で表して定量化し、正常と比べてどの程度ずれているかをグラフ化する。

そのずれの組み合わせから、姿勢をカテゴライズしたものを可視化している。カテゴリーしたものをベースに、その人に合ったエクササイズやトレーニング、店舗で売られている商品を勧めることができる。そういった機能を通じて、顧客の姿勢がどのように改善したかという効果の可視化に寄与している。

それらによって利用者に「次、また通おう」と思ってもらい、回数券の購入率や体験入会からの会員転換率といったところの数字で顧客の売上に寄与する。そういった販売促進の機能を持つシステムだ。

主な導入業種としては、接骨院や整体院、カイロプラクティック、フィットネス、パーソナルトレーニングジム、歯科医院などが使っている。具体的にはフィットネスクラブのティップネスや、カイロプラクティック大手の全国健康生活普及会、整体のカラダファクトリーが導入している。

―寝具や美容室、フィットネス・パーソナルジム、整骨院、鍼灸院、整体院、歯科医院などではプロダクトの投下が済んでいるのか
その通りで、ソリューションやプロダクトで(成長可能性資料中で)色濃く分けられている。

―LLMは内製化しているのか、外部のものを使っているのか
自社のものもあり、基本的にはAPIで活用できるものを使うというのがプロジェクト単位である。ケースバイケースによって提供方法を変えている。

―成長戦略に「LLMの探索」とあったが、どのような方向に広げていきたいのか
ウェルネスの領域の体の分析や、コミュニケーション領域など、比較的領域やユースケースが絞られる。そういったユースケースではとても使えるものにチューニングをして、研究・開発している。

―海外展開はある程度メドが付いているものなのか。進出先や業界について聞きたい
例えば、台湾やインドネシア、ベトナム、米国といった国の代理店から声がかかっており、実際に契約が進んでいるところもある。そういった代理店にまず導入してもらっているケースもある。

―業界は
整体に類するようなものや、介護に近いようなものの業種で使ってもらうことが多い。

―業績や財務に関して
ソリューション事業から始まってプロジェクトの研究・開発を続けながら、これまで高い成長性を確保してきた。利益に関しては投資回収フェーズに移っている。前期は赤字幅が圧縮できている。また、今期に関しては黒字化の実現に向けて、着実に進捗している。

―今期に黒字化の予定か
そう見込んでいる。

―(資料の)どこに書いてあるのか
佐藤琢治取締役:今期についてはまだ開示していない。2025年9月期に関しては、決算が閉じた段階なので、決算発表の際に合わせて解説する予定だが、そこに向けて、前期である2024年9月期に関しては黒字化に向けて順調に推移している。

―黒字化は営業黒字化か
築山社長:その通りだ。

―積極的な投資継続と売上増による赤字幅縮小について
佐藤取締役:我々のコストの大部分が労務費や外注費で、売上原価を含めて人に関する部分のコストがかなり大きな割合を占めている。この部分に関しては、必要な成長投資と考えており、引き続き投資をしていく方針だ。一方で、売上高の増加に伴い固定費が吸収されてくるので、この部分も中長期的な黒字化に関して順調に進んでいる。

―成長資金をどのような領域に投資するのか
引き続き研究・開発するアルゴリズムを増やし、AIプロダクトとして顧客を支援できる業務の範囲を広げていくところに主に資金を充てていく。また、それらを実際に開発し、営業するエンジニアやコンサルタントの獲得に対しても資金を使っていくことになる。

―株主還元の方針について
足元で配当などは考えておらず、成長資金は事業成長のために使うことで成長や株価を通じて還元したい。

―M&Aやアライアンスで、足りない要素があればとのことだったが
ソリューション提供では、エンジニアやプロジェクトマネージャーのリソースが大事なので、そういったところを成長ドライバーとして拡張できるようにする。支援業務で、我々が対応できていないマスのところに対して既に取り組んでいる企業や事業があるのであれば、そういったところには興味を持っている。

―エンジニアの確保で工夫している点や強みは
私の出身が東京大学で、私自身がエンジニア。研究室発の会社なので、優秀なエンジニア層に、人ベースの繋がりでアプローチできている。これを継続的に行いつつ、勉強会や採用イベントを通じて繋がりベースでほかの人たちも呼んでもらい、エンジニアの繋がりの輪を広げていくことを通じて採用を継続的に行うことができている。

―サービスは第3次産業向けのイメージがあり、製造業や物流への展開を検討しているようだが、課題になりそうなことは
これまでの顧客基盤にまだないところなので、新規顧客基盤として獲得していくにはハードルがある。やり取りしてきていない状況なので、顧客理解がまだ浅い。やり取りするなかでも、物流や製造業のなかでも、各場面でエキスパートと呼ばれる人たちがいる。そういった匠の技を始めとする技術要素を我々が整理して、一部をAIで再現する、サポートできるようにするのが我々の強みなので、貢献できる部分があると考えている。

―より長期的には、農林水産業など第1次産業に事業が及ぶ可能性はあるのか
これといったところは事例としては少ないが、例えば農業の、「野菜の検品をしてほしい」といった幅広いAIの相談を受けている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事