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上場会見:MFS<196A>の中山田CEO、オンラインでローン選び

MFSが21日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の400円を8%下回る368円を付け、345円で引けた。オンライン住宅ローンサービス「モゲチェック」を開発・提供する。住宅ローン借り入れ可能性の判定や、金融機関ごとの融資承認確率の推定、ユーザーにとってベストな条件の住宅ローン商品の提案などを2015年8月以降行ってきた。不動産投資の総合プラットフォーム「INVASE」も手掛ける。2024年6月期の売上高は19億円程度(前期比22.2%増)で、営業損失は1億2700万円。中山田明CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

少子高齢化だが世帯数は増加しており、住宅ローンの貸し出し残高も増え、市場は大きいと話す中山田CEO

■日本初のオンライン・モーゲージブローカー
―初値の受け止めは
平山亮CFO:初値に関しては、「大変申し訳ない」の一言だ。公募価格400円に対して350円前後で推移したので、我々の事業の進捗に対する株主の非常に厳しい見方が表れたものだろう。我々としてはもう株価を伸ばすしかない、イコール事業を進捗させるしかない。マーケット環境云々もあるが、まずは事業を伸ばす。

―どういった思いで創業し、現在に至ったのか
中山田CEO:オンライン・モーゲージブローカーというビジネスを作ろうとここまで来た。米国ではモーゲージブローカーは一般的だ。そもそも不動産を買う場合に、不動産会社というかリアルターとモーゲージブローカーはきっちり分かれており、不動産のアドバイスは不動産会社から、ファイナンスのアドバイスはファイナンスの専門家であるブローカーからという風になっている。

法律で、不動産会社がローンをアレンジしてはいけないとなっている。日本はそういうことがなく、歴史的にこれまで不動産会社がサービスの一環としてローンの斡旋をしていた。それが当たり前のようになっているが、ちょっと違うのではないか。私は元々米国の投資銀行で、米国の証券化商品のセールスをやっていて、米国のいわゆるMBSというものだが、金利が0.5%下がるとprepaymentと言われる期限前弁済が一気に起こる。

その原因は、皆ローンの借り換えをするので、債権の償還が来る。それが1番大きなリスクで、そういうことを投資家に説明して債券を売っていた。米国の場合は、その動きが凄くドラスティックだ。金利がちょっと下がると皆凄い勢いで借り換えをする。なぜそういうことが可能になっているかというと、ブローカーが間にいる。金利が下がった時に、ローンの借主にどんどん電話をして、借り換えを促進する。

日本はそういうことではなく、元々不動産会社にローンを斡旋してもらったので、家を買った後は誰も何もしてくれない。個人は自分で気付いて、借り換えするしかないので、米国と比べると圧倒的に金利感応度が低い。逆に言うと、高い金利で借りている人が知らないまま、ずっと借り続けている状況が放置されている。我々のようなサービスが世のなかにないから、そうなっている。そこはもっと改善できるのではないか、そういうサービスを作ろうということでやっている。

―上場をいつ頃から検討したのか、資金調達以外の狙いは
起業時からで、ベンチャーファンドから資金を得てこの事業をやっているので、IPOありきで事業を進捗させてきた。

上場の目的だが、資金調達の側面もあるが、それ以外にも知名度の向上や社員の採用に資することもある。そもそも住宅ローンのビジネスをやっているので、金融機関との関係も大事だ。信用力も大事なサービスなので、上場でステージを1つ上げることによって、ユーザーに対しても信用できるサービスを作っている会社と見てもらえる。金融機関との間のいろいろな協業も上場会社であれば1段高いレベルで共有できることもあると見ているので、その辺を加味して上場した。

―なぜ今IPOしたのか
IPOに当たっては、自分たちのビジネスモデルが確たるものとして成り立っていることと、高い成長が今後見込めるところ、そういうステージに来ないとできない。オンライン・モーゲージブローカーとして、今何千件というローンを提供して、単月レベルでは黒字が見えてくる状況なので、日本初のそういうビジネスモデルが一応完成した、ベースとしては完成したと判断しており、このタイミングで上場できるのではないかと考えた。

―会社の規模にしてはベンチャーキャピタル(VC)が非常に分散しているが理由は
この10年間で相当のシリーズをやってきた。最初は来店型で始めて、元々ユーザー課金だった。顧客に料金を負担してもらうビジネスモデルで店舗展開から始めた。最終的にはユーザー無料のオンライン化をして多くの人に使ってもらうようになった。ビジネスモデルのトランスフォーメーションに、かなりの年月を要したので、その間ずっと調達が必要な状況だった。シリーズを繰り返してくるなかで、最終的にVCが多様化していった。

―上場で売り抜けた株主とそうでないところがあるが、投資期間の問題か、今後の事業提携を念頭に残っているのか
平山CFO:基本的には株主はフィナンシャルリターンのみで入っているので、今回の株価と彼らが投資した時の株価を比較すると、今回抜けた株主は利益が出た株主で、残っている株主は損切りになるから出ていない。非常に分かり易くて、今後上がったら当然売り圧力になるが、それを見越して、我々は株価を上げていくしかない。

■金利か団信か
―予断を持って語ってはいけないが、金利に関して、7月にもまた日銀が利上げをする観測もあって、中長期的に見るとかなり低位安定した金利が変わり得る。ローンに関しては、金利が少し上がってしまうという意味で、物件価格が高まっているなかで金利負担もというと事業に関して影響が出てきてもおかしくない。不動産投資ローンに関しては金利が関係あるので、金利がビジネスに与える影響を今の段階でどう見ているか
まず、モゲチェックに関しては、確かに利上げが続くのではないかと言われ、そういう見方もしている。だが、金利動向と住宅ローンの利用は相関していない。子供ができ、あるいは結婚する時に皆が家を買うので、その時に金利が上がっているか下がっているかにかかわらず買うものは買う。

むしろ金利が上がる局面でどういう金利タイプを選べば良いのか、あるいは変動金利で金利が上がっていった時に、毎月の返済額がどう変わっていくのかは、皆関心がある。我々のサイトに来てそういう情報を取っているので、金利の動きはより多くの顧客がサービスを使ってもらえるチャンスになっている。

一方で不動産投資についても、金利が上がる前提として、まずインフレがあって、そもそも国の政策としてインフレにしようということで始めている。超金融緩和をしてインフレになってきて、ノーマルな金融政策に戻していこうというなかでの利上げなので、これまでの政策の通りになって動いているところでは、インフレになり不動産の賃料も上がってくる。

都市部の賃料は最近顕著に上がってきているので、金利が今後1~2%上がったところで、賃料の上昇とそれを受けての不動産価格の上昇に比べると穏やかだろう。不動産投資の熱や意欲は、金利が多少上がっても強いのではないか。

―居住用の住宅ではネット銀行もあり金利の競争があるので、金利以外の団信(団体信用生命保険)やペアローン型団信などで選ぶ顧客が増えている。プラスアルファの情報を今後、顧客に提供する予定はあるのか
団信を非常に重視している。住宅ローンの金利競争は相当進んでいて、0.3%台のローンが出てきていて、その差も0.01%刻みのような競争になっている。0.01%の住宅ローンの金利差によるメリットは、35年の総返済額で数万円レベルになっているので、比較に大きな意味があるとは思っていない。むしろそのなかに含まれる団信のバリューが相当違うのではないか。

いろいろなバリエーションがあり、例えば、がん保険でも50%無料、100%無料で付いている、あるいは三大疾病、8大疾病、全疾病の保障などが金利に含まれていたり、追加の金利を払うことで付けられたり、いろいろなケースがある。

ユーザーがほとんど判断できない状況だ。このメリットを金利換算する。「団信メリット」と呼んでいるが例えば、がん50%の団信の場合はこれを金利換算すると経済的にどれぐらいになるのかを換算して、それを表面金利から引いた実質金利で比較するという機能を提供している。

まずは、「そもそも団信なんてできるだけ軽いのが良い。それよりもできるだけ金利が低いのが良い」という顧客なのか、あるいは「がん団信はやっぱり付けたい」という顧客なのか、「がんだけでなく、三大疾病とかそういう団信を充実させたい」のか、そういうニーズを聞いたうえで、それぞれに合わせた形で最も実質金利が低くなるローンは何か分析して提案している。住宅ローンに保険も含めて提案をしている。

―団信メリットはアプリで今提供しているのか
我々のランキングで団信メリットを見てもらうと出てくる。金利換算した時に付いている団信をどの程度の金利と見ているか確認できる。

―ペアローンに関してもアプリで見えるのか
塩澤崇COO:最近ユーザー数が増えているので、主にはメッセージでのやり取りで疑問を解消できるようにしたい。住宅ローンの借り入れ方は、最近不動産価格が高騰しているので、ペアで、しかも少し背伸びして買う人も増えている。そうなるとケースバイケースでの質問が多い印象だ。住宅ローンアドバイザーが裏に控えているメッセージ機能で、しっかり対応して、「こういった銀行が良いのではないか」と案内している。

中山田CEO:最近、不動産価格が上がってきて、1人では返せないので共働きのカップルが、それぞれペアでローンを組み団信にも入る。ペアローンも最近、「連生団信」と言われる自分だけでなく相手に何かあった時に保険が下りて2人分のローンがそのままなくなるものも出てきている。そういうニーズもある。今やはり不動産価格が高くなって多額の借り入れをしなければならない、返済できるのかという不安が高まっているのだろう。リスクをできるだけ下げたいということで、連生団信も含めて、団信への関心はすごく高まっている。

■インフレに備える投資
―INVASEはアプリで売買を完結するので、一定程度のユーザー数が確保できればかなり広がる感じがする。モゲチェックも含めてユーザー獲得戦略は
モゲチェックについては、今オンラインでリスティングと言われる、住宅ローンで検索した人に対しての露出で上位を占めており、SEOで我々のサービスを知ってもらうこともある。オンラインで住宅を探す人は今後も増えていくと見ているので、そういった集客とあとは不動産会社だ。不動産会社で家を買おうとしている人が住宅ローンを使うので、直接我々サービスを当てていくのが最も効率的ではある。不動産会社経由というのも含めながら、現在モゲチェックを使ってローンを申し込む人が月間5000人程度だが、それを少なくとも数倍、できれば10倍以上にしていきたい。

INVASEは、アプリの登録が今大体数百件レベル、月間200件、多い時は600件ある。それも数千件レベルにしていきたい。その鍵は不動産投資の透明化・見える化だ。資産運用も、株、債券、投信など皆スマホでやりながら、自分の投資している資産がいくらの価値を持っているのか、いくらで売れるのかを常に把握しながらするのが今の流れなので、それと同じようなことを不動産で実現できないか考えている。

不動産投資の1番良いポイントは、借り入れをして買えることだ。3000~5000万円の不動産を、それと同額のローンを借りてほとんど自分のお金を使わずに買うことができる状況なので、効率的な運用ができる。一方で、個別不動産を買うので、その不動産の価値・価格がよく分からない、売りたい時にすぐ売れるのか、どうやって売れば良いのかよく分からない。その不透明性を払拭してあげて、いつでも価格が分かって、すぐ売れる環境を提供できれば、インフレ環境下で投資して資産形成していこうという熱量が高まっているので、より多くのユーザーがいるのではないか。そういう新しい不動産投資のサービスを、INVASE Proを使って広げていきたい。

―INVASEについて。掲載物件は不動産会社と連携してそこで売買しているものだろうが、提携社数は
INVASE全体では30社ほどだ。

―掲載物件数で集客力が変わるが、何社ぐらいと提携していきたいのか
数を増やすところに重きを置いていない。特にINVASE Proというアプリで紹介している物件は、東京23区と横浜市、川崎市内の区分マンションのみだ。それらは我々で「Pスコア」を出せる、スコアリングできる。時価が出せる。自分たちで時価が出せる物件を紹介して、購入して投資してもらった後も価格サービスを継続提供して、その人が売りたい時に、次の買主を常にアプリ上で探しておくサービスをしたい。

今もユーザーから例えば、利回りの高さから「1棟アパートがいい」とか、「地方の一戸建てがいい」と言われることがあるが、INVASEの基本的な考えとしては、個人の一般の人が、不動産そのもののリスクを取ることを勧めていない。

不動産は買ってしまった後は、自分であまり何もできない。それこそリフォームしたり、あるいは民泊に変える、不動産自体を大きく変え、用途を変えて不動産の価値を上げることができる人ならいいが、普通のサラリーマンの人はそういうことをやる時間もノウハウもない。そういう投資ではなくて、常に何もしなくても、価格がある程度一定で、将来インフレになった時に価格上がる物件、区分マンションであれば、しっかりと管理組合があって、管理会社がついている。何もしなくてもマンションは管理されている。

かつ、東京23区あるいは横浜市や川崎市の物件であれば、場所的にも、将来人が住まなくなって賃料が取れなくなるリスクも非常に限定的だ。個別物件で儲けるというよりも、将来にマイルドなインフレが長期的に継続する過程で、不動産価格が下支えされていれば、毎月の返済で借りたローンは必ずゼロになるので、純資産が積み上がっていく投資を勧めていきたい。

■利用者層が年収帯で異なる
―モゲチェックとINVASEの利用者層は、全く異なるのか、それとも重なり合いがあるのか
モゲチェックは住宅ローンなので、年収帯などが広い。ただ、ネットサービスなので、首都圏居住者が6~7割、ほかの都市圏も含めると7~8割が都市部に住んでいる。

INVASEについては、地域は大体同じような感じだが年収帯がもう少し上がる。不動産投資なのである程度の収入がないとそもそもローンが借りられないこともあり、平均年収1000万円を超える。似ているところもあるが大きな違いは年収帯だろう。

―両事業のシナジー効果は、これからどのようなものがあり得るのか
会社としては、今後インフレが進んでいくと想定しており、そのなかでは、住宅ローンあるいは不動産投資ローン、低利で借りられるローンは、できるだけ利用して、それを自分の自宅や投資不動産に変えておくことで将来的なインフレに備えられるのではないか。

モゲチェックを使って住宅を買った人にも、追加で不動産投資ローンを借りるのであれば、借りてもらい投資してもらうのが良い。ただ、年収帯が違っているので、モゲチェックのユーザーのなかに不動産投資ローンを借りられるユーザーが全然いないわけでもない。重なっている部分もあるので、INVASEも紹介していきたい。

■不動産会社で利用促進
―モゲチェックを不動産会社に利用してもらい紹介を受けるような話があったが、不動産会社とMFSとの間では利用料や手数料が発生するのではなく、彼らも無料で使えるのか。それとも何らかのフィーがやり取りされるのか
今は我々から不動産会社に紹介料を支払っている。

―不動産会社と連携するとのことだが、そうすると審査申込あたり顧客獲得コストが上昇するのではないか。
確かに紹介料を支払っているが、ネット集客にもお金がかかっているので、それに比べると不動産会社への紹介料のほうが安いと見ている。モゲチェックを使ってもらい、不動産会社が住宅ローンの説明をしなくても良くなる、あるいは効率的に住宅ローンのオペレーションを回せることになると、不動産会社にとってもメリットがある。相乗効果で考えると、不動産会社で紹介してもらうのがコスト面でも良いのではないか。

平山CFO:開示している顧客獲得コストはネットと不動産会社のものを混ぜている。ずっと横ばいなのは、そこが上がらないで済んでいる。我々が不動産会社にフィーを支払っても十分に効率よく取れている。売上単価は上がっているが効率よく取れているのでコストは抑えられている。

―連携は中古物件仲介の話なのか、新築デベロッパーでまとめてマンションの契約に活用されたら件数が非常に大きくなるのではないか。今後どう想定しているのか
中山田CEO:去年の夏ぐらいから実際に始めているが、今は大手のフランチャイズの仲介会社に使ってもらっている。後はどんどん広げていきたい。新築のマンションデベロッパーでは仕組みが入っているので、すぐにモゲチェックに取り替えてもらうことは難しいが、最終的には新築マンションデベロッパーにも使ってもらえるサービスになっていけば良い。

―金融機関の信用を得るとのことで、今20行程度だが、増やしていく目標は
金融機関の数だが、今は20数行でほぼ全てのネット銀行のほか、メガバンク、主要な地方銀行と提携している。今後拡大するとなれば、地方の金融機関に入ってもらう。そこは拡大していきたい。ただ、地方になればなるほど、まだオンラインというよりもオフラインの、不動産会社と金融機関が、人と人でつながるようなところでのローン付けが、大宗を占めている。我々と提携してもらいオンラインで送客するのもあるが、今のようなペースで広がるかというとそうでもないという感覚はある。増やしていくが、時間をかけて進めていく。

―今後の黒字転換目標は
平山CFO:具体的には開示できないが、モゲチェック事業の成長率はミニマムで20~30%程度と示しており、INVASE事業についても、20%程度で成長している。原価が大きくかかるビジネスではないので広告宣伝費などはこれからも投下していくが、可能な限り人件費などを抑えて、IT企業として売り上げを伸ばして早めに粗利を出していく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]