シンカが27日に、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1320円を26.59%上回る1671円を付け、1803円で引けた。コミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」を開発・販売する。営業や顧客対応などに用いる電話やメール、SNS、ビデオ通話といった社内外のやり取りに関する履歴や情報を記録し、一元管理する。2023年12月期第3四半期末の導入者数は2565社、4289拠点。自動車業界と不動産、士業での利用が半数を超えている。江尻高宏社長が東京証券取引所で上場会見を行った。
―社名について聞きたい。thinkと掛けているのだろうが、江尻社長が在籍していたシンクタンクの「シンク」と関係あるのか
ある。日本総合研究所に入った時に、シンクタンクは考える集団で、若い頃から上司に「考えろ考えろ、とにかく考えろ」ということを教えてもらった。レポートを作って出しても、「本当に考えたのか、お前本気で考えたのか、頭から煙出るまで考えたのか」とよく言われて育った。
「すいません、もう1回考えてきます」と作った提案書を顧客に持っていくと、とても喜ばれ、「本当にうちのことを考えてくれていますね」と言われた成功体験があり、やはり気持ちいいと思った。本気で死ぬほど考えたら良い提案ができると考えている。そういった考えを持ちたいという思いを社名に込めている。
―顧客に自動車業界が多いが、この製品はコンタクトセンターで使われるのではなく、外回りの営業マンに顧客からの電話が掛かってくるという業界にマッチしているのか
ターゲットにコンタクトセンターはなく、基本的にそこには売っていない。
―競合は
完全に競合している会社はない。コミュニケーションを全てオールインパッケージでという発想はほかにはない。ただ、1つひとつの機能を取ってみると例えば、店舗や会社の固定電話をデジタル化して効率化しようとなると、未上場で元気なのはMiiTelやBIZTELだ。それらのクラウドPBXサービスは、電話のデジタル化・効率化というテーマだけで取ると競合する。
発想としてよく似ているのはChatworkだ。企業内のコミュニケーション効率化でチャットを通じてコミュニケーションを取り、かつChatwork上に電話やビデオ通話のサービスを持っている。いろいろなコミュニケーションをチャットワーク上で管理することで効率化できる。発想は一緒だがアプローチが全然違う。
Chatworkはあくまでも、そのプロダクト上のさまざまな機能を使うことを想定しているが、我々は、今のやり方、コミュニケーションの取り方そのままで大丈夫だ。今まで通りに携帯や代表電話で喋ってもらって、我々がバックで履歴を自動的に取る。これは我々のターゲットが主にBtoCの店舗の人たちが多いことによる。
自動車や不動産では既にメールでやり取りしていて、営業担当者がそれぞれ個人の携帯でやり取りしているので、「Chatworkに変えてくれ」ということは難しい。今のやり方そのままで、「カイクラ」が全部統合する。コンセプトは似ているがアプローチがちょっと違う。
―生成AIで、録音したものを要約するが、その精度の現状は。これから高めていくのか
要約の精度はかなり高いが、むしろ音声をテキスト化する精度のほうが発展途上と考えている。現状、何もしなければ60~70点ぐらいだ。ここから会社ごとにチューニングしてもらっている。よく使う言葉や、電話の環境によって音質などが変わる。調整を経て90~95点ぐらいまで上がり、テキスト化が綺麗になる。要約はほぼ100点に近い
―売上CAGR(年平均成長率)が40%を超えているが、成長スピードは
これから10年は30~35%程度を考えている。前期が10億円で今期は13億円で30%成長を見込んでいる。引き続きその程度の成長で行きたい。
―ユーザー獲得チャネルが直販とOEM、パートナーだが、売上に占める割合は。また、今後のイメージは
直販が52%程度で、パートナーが45%、OEMが3%だ。今後は、直販も専門チームを作りながら横展開で広げるが、パートナーの規模をもっと上げたい。目指す比率は5年ぐらいで直販を40%、パートナーを50%、OEMを10%にしたい。
―不動産から医療、自治体などに展開する際に気を付けたいことは何か。UI/UXの話でも構わないし、業界特性に合わせた工夫が必要であれば、そういったことも聞きたい
サービスとして業界ごとのカスタマイズはしないポリシーで、あくまで1プロダクト、1つのアプリとしている。カスタマイズしてしまうと運用コストが掛かってくるので、そういうことは一切しない。UIも変えないと決めている。
ただ、重要視しているのはマーケティングだ。例えば、自動車業界と不動産業界で刺さるものは別だ。自動車業界は未だにWebではなく、リアルのほうが刺さり、郵送DMには意外に反響が来る。その業界にマッチするマーケティングに力を入れていく。
あとは、アライアンス先だ。自動車業界に強い、不動産に強いアライアンス。不動産の場合、強いアライアンスは業界団体で、そういった団体にたくさん入って事務局の人とアライアンスを組んだ。業界ごとにマーケティングを変えようと思う。
―1兆6000億円のTAM(Total Addressable Market)に対する導入に際しての課題や、対象業界、現場は
主にBtoBの事業をやっていて、電話のやり取りやメールのやり取りは通常のビジネス上で発生し、いろいろなトラブルもあるが、そこにお金をかけて解決しようとは考えていない業界がTAMだ。
「我々が会話のトラブルを解決します」というのではなく、膨大な会話の履歴のなかから新たな高付加価値が提供できるなら、その人たちにも使ってもらえるのだろう。例えば、コミュニケーションの履歴を溜めることによって、社内の場合はHRのようなところ、社内の人間関係が分かる。
誰がストレスを感じていて、誰がどういう会話の仕方をしているのかはデータさえ蓄積すれば分析できる。そこまでいくと、「会話の痛みを解決したい」ではなく、会話からこんな付加価値があるというところにいけたら、TAMに到達できる。
―株主にトビラシステムズがいるが、事業上の関連性は
クラウドPBXのサービスがあり、そちらと我々の「カイクラ」が連携している。相互にセットで販売を連携している。
―機能的に迷惑電話のシャットアウト機能などもつながってくるのか
現状は、まだ完全に連携はできていないが、そういった話も出ている。より深く連携していきたい。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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