株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:ハッチ・ワーク<148A>の増田社長、月極DXのパイオニア

ハッチ・ワークが26日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の2160円を30.32%上回る2815円を付け、3315円で引けた。「月極イノベーション事業」では、月極駐車場のオンライン管理支援サービス「アットパーキング(AP)クラウド」と、利用者向けの検索・契約サイト「アットパーキング」を提供する。「ビルディングイノベーション事業」では貸し会議室サービス「アットビジネスセンター」などを手掛ける。増田知平社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

月極駐車場のDX推進で、管理会社やオーナーの全ての手続きがオンラインに対応し、業務コスト削減につながると説明する増田社長

―初値の受け止めについて
一喜一憂はしていないが、多くの注目を集めた。いろいろな投資家の期待があり身が引き締まる。これから一生懸命、皆の期待に応えなくてはならないと改めて思った。

―月極駐車場にはそこまでスポットライトが当たりにくかったかもしれないが、どういった期待で今回の値が付いたのか
事業のモデルで興味を持ってもらえたというのは、月極が、穴場で、昔からあるビジネスではあるがDXが進んでおらず、IT化していなかったからだ。

ホテルを予約するようにスマホで契約できても不思議ではない。そうしてこなかった業界、未開の地があったことを理解した人が、まだここは伸びるという期待を持ってもらえていると良い。

―駐車場以外の業種やコインパーキングと比較した際に、穴場だった理由は
コインパーキングは駅前、商業立地で比較的回転する。機械を置いて回転させていくビジネスだった。月極は住宅街で安定した収益はあるが、コインパーキングほどの収益は出ない。管理が月額賃料に対してはそれほど高く取れない。「だったらコインパーキングのほうが良い」と月極に対して皆の意識がいかなかった。そんな背景があるのではないか。だからこそIT化もシステム化も進まなかった。

―月極に目をつけたエピソードは
私が2010年に池尻大橋(東京都世田谷区)に住んでいて、たまたま賃貸に月極がなかった。仕方がないので、歩いて近くを探しにいった。当時はネットで情報がなかったことと、歩くと募集看板はあるが、「どこが空いているのか」というところだった。当時は出張でホテルを予約する時はスマホでできていたので、月極駐車場もホテルを予約するようにスマホで探せてそのまま決済できると、すごく楽になる人がいるのではないか。そこに社会課題解決ができる要素があるかと考え始めた。

―登録駐車場があるエリアはどこが多いのか
サービスはクラウドの仕組みになるので、全国を対象にしている。関東で全体の35%ぐらい。そのほかは中部と近畿、四国、九州は各10~15%ぐらいで、比較的まんべんなく分布している。それだけ月極駐車場は皆が住んでいるところにあるということだ。

―都市部のほうがデジタル化、DX化は進んでいるのか
裾野は大きいが、不動産会社やオーナーのなかでもITリテラシーの反応が良い人や、新しいものをやろうというところから導入している。都心だからというよりは、全国でそういうものに反応しやすい会社から入っている。

―競合状況や類似サービスのなかで、差別化要素や強みは
競合は、最初に名前が挙がるのは上場会社ではアズーム<3496>で、我々も意識している。月極の検索ポータルサイトは当社が2010年に作り、おそらく彼らも同じぐらいのタイミングで作った。ポータルサイトでは老舗の2社で、互いに物件の掲載数を増やして情報を増やしていった。

どちらが多いかは正確には分からないが、違いがあるとすると、当社は満車・空車のリアルタイム情報を開示している。埋まっていれば空き待ちの予約ができ、空いていればそのままオンラインで契約できる。アズームはサブリース型のビジネスモデルだと思うので、その点に差があるのではないか。

―リアルタイムに車の満空状況を把握するために、駐車場のオペレーションを丸ごと引き受けるとのことで、当初から月極駐車場だった場合、解約はそれほど生じないだろう。青山商事の店舗など商業施設の遊休駐車場も登録台数として増やしていく場合、商業施設が駐車場を登録した後に解約する場合、原状回復は簡単なのか
区画が分かれていれば車庫証明が取れるので、砂利でもアスファルトでも区画が特定できれば問題ない。砂利の地面で標識用のトラロープを引いておけば保管場所証明を発行してもらえるので、原状回復も、ロープを取れば終わりとなる。

―機械式パーキングのような、装置を必要とするものではないのか
そういうものは何もない。

―現状で全く同じ観点でビジネスを展開している会社は
アズームが昨年頃からこのサービスに参入してきた。ただ、当社はこのサービスを2018年に始めており、4~5年ほど先行している。

―非上場企業込みではどうか
最近増えてきて何社かが類似のサービスを始めている。マーケットが少し注目されてきたのではないか。

―パイオニアという位置づけか
そう思っている。今回の上場の目的にもあるが、まだ裾野が広いということと、まだ認知されていないところもある。特に、オンラインの契約や決済の仕組みを我々に任せてもらうとなると、不動産会社やオーナーの心理的ハードルを乗り越えていかなければならない。まず上場して安心してもらう、かつこの業界でナンバーワンを取っていく。今のところ先頭を走っているのだろう。

―APクラウドの登録台数が30万台とのことだが、顧客全体で管理している駐車台数はどのぐらいか。全部クラウドに登録されないのであれば、今後どういうタイミングでどういうペースで増えていくのか
月極のマーケットがこのぐらいあると答えられれば、そのうちのシェアの何%かとなるが、当社の見立てでは、月極の市場は3000万台ぐらいある。

当社ではそのなかの30万台でオンライン契約できる状態で、仮に全体が3000万台だとするとシェアでは1%程度だ。ほとんど皆が募集看板を見て紙で契約するのが実態ではないか。

―顧客は多くの駐車場を持っているだろう。その全てでクラウドサービスを利用しているのか
竹内聡CFO:当社の契約先の管理している駐車場が、全部当社のクラウドに登録しているかという質問で良いか。ほぼ預けてもらっているが、一部例えば、農協などでは地主ごとに許諾を取りながら預けてもらうケースがあるので、全て登録するケースや順次登録するケースといくつかに分かれている。

―月極イノベーションと、ピルディングイノベーションのシナジーは現状どのような感じで、上場を機に取り組むことはあるのか
増田社長:ビジネスモデルは違うテイストになっているが、遊休資産という部分では同じ部分がある。オフィスを賃貸で普通に貸すところから新たな使い方である貸会議室やレンタルオフィスが生まれてきた。

駐車場も同じような発想で、ビルを持っているところには大体、駐車場があり、駐車場があるところにはビルなどの施設もある。対象となる管理会社やオーナーは一緒であることもあるので、情報がそれぞれから集まってくる点でシナジーがある。

―成長戦略で掲げる、生活エリアに隣接する月極駐車場を各種モビリティサービスの拠点とする「FIRST ONE MILE STATION構想」はどの程度の期間で実現し、収益インパクトはどの程度か
具体的な計画に落とし込んでいるものではなく、5年後、10年後の未来構想のところもある。今後人口が減っていくことで必ずスペースが余って、どういった活用をしていくのか課題になってくるだろう。

モビリティも、今までは移動のためのものだったが、必ずしもそれだけではなく、フードトラックやキャンピングカー、カーシェアといったいろいろ新しいタイプの車の使い方が出てきている。でも、必ずどこかに駐車しなければならない。

そういう時に、スペースが、特に住宅街に月極駐車場があるので、月極にこだわらなくてもいいだろうと、そういった時のニーズに応えられるようにデータをきちんと貯めていこうという構想なので、イメージとしては5年、10年先のものになってくる。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事