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上場会見:オービーシステム<5576>の豊田社長、業務知見と信頼感

21日、オービーシステムが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1710円を76.02%上回る3010円を付け、3710円で引けた。オービック<4684>向けのソフトウェア開発会社として1972年に大阪市で設立。日立製作所<6501>の関西進出時にビジネスパートナーとして取引を開始し、地銀の勘定系システムの開発以後、同社グループとの取引は40年以上続いている。豊田利雄社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

旺盛な需要があり、440人の開発人材を、早急に500人体制にしたいと話す豊田社長
旺盛な需要があり、440人の開発人材を、早急に500人体制にしたいと話す豊田社長

―初値の受け止めは
公募価格1710円に対して初値が3010円で、非常に過分な評価を受けた。公募価格で予想のPERは10倍ちょっとだが、類似会社では13~15倍が平均と思うので、それ以上の評価を得ており、それだけもっと成長しなければならない。

―サービスの強みは
日立製作所と40年以上、三菱電機とは30年以上、NTTとも長い付き合いがある。業務をよく知っていることも強みで、日立の仕事で言うならば、銀行ビジネスや地銀ビジネス。そのなかでも、ミドルウェアというかなり技術力が要る領域や、為替業務、元帳移行、情報系などをよく知っている。地銀以外でも、流通系の量販店や、専門商社など各社それぞれ特徴があり、それぞれにシステムのやり方が違う。長く取り組んでいる業務知見や溜まっているノウハウに基づいた信頼感が最も強いのではないか。新しいテクニカルなものや、新しいAIの(特定の技術など)ではなく、総合的なシステム開発力が強い。

―レガシー言語に関する知識や技術があることも長期の取引の基礎にあると聞くが、レガシー周りの今後をどう見るか
大型のシステムは基本的にはCOBOLのものが多い。金融機関のシステムも、オープンにしようとしているがCOBOLの比重が高い。それをJavaなどオープン系の言語に変えていく。

―メインフレームからオープン化へという話か
メインフレーム、あるいはクローズドというか、ハードに依拠したものからオープン化して、新しいものに対応していく点で、COBOLという大型のメインフレーム向けの言語からJavaというオープン系、それからPythonなどAIのような新しいものを付加していく方向に変わっていく。だが、まだまだCOBOLの言語を使うシステムが多い。COBOLを知っていることが1つの強みかもしれない。

―オープン化に向けての移行段階でCOBOLの知識が必要になることがあるのか
COBOLの言語とそれに基づいたシステムの業務知見を知っているから、次のステップに進めると思う。

―DXがかなり盛り上がって受注をどんどん取れる段階だろうが、意気込みは
我が国のシステムが遅れているのは事実だろう。金融機関をはじめ電力会社然り、流通系然り、やはり遅れている。今すごく感じているのは、雪崩を打ってシステムをトランスフォーメーションしていかないと、各社が生き残れないというような雰囲気があろうかと思う。日立を通じてだが、仕事のボリュームが増えている。流通系や公共系、電力系も全体のボリュームがかなり増えていると実感している。それをいかに早く取り込んでいくかということだろう。

―DXやクラウド化などに関し、アジャイル型開発に移行していくことでプロジェクトマネジメント(PM)人材の充実が必要になるとのことだが、PM人材を育てるにはどのぐらいの時間がかかるのか
当社は新卒採用が中心だが、一人前になるのは3年目だ。3年目ぐらいから現場に投入して独り立ちできる。1年目は、上期は基本的にはコストと考えている。下期から現場投入して、徐々にOJTで仕事を覚えてもらい、2年目にそれなりにできて3年目には一人前になってもらうのが通例となっている。

―協力先企業から人員を招くこともあるが、PMができる人員が来るのか
いろいろなパターンがあるが、それなりのスキルがあって、マネジメントができて当社の業務をよく分かっていて、当社で働きたい人を招いている。

―人材開発を進めるうえでの取り組みをもう少し詳しく聞きたい
教育メニューもかなり充実させてきた。今後、DX系のクラウドであるとか、AIやビッグデータ、言語についても、COBOLからJava、Pythonといった新しい言語の座学的なメニューは、教育予算を年間5000万円ぐらい確保してかなり充実させている。

ただ、座学だけでなくOJTが必要になる。システム開発がDX化するにつれて、今までの大型開発の、ウォーターフォールと言われているものから、アジャイル開発でまずは結果を出していく。これもOJTで進めないとなかなか身に付かない。DX関連の仕事が非常に増えている。ただ、アジャイル開発は、日立製作所をはじめ、各社そこまで慣れていないのが現実ではないか。一緒に学んでいこうという声掛けもあり、早くその部分を身に付け戦力になっていくため、この1~2年が本当に正念場と見ている。

―資金使途は
杉本繁治取締役:人材の教育採用で、新卒採用中心というのもあり、人材の頭数にもよるが、その教育や労務費、これから採用する新入社員の約3年間の労務・教育費などが、まずは大半となる。次のステップとしては、パッケージをクラウドの中で動かせるような取り組みにも使っていきたい。

―これから開発のボリュームが増えていく過程で、人材の自社育成だけでは厳しい段階になると、人材獲得のためのM&Aについてどう見るか
豊田社長:時間を買う意味では有効な手段で、積極的にやりたい。当社は潤沢なキャッシュがあり、調達した資金もあるので有効に使っていきたい。

―株主還元について
配当で還元に対応したい。今、年間に1株50円をベースに配当している。配当性向30%弱だが、今後は、安定的な利益成長を考えているので、その成長に応じて、配当性向も30%からもう少し引き上げていくことも見据えながら、基本的には増配で還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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