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上場会見:CUC<9158>の濱口代表、医師を支える

21日、シーユーシーが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1920円を130.73%上回る4430円を付け、4600円で引けた。医療機関に対するM&Aや、急性期病院からリハビリ病院への病床転換、デジタルトランスフォーメーション(DX)、クリニック開設支援などを行う医療機関支援と、在宅患者や終末期ケアの訪問看護の2セグメントからなる。エムスリー <2413> の子会社として2014年8月に設立した。濵口慶太代表が東京証券取引所で上場会見を行った。

居宅訪問看護では国内最大級の規模であり、在宅ホスピスはナンバー2の位置にあると話す濱口代表
居宅訪問看護では国内最大級の規模であり、在宅ホスピスはナンバー2の位置にあると話す濱口代表

―初値と終値の受け止めは
我々なりに適正な価格としてプライシングしたが、高い評価を得たことは非常にありがたい。一方で、日々の株価の変動をあまり意識していても、経営に集中できないので、使命に基づいて企業価値を向上させることに専念し、株主の期待に応えていきたい。

―上場の目的と調達資金の使途を教えてほしい
独立した企業として経営の意思決定のスピードを上げる。加えて、資金を調達することで、特にホスピスの建設資金への充当を想定している。建設のスピードを上げたい。加えて、M&Aの機会などもあれば機動的に意思決定したい。

―エムスリーとの関係で、創業の経緯と今後の関係性について
日本の在宅医療の普及を進めることが社会のニーズでありながら、提供している医療機関の数は、厚生労働省が発表しているが、それほど多く伸びていない実状があった。

在宅医療が必要な人が増えていくのに、なぜ供給が増えないのかに目を向けると、1人もしくは2人医師のクリニックが、在宅医療を提供している。在宅医療を支援する医療機関は、24時間365日患者の求めがあれば駆けつけることが求められ、電話番号を通知する必要がある。

1人のドクターに100~150人と患者が増えると、夜中にずっと電話が鳴り続ける。250人になるとほぼ眠れないような状況になってしまうので廃業もけっこう多い。ワークシェアリングや、医療法人が大規模化、チェーン化することで役割を分担する。1人コンビニエンスストア状態は、やはりサステナブルではない。志を持って入ってきて、地域から求められて患者が増えるとバーンアウトする負のサイクルを止めることが、非常に重要だと思い、エムスリーにその話をした。市場はどんどん拡大していき、エムスリーは日本人の医師の80%以上をカバーしていて、医師紹介会社もあるなか、我々はエムスリードクターサポートという社名でスタートした。

最初の顧客にも言ったが、「先生には先生にしかできない仕事に集中してください。あとの種々雑多なことは私が全部やります」と医師を支える意味で設立した。エムスリーのプラットフォームと、私の思いや事業にシナジーがあるのではないかと提案して、関心を持ってもらい設立に至った。

その後も、資金の支援も含めて新たな事業への参入もサポートし続けてもらっていた。直近にエムスリーから借りていた資金については。銀行のローンへの借り換えを行っているが、その直前までホスピスの開設の資金を、提供してもらうことを続けていた。関係性は非常に良好で、今日もセレモニーに参加してもらった。在宅治験もエムスリーと共同で行った事業なので、ITのエムスリーと現場のシーユーシーという接点はこれからも出てくるのではないか。

エムスリーが我々の株式をどうするのかについては、ロックアップがある。それ以降についても過半は維持する方針であると現状では聞いている。

―医療機関支援について、医療機関は運営や経営に外部の人材が入ることを嫌がりそうなイメージがあるが
法人や理事長によってはそうではないかと思うが、顧客を紹介してもらうことが多く、1つの地域でどこかの医療機関を支援すると、その地域で顧客が急拡大することは結構ある。やったことがない人たちがほとんどなので、実際に導入した病院の理事長が「すごく楽になった」とか、「大変だった経営状況が非常に良くなった」と言うことがある。

我々は銀行との借り入れ交渉も手伝う。事業計画を作って予実を説明するという普通の会社であれば一般的にやっていることで、病院では、事業計画を1回も作ったことない、決算も年に1回で全部会計事務所に依頼しているケースもあり、全部が全部ではないが、年の途中で自分の病院の経営がどうなっているか分からずに経営しているところは本当にたくさんある。「毎月の経営結果が分かるようになった」と言われる。外部の力を借りてでもやりたい顧客以外は、我々の顧客にはならないが、多数の病院があり、特に高齢化していて、劇的に制度が変わっているなかで、診療報酬の改定セミナーも行っている。

診療報酬に関する制度やその方向性がどうなっているか、それを踏まえて地域のニーズから、病院をこうしていくべきなのではないかとディスカッションできることにも、非常に価値を感じてもらえる。それをやろうとなったら「どうやったらいいのか」という話になり、例えば、病床転換の手伝いをして、そこが非常に上手くいくと、「もっとお願いしたい」という感じになる。いきなりフルサービスで支援するよりは、クリニックの開設を支援して、そこがすごくうまくいったら、「元々やっていたところもあわせて見てほしい」という形で広がっている。

―医療機関支援のサービスメニューに集患支援はあるのか
病院では、地域連携室という部門が患者を集める機能を担っている。その活動のためのマニュアルや、ホームページの改善、問い合わせ窓口の整備などを行う。我々自身がやるというよりは、整えることで連携力が上がる。常駐した人材に地域連携の責任者やメンバーもいるので、マニュアルを使いながら活動の質を上げるよう支援する。

―介護事業のなかでのテクノロジー導入について、どのようなことを想定しているのか。あるいは今の取り組みは何か。今後どのようなことに取り組みたいか
センサーを使ったバイタル(生命兆候)のモニタリングを、特にホスピスで行っている。看護師や介護士が訪問した時だけにケアをするというわけではなく、センサーを通じてバイタルを常時確認する。場合によってはナースコールを押せない状況になる患者もいるので、設定をしたバイタルデータからはみ出す結果が出た場合には、アラートが鳴るようになっている。そのアラートに基づいて看護師が確認に行くことを試験的に行っている。

ケアの部分では、例えば、排泄を介助する際に機械を使う。そうするとベッドから離床して、トイレまで介助して座ってもらうことが、非常に簡単にできるようになる。2人がかりで排泄介助をしなければならなかった場面が、1人でも十分できるようになっている。

今後トライするのは、入浴の介助で、それは非常に時間もかかるし、介護者の負担も大きい。座浴や寝転がって入る浴槽もあり、短時間でお湯が溜まって入ってもらえる。座ったまま入って温まれる設備を導入したり、もっと時間を短縮できるミスト入浴についても積極的に試しながら良い製品を採用したい。

―居宅看護を全国に展開しているとのことだが、その業界は零細業者の出入りが多いようだが、今後のM&Aや業界再編に向けて取り組みたいことはあるか
居宅訪問看護については、非常に小さな事業者が多く、それぞれの地に根差す会社が多数存在している。過去にも事業承継の相談があり、譲り受けたこともある。我々は居宅訪問看護に関しては積極的にM&Aをして事業を拡大することはあまり考えていない。カルチャーにかなりの投資をしており、大事にしているフィロソフィーへの変革の苦労を過去に感じてきている。規模が大きければ良いが、非常に小さな事業者を買収して、統合プロセスに多大な労力をかけるよりは、採用して社内で育成するほうが良いのではないか。

―訪問居宅看護の出店ペースや強化したいエリアは
過去3年では、エリアの展開にかなり注力してきた。北は札幌から南は福岡まで出店したが、新たな地域への出店は当面抑えようと考えている。既存展開地域におけるエリアドミナンスの向上に集中しようと思う。北海道であれば北海道のなかで、訪問看護ステーションにはスタッフが10~20人が働いていて、顧客がどんどん増えるが、一定数になった時に、その近隣にもう1個のステーションを出す。地域に応じて顧客を分け、それぞれで顧客の受け入れ余力を作る。そういった出店を行っているが、3年で50拠点ほど出した。

高いペースで出店をしてきたので、出た地域にきちんと根差していくだけでも、売り上げの成長は十分に実現ができる。既存展開エリアでのエリアドミナンスを中心に行う。一方で、我々の支援先の病院の近くに訪問看護のソフィアメディを立ち上げる、あるいは在宅診療を手掛けるクリニックに併設する形で訪問看護ステーションを開設するという試みをいくつか実行している。

事業上のシナジーも得られるし、患者にとっても容態変化の情報が隣ですぐに話せる。物品が必要になった場合には訪問看護ステーションの看護師に、ドクターが指示をして持っていってもらうなど、顧客サービスの向上にもかなり寄与していると見ている。顧客との話し合いがあるので、何個やりますというのは難しいが、いくつかの顧客の近くにステーションを出店する。これは少し飛び地になるような場所であっても、実行していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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