株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:BTM<5247>の田口CEO、眠れるビジネスパートナ―を開拓

27日、BTMが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1500円を41.20%上回る2118円を付け、1850円で引けた。IT人材が不足する企業にエンジニアを派遣するITエンジニアリングサービスが売り上げの8割を占める。派遣人材の9割が外部人員で、顧客のニーズに合わせてマッチングする。ベンチャーから大手まで取引実績は1500社以上。DX化に向けたコンサルティングからシステム開発までワンストップで請け負うDXソリューションも提供する。田口雅教CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

地方には優秀な人材がいても就業の選択肢が狭く活躍の場がないく、また、いろいろなノウハウを持った企業があっても活かせる場がないなど都市圏と地方の機会格差を課題意識として持っていたと話す田口CEO
地方には優秀な人材がいても就業の選択肢が狭く活躍の場がないく、また、いろいろなノウハウを持った企業があっても活かせる場がないなど都市圏と地方の機会格差を課題意識として持っていたと話す田口CEO

―社名の由来は
ビジネストータルマネージメントという社名で創業した。ビジネスで世のなかを変えていきたいという思いだ。その頭文字を取るとBTMになり、それに変えた。

―初値が公開価格を大幅に上回った。何が評価されたか分析や率直な受け止めを聞きたい
分析はこれからなので何とも言えないが、非常に評価されたことに対しては嬉しく、これから頑張っていかなければならないという思いではある。

評価されたところがどこなのか、個人的な話では我々のミッションだろうか。そこをしっかり支持してもらえたのは1つあると見ており、地方に対しての思いは長年掲げており、これからより必要になってくる。

国も地方をどれだけ盛り上げていくか、時流に乗っているのは株価にも非常に影響したと思う。株主に対しても恩返しをしていかなければならない。

―上場の目的は
今後の戦略として、地方に入り込んでいくことを強みに上場したが、長年地方の開拓を進めていくなかで、自治体や地銀とより連携をしていくとなると、上場しているか否かは1つの目線で見られる。連携や地方の企業と取引をしていくために、強い看板を持つという営業的な理由が1つだ。

もう 1つは地方の人材の採用だ。地方の人たちは企業を見る時に、会社の安定性をよく見る。そこに対して、上場しているから「上場基準で物事をしっかり進められる」というのも含めて、看板を持つという2点が上場の目的だ。

―上場申請の段階で動きやすいという効果はあったか
声掛けはあった。我々が積極的にアプローチしたというのもそうだし、問い合わせとして地方の人材を紹介してほしいというところもある。徐々にだが、そのような声を掛けられつつある。

―(育成する)自律型フルスタックエンジニアとは、具体的にはどのような能力を持つ人なのか
一言で言えば、ゼロベースから入り込めるエンジニアだ。DXに興味あるが何をしたら良いか分からない顧客に対しては、まずコンサルから入る。「なぜDXをしたいのか」、「DXをするなかで大切にしていることは何なのか」という、より上流の部分から入る。具体的に強みは何かを落とし込み、ITでどう解決できるのかしっかり作り上げて、企画としてまとめて提示して、システムを作る流れだ。その上から下までを全部できるのが自律型フルスタックエンジニアのイメージだ。

―地方に住むエンジニアが様々な案件にアサインされると思うが、フルリモートか
そうだ。

―それなりに人数が必要な案件でも、いろいろな場所から協力しながら進めることができるということか
そうだ。拠点に関係なくチーム編成をしているのは、まさにそこだ。例えば、拠点に5人しかいなければ5人分の仕事しか請けられないが、必要であればほかのエリアから人材の支援ができるし、我々の社員だけではなく、ビジネスパートナーの活用もできる。そういう意味では柔軟なチーム編成で体制をしっかり組める。

―エンジニア間でのコミュニケーションはかなり円滑に進むのか
我々はコロナ禍の前からリモートを実施していた。エンジニアは場所を問わず仕事ができる職種だと思うし、「旅をしながらエンジニアをしても面白い」という話をしていた。そこのコミュニケーションのギャップは、最初は苦労した部分もあったが、ノウハウを落とし込んで、今では蓄積され、リモートの経験がない人でもしっかりできるような状態になっている。

―デジタル田園都市構想やリモートワークなど、地方に関する関心が急速に高まっているが、足元で変化はあるか
国がDXの必要性をようやく感じてきて、国から各自治体に対してトップダウンで指示が行っている状況だ。そこも含めて地方の企業がデジタル化していかなければならない波が地方に広がっているので、 DXのニーズは圧倒的に増えている。

―DXを広める時の1つの課題として、地方の人材活用をBTMが解決しているが、そのほかにDXが広まるうえでのネックは
自治体とより連携していかなければならない。自治体が主導となって、周囲の、地元の企業を巻き込んでデジタル化を進めていかないと、同じ方向を向いて進むのが難しい。自治体を巻き込みながらやっていくのが次の課題だろう。

―競合他社の認識や立ち位置、差別化は
我々の強みである地方に対して、より積極的に入り込みたい。ラボ設立と自社の採用も、またデータベースの拡張も、地方の企業では手を付けられていないエリアもある。より地方にフォーカスすることが差別化になるのではないか。

―手を付けられていない地域とは
例えば、直近で出した仙台を拠点として、東北地方などはまだ手を付けられていない。眠れるビジネスパートナーはたくさんいると見ている。北陸などもそうだ。そういったエリアをしっかり網羅していく。

―逆に、今得意としているエリアや、波に乗っているエリアは
波に乗っているのは九州だ。福岡の拠点を早めに立ち上げたのと、佐賀のラボを出していることもあるが、九州は、福岡に目を向けて活動する会社も多いので、広げやすい部分もある。九州は非常に熱い。

―現状で、例えば、東海地方でEV需要が強い、九州で半導体需要といった特色のある地域はあるか
例えば、愛知県は某大手の自動車会社が非常に強いので製造業が多い。福岡県はスタートアップベンチャーが非常に増えている。SaaSやIT企業が増えている。特徴はあるので、我々はそこに最適な人材を提供することが可能だ。

―自社のエンジニアを増やすことと、営業担当者がアクセスする他社の営業担当者(ビジネスパートナー=BP)の先にいるエンジニアを増やすことで回しているとのことだが、2種類のエンジニアの単価は異なるのか
自社社員とBPの単価の差はさほどない。ただ、利益率はかなり違う。BPに関しては平均で大体15%で、自社社員は40%ほどになる。売り上げの8割を占めているのは、BPを中心としたITエンジニアリングサービスだ。トップラインも伸ばしながらパイを広げる戦略を一番に掲げている。

とはいえ、今後、地方のDXを進めていくなかでゼロベースの顧客が圧倒的に多い。そのような顧客をより開拓していく意味では、自社社員を増やしていかなければならない。この2つの理由からどちらも増やすのが答えではある。基本的にITエンジニアリングサービスのビジネスパートナーを増やすほうがインパクトは大きい。

―営業担当者が同業他社の営業人員と常時情報連携をしているとのことだが、これは契約に基づいているものなのか。それともこれまでの関係性からギブアンドテイクの関係で共存共栄関係にあるのか
後者だ。契約があるかというとそうではなく、情報交換をする。あくまでギブアンドテイクで繋がっている。

―売り上げ2割増を継続するのか、利益のイメージは
基本的にITエンジニアリングがメインになるので、売り上げは20%増ぐらいで増えていくと想定している。粗利に関しては、社員を増やしていけば率は高まっていく。現状4%程度だが、毎年1%ぐらいずつ増やしていく戦略を描いている。

―目論見書のなかにリスクとして訴訟に関する記載があった。係属中の案件に関して聞くものではないが、初めてのケースか
初めてだ。

―ベンチャーキャピタル(VC)はK&Pパートナーズ2号投資事業有限責任組合のみだが、あまり入れないようにしたのか。VCとの距離感は
VCを取り立てて増やすことは考えておらず、1社限定で入れようと元々考えていた。様々なVCと話をさせてもらい、K&Pの考え方や、我々がやっていこうという思いなどで、共感が生まれたので決めた。

―入れる必要がないようにキャッシュが回っていたのか
そうだ。ただ、より強い組織を作る意味で第三者の声を取り入れることは考えていたので、限定的なVCの支援だった。

―株主還元の方針は
当面は配当を考えていない。どちらかというと企業価値を高めることで、時価総額を高めて還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事