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上場会見:jig.jp<5244>の占部社長、リサーチと技術力

22日、jig.jpが東証グロースに上場した。初値は公開価格の340円を40%上回る476円を付け、472円で引けた。フィーチャーフォンのインターネットブラウザ「jigブラウザ」に始まり、複数のシステムの開発を経て、動画・ラジオの生配信アプリ「ふわっち」の提供を2015年9月に開始した。原則無料の配信で、視聴者は、配信中の画面に表示されるコメント欄に自身のコメントを送るなどしてコミュニケーションを取りつつ、無料や有料アイテムを使いライブ画面を盛り上げる。占部哲之社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

ふわっちの特徴について、配信者がアマチュア中心であり、コミュティは小規模、課金余力のある30~40歳台の視聴者層が厚いことを説明する占部社長
ふわっちの特徴について、配信者がアマチュア中心であり、コミュティは小規模、課金余力のある30~40歳台の視聴者層が厚いことを説明する占部社長

―初値の評価は
上振れた形で初値が付き、非常に感謝している。我々は、高い開発力をベースに、ライブ配信事業を中核に事業を進めて成長していくというスタンスが評価されたと考えている。

―総売り上げに占める、ふわっちの割合はどれぐらいか
ほぼ全てふわっちだ。

―今期の見通しも含めここ数年そうか
前期、今期ともにそうだ。

―なぜ今IPOをしたのか
まず、事業が一定規模に順調に進んできた。社外的にも、サービス内で健全性などを担保できる状況だと判断した。社内体制もコンプライアンスを中心に、しっかりできる体制が構築できた。このため、このタイミングでIPOを実施した。

―それはふわっちが、かなり安定してきて急に下振れすることはないだろうと普通に考えているという理解で良いか
100億円近くの規模の売り上げになっており、成長が引き続き見込まれると、そのようなイメージだ。

―高専生にフォーカスした人材採用のコンセプトは
シンプルに言うと創業者の福野泰介会長が、国立の福井高等専門学校の出身者で、創業当時、福井高専の技術者に集まってもらい会社を大きくした経緯があった。その後、福井高専のみならず全国の高専ともコネクションが非常に強くできて、今は全国の高専から学生にどんどん入ってもらえる体制が定着している。

―人材の採用計画は
高専生の獲得が、我々の最も強みである高い開発力の維持・伸長していく部分で最重要だ。10人の開発者、しかも何となくの開発者ではなく、選考の折に非常に高いレベルでの選考をかけて入る時点から、レベルの高い開発者に入ってもらう。このようなレベルの新卒の開発者を毎年10人採用していく。昨年、今年、今後もそのような計画だ。

―今までに複数のサービスを柔軟に開発してきたとのことだが、そういったことができる背景には、市場に対する先見の明があるのか、後発であってもキャッチアップできる技術力があるのか、あるいはその両方か
リサーチと技術力の面で、キャッチアップしアドバンテージを持てる。

1つは福野会長が技術面に非常に強いプログラマー出身の創業者であることだ。技術面からの新サービス探索に長けている。そのほかのメンバーは市場や競合の面からそのようなものを取ってくる目を持っている。その意味で新しいサービスの模索が順調だ。

さらに、高いサービス開発力で、競合に対するキャッチアップや、サービス運営の際にアドバンテージを加えていく部分も順調に進んでいる。

―開発拠点を、今年の7月に新築移転したが、会社や地元にとって鯖江(福井県)に開発拠点を置く意義をどう感じているのか
我々にとっての意義は、元々は福野会長が福井出身で、福井高専出身であったので開発拠点が福井にできたのがスタートだ。開発拠点がどんどん大きくなっていったが、福井以外の全国の高専生が集まるなかで、落ち着いた魅力的な開発環境が福井に集約し、採用と定着に役に立っている。

7月に新開発センターという箱ができたので、それが加速した。東京ではないがその魅力的な場所に集まってもらい、地方都市なので定着してもらえる。

地元にとっては、我々は福井と東京の2拠点体制を取っていて、福井側で、鯖江市や福井県といった自治体と非常に密なコミュニケーションがある。拠点があるだけではなくて、オープンデータプラットフォームといい、公共団体のデータを一般に開放する手伝いをしている。また、ichigojamという子供向けのパソコンで、自治体や地域にCSRを展開している。地元側にも意義を感じてもらえているのではないか。

―福野会長は主に地元で、「地元をサイバーバレーに」という話を時々しているが、直接jig.jpの事業に関わってくることはあるのか
まず、福井にあり自治体との関係ではCSR活動が非常に多いが、開発者はがっつり主要事業の開発をしている。主要事業に福井の拠点が貢献していく。これが我々の特徴であり強みでもある。

CSR活動に関しても、デジタル庁を中心に諸々のレベルでの推進が行われている。そのようなトレンドも合わせて、「これは事業として非常に盛り上がっていく、CSR活動の域を脱して主要事業としてもあり得る」という見込みが出た折には、主要事業として検討していく流れや可能性がある。

―大きな投資の考えは
既存の成長が行われる部分と、直近ではバーチャル配信やデジタルコンテンツ販売、さらに少し先の期間にライブコマースなど新規事業を検討している。直近で見えているバーチャル配信とデジタルデジタルコンテンツ販売は、大きな投資はあまりいらず、既存のリソース・資金で、新しいものを生み出せると見ている。その先のライブコマースといった次元では一定の投資なども考えられる。

また、それ以外にも新規事業、ダイナミックな事業も、高い開発力をベースに挑戦していくが、出てきた折には大きな投資も検討していく。

―長期的な事業の数値目標があれば教えてほしい
前期は売り上げで89億円。今期開示した売り上げが102億円というベースがある。そのベースの規模(の業績)を既存事業でしっかり上げていく。利益面も大体同じ上がり方だ。

既存事業は着実な成長が見込まれる。新規事業のバーチャル配信とデジタルコンテンツ販売、やや先のライブコマースの新規事業の部分は、プラスアルファとなる見込みだ。

―新規事業が実現していくスパンはどの程度か
バーチャル配信とデジタルコンテンツ販売については、来期あたりから。テストの検討や実際にテストをしている部分があるため、具体性が見えてきている。来期あたりから形が見えてくるイメージだ。ライブコマースは、来期と言わずに2~3年後ぐらいでしっかり形が見えてくるのではないか。

―そうなった時点では、どのぐらいの売上高の規模になるのか
現状で、既存事業で89億円、102億円が14%(成長)というイメージで、そこから十数%上の成長になり、ライブコマースとなると、そこに加えてさらに上の成長性と考えている。

大庭淳一取締役:具体的な数字について決定しているものはない。

―バーチャル配信機能の提供は、いわゆるVTuber的なものを想定しているのか
そのようなイメージだ。

―動きとしては、ANYCOLOR<5032>やCOVERのようなことをするのか。プラットフォームでありながら事務所的な機能も兼ねていく展開か
事務所的な展開というか、社外のキャラクターを使ってバーチャル(アバター)として配信していく。その人気が出たらボイスなどのデジタルコンテンツを販売するイメージだ。ただ、VTuberを育てる事務所の領域に踏み込むというよりは、魅力ある配信を行っていく。キャラクターの具体的な検討に入っている。

―いわゆるUGC(User Generated Contents=サービスの利用者が作り出すコンテンツ)的なものも含めていろいろ人たちがバーチャルで配信しつつ、若年層の取り込みも狙えるかもしれないというところか
その通りだ。顔を出したくない人がバーチャル配信を利用するケースもあるだろうし、魅力的な形で仕上げて配信する場合もあると思う。それらの多様な形をあらゆる方向で検討中だ。

バーチャル配信が成立すると、現状は30~40歳代のユーザーが中心だが、20歳代も取り込めていけるのではないか。今、足元で20歳代もかなり増えてきている状況で、それをベースに、バーチャル配信をキーにその部分を強化できる。

―福野会長は今後どのような立場でいくのか。赤浦徹氏は社外取締役でこのまま残るのか
福野会長の役割は引き続き同様で、技術面で全体的なアドバイザー的な位置づけとCSR担当、高専を絡めた採用の部分を担当する。赤浦社外取締役は引き続き今と同様の関与をしていく。理由としては投資家として創業者であり引き続き株が残るためだ。

―大株主のインキュベイトキャピタル5号投資事業有限責任組合の株はまだ残るのか
大庭取締役:基本的には売却する方針だ。

―今日の段階ではまだ残っていてこれから売っていくということか
これから売却していく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]