7日、キューブが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2140円を2.34%上回る2190円を付け、1920円で引けた。「MARK&LONA」を始めとするゴルフ関連の衣料品や雑貨を、富裕層向けに販売する。俳優の木村拓哉さんがブランドアンバサダーを務める。松村智明社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値が公開価格を上回ったことの受け止めと、今後に向けての期待は
初値は確かに上回ったが、最終的な部分では投資家の厳しい評価としてより一層の経営努力をしていきたいと厳粛に受け止めている。今後は顧客に満足してもらい株主に還元できるような仕組みを採りながら進んでいきたい。
―ハイブランド向けということで、ターゲットである富裕層の定義は
まずは買い回りデータを意識している。我々が展開している富裕層向けの商業施設などの顧客分析からターゲットとする顧客のデータを各商業施設から受け取る。また、保有するeコマースのデータから、一定層の顧客データを分析しながら価格帯に合う顧客をラグジュアリーと定義としている。
同様に海外では、展開している卸売で、欧米やイタリアでハイブランド、クリスチャン・ディオールやイブ・サンローランといった店舗で多く販売してもらっているので、それに対する購入価格が類似しているところを、我々にとってのラグジュアリーと定義している。
―OMO(Online Merges with Offline)ストアについて聞きたい。どのような分析をしているのか。例えば、店舗内で画像認識を活用してヒートマップを作る手法などいろいろなものをイメージするが、どのようにオンラインとオフラインの相互送客に活かしているのか
まずは、eコマースでしか販売していない商品が多数ある。限定商品やコラボ商品は店頭で見ることができない。そういった物をOMOストアで現物を見てもらいながら購入してもらえる。
また、商品を購入することでチャリティに参加できる。今後については、海外では、ショールーム的な要素を持ち合わせたOMOストアをコンセプトとして考えている。例えば、デジタルで物を買って顧客が決済なしで退店するといったシステムにまでは至っていないが、今のような回答で考えている。
―高いプロパー消化率(値引きをせずに定価で販売した割合)が投資家に評価されたとのことだが、業界平均との開きはどの程度か
小澤拓CFO:具体的なプロパー消化率の開示は差し控えたい。業界平均もデータが必ずしも一般に公開されていないが、そことの比較で言えば、かなり大きく開いている。
―消化率の背景に関連して、需給の分析から適度な枯渇感を醸成するという記述が目論見書にあるが、具体的にどのような施策を指すのか
松村社長:戦略的な流通コントロールも強みとしており、最終的な消化率につながる。数値を開示できないが、在庫を残すことなく非常に高い数値で商品をなくしていくこと、それを我々が意味する枯渇感としている。
また、商品が足らないことからプレミアムが付く商品も多々ある。定価の4~5倍の価格が付く商品も存在する。手に入れられない商品に対してと、消化率が非常に高いという2つを枯渇感と認識している。
―定価の4~5倍というのは二次流通市場に出た場合のものという意味か
そうだ。ヤフーオークションやメルカリといったところだ。
―転売対策は
もちろん行っている。
―ファブレスだと思うが、生産の状況は
50%ぐらいが中国で、残りの30%が日本、その他20%はアジアの諸外国だ。アパレル業界は、中国のロックダウンなどで各社苦戦しているなかで、我々も同様になっている。我々は韓国に非常に強いパートナーがいるので、今後は韓国での生産や、日本国内への生産回帰を進めたい。
―現時点で新規開発が進んでいる商品や、開発の予定を聞きたい
スキンケアの商品を開発している。シューズブランドに関しては、現在も「MARK&LONA」というブランドで展開している。その開発のなかから新たな物を作り上げていくことを同時進行で進めている。
―日焼け止めやヘアケアの販売チャネルは
まずは自店で販売していく。
―M&Aについて、別なブランドの買収を通じてLVMH モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンのようなグループを目指すのか
現状はそういったことは考えていない。今我々が持つブランドに一生懸命注力し、拡大していく。
―海外の展開状況は
今は韓国を中心に展開している。直近では、イタリア、欧米から引き合いが非常に多く、欧米に対しての売り上げが伸びている。欧州諸国に対してはしっかり取り組みたい。アジア各国では各企業からオファーが寄せられているので、韓国の展開成功例を軸に事業を拡大させたい。
―インド周辺を含めたASEAN地域はどうか
対象となる国がどこかということは控えたいが、インドまでとはまだ考えていない。
―アパレル業界ではサステナビリティについていろいろと言われることがあるが、取り組んでいることはあるか
枯渇感が非常に高い、消化率が非常に高いことで、廃棄ロスがほとんどない。それ以外に、環境に配慮したエコでサステナブルなアイテムを多数展開している。また、eコマースで顧客参加型のチャリティ、「ワンクリックチャリティプログラム」を行っており、一部の商品の売り上げの10%を顧客の負担なく、その寄付先のリクエストに応じて我々が寄付する。
サステナブルな素材も使っているが、現在の一番の強みは廃棄ロスのない高い消化率で、社会貢献につながっていると考えている。
―株主還元の方針とROEについて
当面は内部留保の充実を図りながら、収益力を強化し、投資に充当することが株主に対する最大の利益還元につながると考える。将来的には株主への利益還元を検討していく方向だが、配当の実施と可能性、その時期については未定だ。
小澤CFO:ROEももちろん高めていきたいが、最初のこのタイミングでは、営業利益の部分、経常利益を含めてだが、そこをきちんと高めていくことが取り組んでいくべきことと考えている。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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