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上場会見:マーキュリーリアルテックイノベーター<5025>の陣CEO、プラットフォームと利益成長を両立

25日、マーキュリーリアルテックイノベーターが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1270円を6.69%上回る1355円を付け、1177円で引けた。同社は、マンション相場集計や販売事例一覧表示機能を持つ「サマリネット」などを新築マンション向けにサブスクリプションモデルで展開。中古マンション業界には、新築販売時の物件情報を従量課金の「データダウンロードサービス」で提供する。陣隆浩CEOが同日の午前に東京証券取引所で上場会見を行った。

陣CEOは、データの網羅性と即時性、正確性が参入障壁となっていると話した
陣CEOは、データの網羅性と即時性、正確性が参入障壁となっていると話した

―初値が公開価格を上回った
このようなご時世で、私も心配していたが、どうにかギリギリでクリアすることができ、投資家の評価に対してとても感謝している。

―アカウント数が順調に伸びているが、既存顧客のアカウント数の伸びのみならず、新規で導入する企業数も増えているのか
新築マンション領域において、現状は顧客契約企業が 270 社ほどで、市場規模でいうと、あと30社ぐらいしかない状況にある。サマリシリーズは全部で8つのラインアップがあり、そのうちの 1 つ「マンションサマリ」を昨年からSaaS化して、契約を全部移管しており、その中でアカウント数が増えてきた。今後、まだ7つのラインアップがあるので、それによってアカウント数を増やしていける可能性が十分にある。

成長ドライバーを中古マンション領域と捉えていて、契約企業数が、月次で40社ぐらい増えている。全部で3万6000社を市場規模と見ているが、現在は2100 社ぐらいなので、シェアとして6%と、まだ大きな開拓余地があり、積極的に攻めていきたい。

―例えば、直近の3~5年でシェアをどのぐらいに伸ばしていきたいのか
現状の月で40社といえば、年間で大体500社なので、1万社取るのに20年かかる。今は効率が悪い営業展開をしているので、一気に何百社も集められるようなウェビナーを開催するとか、そういったことで増やしたい。そうすると、5年以内に、できれば3年ぐらいで1万社を取るような方法を考えて、積極的に攻めていきたい。

―2025年までには1万社を目指したい
そうだ。できればいきたい。

―売り上げを伸ばしていくために、営業面の戦略について、ウェビナーなどを開くとのことだが、代理店やパートナー戦略はどうか
中古業界に関しては、新規を獲得するうえで、パートナー企業と組んで進めている。今、1社と提携しているが、新規の獲得件数が月に30~40件というのが現在のペースなので、ここを増やしていくのか、内部の組織のなかで広げていくのか、最適化を判断しながら進めていく。

営業の形としては大きく2種類あり、新規を獲得する営業と、獲得した顧客の利用促進だ。どちらかというとカスタマーサクセスを向上させていく営業を当社内で担当し、パートナーには新規をどんどん取ってもらっている。方向性としては、新規獲得のためにパートナーシップを広げていくほうが、今のところ戦略上有効と考えている。

―マンションも、いずれその役目を終える時が来ると思うが、その時点でのマンションのデータの使い方のようなものはあり得るのか。販売の局面以外でも商機があるような気がするが
大寺利幸COO:我々がデータを集め始めるのは、新築の売り出しのタイミングだが、中古の領域に向かった理由の1つは、年度が重なってくることに、中古領域での取り引きに対応できるデータになったという背景がある。

中古市場で(物件が)出る時は、いわゆる建物の価値が落ちないとされている築浅の5年以内や、大規模修繕が行われるタイミングの10~15年の時期、それからローンの支払いが終わる35年で、35年のうちではそれなりのサイクルで中古に回る。

実際に35年を経過した古い物件(の情報)はどういったところに使われるかだが、例えばよくあるのが、不動産の価格が急上昇し、「これってあの過去のバブル期と同じだよね」といった時に、過去の歴史に基づいてどういった価格設定がされているか、そうした時期にどういった商品スペックだったかを繰り返して見るのが、不動産業界では当たり前の業務としてある。ストックを持てば持つほど過去の事例が膨らむので、マーケティングデータとしては年数を重ねるほど価値があると見ている。

―そこで AI を使った分析が活きてくるのか
例えば、大規模な自然災害があった時に、価格にどの程度のインパクトが出たのか、売れ行きにどのくらい影響してしまったのか、マイナスインパクトが来た時に、機械学習を通じて、どの程度のリスクを見て、価格のボトムラインを想定しておくべきかという点で有効活用できると思う。

―システム開発費をソフトウェアに振り替えたことで、今期予想は利益がかなり伸長するようだが、今後の見通しとして、どういったレベル感での成長を考えているのか
陣CEO:現在の営業利益率が17%ほどで、利益が出てもプラットフォーム事業に経営資源をどんどん投入していかなければいけない状況だが、そうであっても営業利益は毎年1%ずつぐらいはアップできるような、できれば3年以内には20%を確保できるぐらいの想定をしている。

売り上げでいえば、来期が110%ほどの伸びを考えており、再来期には120%を想定している。そうなると売り上げが20億円近くになっていく。その時に営業利益率20%を確保できていれば、3億5000万円から4億円ぐらいになるイメージでいる。

―提携やM & Aの青写真はあるか
上場した1つの目的として、優秀なエンジニアを採用することを考えている。1人ひとりを採用するのがいいのか、またそういった人材を確保している会社と提携するか、M&Aをするかといったことも考えている。

当社がプラットフォーム事業をやっていて、契約会社数が2100社ぐらいあるので、そこに現在従量課金コンテンツを自社開発ってどんどん投入していくが、自社で追い付かず、もっと魅力的なサービスを持っているところがあれば、連携を進めていきたい。

―海外には出るのか
現状は考えていない。

―海外戦略は
今のところ、その準備は全く行っていない状況だ。

―計画としてもまだないのか
そうだ。

―マンション領域のみでの事業展開はもったいないという投資家の意見もあるようだが、金融領域への展開の可能性はあり得るのか
ロードショーの際にも投資家からそのような意見をもらった。そういったものは念頭にはあるが、どういった角度・方向から参入していくのか模索している段階にある。今回の主幹事証券であるSBIからも、一緒にその辺りを組めないかという話があり、いろいろと模索しているところだ。

―今後のROEの考え方は
河村隆博CFO:1番の目標とはしていないが、今回の増資により、若干資本が増えたことで低下するが、今後は20%を目安として管理していきたい。

―株主還元の考え方にアップデートがあれば聞きたい
陣CEO:トップラインをこれからもどんどん伸ばしていかなければいけないし、利益も、プラットフォーム事業に投入しなければならない状況になっているので、2025年に1万社となった時に、ある程度の利益を確保できるようになった場合には、その分を株主に還元していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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