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上場会見:ロココ<5868>の長谷川社長、7つの事業の組み合わせ

20日、ロココが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1128円を2.48%下回る1100円を付け、1257円で引けた。企業に常駐するIT人材の派遣やコールセンター業務を請け負うIT&BPO事業と、米サービスナウの代理店として社内業務を一元管理するクラウドソリューション事業を主力とする。売上比率は前者が7割で、後者が3割。長谷川一彦社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

同業の離職率が11.9%であるなか、エンジニアの離職率は5%台となっており、非上に低いと話す長谷川社長
同業の離職率が11.9%であるなか、エンジニアの離職率は5%台となっており、非常に低いと話す長谷川社長

―初値の感想は
もう少し高くても良かったのではないか。残念ではあるが、あのようなものかとも思った。

―来年で30周年だが、この時期に上場を目指した理由は
この30年で培ってきた、上場または上場会社に準ずる企業(向けに提供してきたサービス)のノウハウを、脆弱化したシステムを持つ中堅企業のシステム全体を請け負える会社にしていきたい。そのために人材の確保がどうしても重要だ。「ServiceNow」を始め、脂の乗り切っている仕事をより成長させるチャンスだ。

今が最もタイミングの良い時期だ。手掛けている顔認証など7つの事業を組み合わせ、ありとあらゆるところで仕事ができるチャンスを上場によって得た。これから物凄く面白い事業になっていくのではないか。

―継続率が高いことが強みだが、なぜか
顧客にいかに満足してもらうか。ITは見えないが、顧客のかゆいところに(手が)届くシステム開発や運用、無駄・無理・むらになっている「3む関係」を徹底的に顧客と話し合う。そうすることで、より良いサービスが提供でき、信頼関係がより増す。それが当社の強みでもあり、ユーザーとの長期的な取引が継続している理由ではないか。

―旧ジャニーズ事務所(以降、ジャニーズ)からの売上が全体の1割近くあるが、今後の見通しと、それが減った場合の対策は
これからジャニーズの人たちがテレビの画面からどんどん消えていくが、1100万人のファンがそういう人たちと会えるとすれば、コンサートしかない。コンサートは来年と再来年の3月まで押さえており、そういうコンサートはなくなることはなく、我々も徹底したサービスをする。満足してもらえる座席の決め方など、今までやってきたことをしっかりとジャニーズ事務所とやっていきたい。なくなることを考えたことはない。

水野賢仁取締役:これだけ世間を騒がせたニュースが出ているが、その報道以降も、変わらずイベントが開催され続けている。足元の業績に大きく影響が出ていることは全くない。この状況は変わらず継続できると考えている。

―来年と再来年3月までに、決まっているコンサートについては、変化なく開催するとジャニーズと話をしているのか
長谷川社長:そうだ。

―事業としては手堅いのかもしれないが、一方で、ジャニーズとそれなりにビジネスをしっかりやっていくということは、レピュテーションリスクなどもあるような気もする。この先、ビジネスとしては絞っていくという判断もあるかも知れないし、その辺については、先方と話し合いをしていくかもしれない
それをしっかり話し合っていくが、今どうこうという大きな変化は起こってはいない。新しい会社を作り、順風満帆とは言わないが非常にうまく運営していると思う。

我々の場合は、ファンクラブが後ろにいて、その座席を決めるという仕事だ。システムを利用しているのがジャニーズなので、その依頼がある限り、きちんとした仕事はこれからも続けたい。

来年、再来年の3月の末まで、コンサート会場を押さえて、誰に歌わせるか、コンサートに出演させるかは新しい会社の発想だと思うので、そこは我々の手の届かない範囲だ。

―スキャンダルに絡んでジャニーズ側からの説明はあったのか
今はない。ただ、取引する関係上、座席を決める仕事はどうなるかということは、はっきり聞いて、コンサート会場を押さえているので、今まで通り、誰が歌う、誰が踊るは別として会場を満杯に埋める仕事は(あると)しっかり聞いているので、今後もその仕事はしていきたい。

―売り上げの見込みはある程度立っているのか
そうだ。

水野取締役:これまでのジャニーズ事務所と付き合い続けるわけではなく、今後は新会社に契約を移行していくことになるだろう。彼らは準備中で、そのプレスリリースにもある通り、来年4月をメドに順次契約を切り替えていく。我々はしっかりと対応しながら継続して付き合いたい。

―チケッティングのシステムの特徴について。チケット販売に関しては転売の問題が出てくるだろうが、ロココのシステムでは抑制できるのか
長谷川社長:ジャニーズも非常に困っていた。1100万人とはいえ、同じ人が2~3人分のチケットを買っている場合がある。本人を確認する難しさがあり、必ず追跡して発見し、そういう人が二度と買えないシステムにしている。

顔認証で本人であることを確認するシステムも考えていくべきだろうし、我々は顔認証のシステムを持っている。できるだけ転売できない形を今後はジャニーズとともにしっかりと検討していきたい。

―上場後にM&Aを展開するようだが、今の事業とは別の会社が対象なのか、シナジーを考えているのか
我々の路線から逸脱したことは当面考えていない。ServiceNowを中心にやっているが、それに関してよりシナジーが出る会社があれば、コンピュータ業界を中心とした買収や、人をより多く採用できる会社とのM&Aがあればと思う。今は全く白紙だ。

―株主にベンチャーキャピタルはいないが、筆頭株主のイッシンはどんな会社か。今後の関係は
イッシンは私の資産管理会社として作っており、今後も管理・監督をしていくつもりだ。特別な会社ではない。

―上場時点での長谷川社長の持株比率について知りたい。
イッシンと私、親族を入れて、50%を切った。

水野取締役:49%だ。

―スタンダードに上場したが、流動性も含め、より幅広い投資家との関係は
長谷川社長:根本の事業とシナジー効果が出るところとは、大歓迎で、そういう人たちがいたらしっかり耳を傾けて、事業の展開に役立てていきたい。

顔認証にしてもそうだが、7つの事業を持っているので、協力してもらえるところがあると、売上が大きく上がる瞬間が出てくるかもしれない。それがロココの魅力的な部分ではないか。

―業務提携を踏まえて株の共有などをするのか
独立独歩できたので、株の共有は今の段階では全く考えていない。

水野取締役:今回の公募・売出で、相当数の流動性は高まっていると見ている。目先では十分な流動性は確保できているのではないか。

―2023年12月期の業績予想では増収減益だが、その背景と今後の利益水準の見通しは
売上は4%増、利益が減益となっている。昨年は、コロナ禍の影響を受け、それによって利益が大きく上がった。特にコンサートだ。コロナ禍の真っ最中の時は、コンサートイベントを全くできなかった、もしくは規模の縮小なりで抑えられていた。昨年からコンサートが回復して、通常期よりも多くのイベントを開催した。

もう1点は、コロナワクチンのコールセンターを受託しており、これによって昨年に大きく利益が出た。今期は通常の状態に戻って、昨年から見ると減益になっている。

―今後に関しては、ServiceNowの話も含めて良い感じに盛り上がるのか
今後もServiceNowを軸として、高収益の事業へと成長していくと見ており、伸びていくだろう。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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