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上場会見:ビーウィズ<9216>の森本社長、クラウドPBXで市場を先取り

2日、ビーウィズが東証1部に上場した。初値は公開価格の1400円を5.71%下回る1320円を付け、同水準で引けた。同社は、自社開発のクラウド型 PBX(構内電話交換機)である「Omnia LINK」のデジタル技術を活用したコンタクトセンター・BPOサービスなどを手掛ける。Omnia LINKは、電話の受発注から音声認識、応対の品質評価、顧客管理などコールセンターに必要な機能を備え、外販も行っている。森本宏一社長がオンラインで上場会見を行った。

森本社長は、事業の特徴として、クライアントとの契約期間が長期化する傾向があり、2021年9月時点で平均72ヵ月ほどと説明した
森本社長は、事業の特徴として、クライアントとの契約期間が長期化する傾向があり、2021年9月時点で平均72ヵ月ほどと説明した

―初値が公開価格を下回ったことへの受け止めは
初日の株価として真摯に受け止めている。今後、しっかり事業に向き合って継続的に成長させながら、株式市場でも評価してもらえるように取り組んでいきたい。

―クラウド型PBXのOmnia LINKがコールセンター業務に必要な機能を網羅したオールインワンのシステムで類例がないとのことだが、コールセンターで顧客の声を処理・分析するために音声認識を提供する企業と部分的に競合する。特に音声認識の面での競合優位性は何か
飯島健二副社長:当社の音声認識のエンジンは、GoogleのGCPと、MicrosoftのAzureの2つを使いこなしている。BtoCの顧客では、Googleのほうが住所や名前の認識率が高くなること、Azureを活用するパターンでは、例えば、 BtoB の顧客かつ専門用語や特別な商品を辞書登録しているところが特徴だ。

優位性は、使い分けられることで認識率の精度に差が出ること。もう1点は、Omnia LINKのオールインワン(という性質)に帰着するが、音声認識したものをどう活用するのかがポイントだと考えている。その用途として「Qua-cle」という応対を評価するシステムや、FAQを提案する「seekassist」というソリューションを自社で持つことが優位性と理解してもらいたい。

―国内外を問わず、意識する競合は
森本社長:まずOmnia LINKを中心としたシステム市場では、海外の大手の PBXベンダーをベンチマークとしており、Avaya(アバイア)のオンプレミスの市場が日本にはたくさんあるので、それを我々のクラウドシステムで置き換えていきたい。さらに、米国にはRingCentralという、コミュニケーションにより長けたプラットフォームを持つ会社もある。その日本版といったところで、日本の市場を先取りしたい。

国内では、コンタクトセンター業界とは全く違う業界で、エス・エム・エス<2175>という介護人材に加え、システムのソリューションの 2つの大きな事業を展開している会社がある。業界は違えども、コンタクトセンター・BPO業界の人のソリューションにとどまらず、システムのソリューションを提供し、業界のDXと付加価値を高める事業を目指したい。

―RingCentralのシステムの機能に追随する、あるいは追い越すという状況だと思うが、Omnia LINKは日本市場に適合した独自の進化を遂げる状況にあるのか
飯島副社長:Omnia LINKの特徴として、日本市場にフィットできるかという面では、RingCentralはまだ日本国内には入ってきていない。日本特有の03や080から始まる「0ABJ番号」という番号体系への適応は、海外のソリューションでは難しいのではないか。

一方、Omnia LINKは、コールセンターの「ザ・PBX」という機能を持っていて、0ABJ番号にきちんと対応できることから、コールセンターのPBXからオフィスユース向けに広がっていけるのではないか。

―成長戦略で「第3フェーズ」という言葉があったが、いつ頃までを予想しているのか。また、同フェーズでの投資額の規模は
森本社長:2030年を見据えて事業を作っていきたい。今度の夏頃までに新しいサービスをローンチして、プレ営業も含めて顧客に案内する。2025年に事業としての採算性を取りながら、30年までに大きく花開かせていく。

投資額に関しては、資金の使途でデジタルDX投資がある。主にそちらに充てようと考えている。当初の予定では、6億円ぐらいを予定していたので、その規模の範囲で投資も進めていきたい。

―第3フェーズの戦略の1つである非対面接客への転換が難しい金融や不動産業界でのソリューション展開について、クライアントとエンドユーザーが享受できるメリットは具体的にどのようなものか
例えば、金融業界や不動産業界は、対面での契約手続きがまだ必要になる。そこで我々が目を付けているところは、対面接客から非対面接客に移れないかというのが クライアントのメリットの1つ目となる。もう1つは、クライアントが店舗を分散しているところだ。例えば、オンライン上への集約が可能になれば、組織の生産性が高まるのではないかと見ている。エンドユーザーにとっては、今まで店舗に足を運んでいたものをオンライン上で解決できるようになる。

―今後のROEの考え方について
現段階では、各種要件が定まっていない状況なので、具体的な数字については回答を差し控えたい。今後、資本コストを上回るROEを目指してしっかり経営していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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