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上場会見:ヒューマンテクノロジーズ<5621>の家﨑社長、コスパでシェアを取る

22日、ヒューマンテクノロジーズが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1224円を2.45%下回る1194円を付け、1240円で引けた。バックオフィス業務を支援するクラウド勤怠管理システム「KING OF TIME」を提供する。加えて、「クラウド人事管理システム」や「KING OF TIMEデータ分析」、「KING OF TIME給与」など関連サービスも展開。利用企業は5万社以上で、300万を超えるユーザーIDを持つ。家﨑晃一社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

売上の7割弱が販売店やOEMなどのパートナーによるもので、働く人が毎日使う勤怠管理システムがDXの入口としてのツールになると話す家﨑社長
売上の7割弱が販売店やOEMなどのパートナーによるもので、働く人が毎日使う勤怠管理システムがDXの入口としてのツールになると話す家﨑社長

―初値の受け止めは
株価に関しては我々が何かできることはないので、中長期的にきちんと上げていく努力をしていきたい。

―期待とどう乖離があったのか
乖離はなかったと思う。

―勤怠管理などの業務系のクラウドサービスはほかにもあるが、現在の市場環境をどう分析しているのか
2024年問題と言われているが、まだ紙やExcelなどでの“アナログ管理”が多いので、我々のクラウドサービスでデジタル化していくことを心がけている。我々への問い合わせでは5~6割ぐらいは、アナログ管理をしている会社からが多いので、ニーズ的にはクラウド化が進んでいない分野だと見ている。

―KING OF TIMEの強みは
このサービスを20年続けており、顧客のニーズを20年聞き、開発し続けてきている。そういった顧客のニーズに全て応えられるサービスになっている。勤怠管理は、打刻して集計を取るだけなので一見簡単そうに見える。だが、顧客の就業ルールに基づいて自動的に計算していくには、いろいろと複雑な機能が必要になる。それを20年積み重ねた結果が今になっている。

―KING OF TIMEを開発した経緯について
勤怠管理サービスを作ろうと思って作ったわけではなかった。親会社が携帯電話の販売店を営んでおり、不正が多かった。店舗に来ていないが来ているというタイムカードが押されている。顧客からクレームがあって電話してみると来ていないといったことがあった。

当時、アマノなどベンダーを調査したが、10店舗ぐらいの店舗に導入するにはコストが高過ぎた。当時、子会社にエンジニアがいたので、その人にまず開発をさせた。ASPで作り、不正ができないような指紋で生体認証を使うことを心がけて開発した。自社利用を目的に作ったサービスだった。

―シェアが4.5%ほどだが、将来的にどのぐらいにしたいのか
まずは10%を取りたい。倍を目指して頑張る。

―競合企業とは、サービスの部分ごとに競合するイメージがある。棲み分けや独自性は
勤怠管理で始まっているので、勤怠管理を中心に検討する顧客は我々を選ぶ。例えば、給与計算のリリースは2月になるので、勤怠から給与を全て1つのベンダーでまとめたいところは、ほかのベンダーに行く。勤怠管理をきちんとやりたい顧客には、きちんと届くのが我々の強みだ。

―1IDで月額300円の利用料金だが、将来的には値上げの可能性もあるとのことだが、そのような判断をしそうだという背景は
時期などは決めていないが、可能性としてはできるだろうと思っている。まずシェアを10%ぐらい取ることを優先する。値上げというよりは、コストパフォーマンスでシェアを取ることを目指す。

―原価が上がるなどいろいろあると思うが、単価向上が可能な理由は
競合他社と比べて、我々が給与計算までを300円で出せているところ、ほかのベンダーでは1000円いくらの料金になる。そういったところを比べても、機能的に我々のほうがきちんとしていれば、値上げの余地はあるのではないか。

―35の会計系SaaSとAPI連携しているが、給与計算を扱うものがあり、衝突しないのか。あくまでも勤怠管理の打刻データのみを入口にするのか。どのような連携をするのか。
給与計算の部分に関しては例えば、マネーフォワードやフリーのサービスがある。そこに関しては我々のサービスを使うのではなく、我々の勤怠管理から給与計算のほうにAPI連携をして、つなげてもらう。勤怠管理のデータを給与計算側に渡す。

―給与計算BPOサービスを広げていくとのことだが、BPOと聞くと、人手がかかるイメージがある。労働集約的な構造になっていくのか。営業利益率の話などはどうなっていくのか
我々が目指しているBPOは純然たるBPOではなく、まずKING OF TIMEのサービスで、勤怠管理と人事労務、給与計算のサービスで自動化を目指す。それを実現した後に、BPOを請け負うので労働集約型を目指すのではない。1人の人間が何社かを見るという限定的なものではなく、自動化をした後のBPOを目指していくので、労働集約型にならない形を目指す。

―自動化をしていくと顧客接点が限られてくるだろうが、コンサルティング的な観点、顧客とのタッチポイントをどうしていくのか
そこを、有償プレミアムサポートと呼んでいるが、顧客から料金を受け取って、有償でプレミアムサポートをしていく過程で、労務相談や給与計算BPO、ほかのパートナーサービスのサポートなどで支援していくことを考えている。

―将来展開に、AIを駆使したセンター分析とある。どんなものを想定しているのか。ヘルスケアや不正検知などいろいろな使い道が想定し得るが
勤怠管理を中心にデータがある。それは人に紐づくデータなので、今後、ほかのパートナーサービスから、例えば、健康管理や工数管理のデータといったものを我々のサービスのデータと紐づける。生産性の向上につながるようなデータをAIなどで分析し、提供していきたい。

―海外展開について、もう少し具体的に。東南アジアに進出し、スリランカは政情不安で休眠状態とのことだが、今後の展開と、別の地域は
スリランカは販売拠点ではなく、開発人員のための子会社だ。政情不安になってしまったので、一度休眠にして雇用形態を変えている。

―シンガポールのほうとの業務委託、開発エンジニアとの契約関係を変えた
そうだ。販売拠点に関してはタイに設立し、まずは日系企業を中心にターゲットとして取り組んでいる。海外の勤怠管理は給与計算がメインになり、計算するためのツールの1つとして勤怠管理がある。

当社は日本向けの給与計算はリリースしたが、まだ海外向けのものをリリースできていない。それをリリースできるまでは、日系企業の、労務管理だけでもきちんとやりたい顧客をターゲットにし、2年後ぐらいをメドに給与計算の海外向けカスタマイズを行い、ローカル企業も合わせて攻めていきたい。

工場が散らばっているので、タイを中心に東南アジア全体、ベトナムやシンガポール、マレーシアなどに広げていきたい。

―インドはどうか
難しいとは思うが、可能性はあるだろう。

―理由は
インド人がきちんと労務管理をするというイメージが湧いていないので、ニーズが高まれば、人口も多いので可能性はあるのではないか。

―日系企業はインドにかなり進出している。入口として日系企業の勤怠管理を、という話だったので
そういう可能性はあるのではないか。

―足元で脅威に感じているライバルは
クラウドサービスで始まっているジョブカンやジンジャー勤怠は競合になる。あとはマネーフォワードやフリーだ。フリーは我々がOEM提供しているので仲間のようなものだ。マネーフォワードといったベンダーが、今後、ある部分では競合に、ある部分では協業していくと見ている。

―海外ではどうか、欧米系の大手のベンダーが強いといったことはないか
ERP的なWorkdayといったものは既に出回っているが、中小企業向けには、勤怠管理や給与計算は、我々が調べた限りでもローカルの1ベンダーが出ている程度なので、日本の我々のサービスのレベルとコストパフォーマンスをもってすればチャンスはあるのではないか。

―当面は日系企業がターゲットだが、その後は地元の中小企業がターゲットになるのか
日本も海外でも、中小企業がターゲットになると考えている。

―恵志章夫会長と資産管理会社の持株を合計すると比率が過半数だが、上場後は
篠田修取締役:合計して(半数を)若干切る水準になる。

―会長との今後の関係と、伊藤忠商事との関係は
家﨑社長:海外展開を考えた時、伊藤忠とのネットワークを活用できることもあるので、業務提携を締結して1%出資してもらっている。

―いつからか
篠田取締役:1年半前からだ。
家﨑社長:恵志会長は代表取締役会長になっており、引き続きビジネスで一緒にやっていくので現状のままではないか。

―方針が一致している
そうだ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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