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上場会見:ラバブルマーケティンググループ<9254>の林社長、「愛されるマーケティング」

21日、ラバブルマーケティンググループが東証マザーズに上場した。初値は付かず公開価格(1260円)の2.3倍となる2898円の買い気配で引けた。同社は、SNSアカウントの運用代行や、運用支援のSaaS型ツールの開発・提供などのソーシャルメディアマーケティングや教育事業を手掛ける。マーケティングオートメーション(MA)ツールなどの導入・サポートも提供する。林雅之社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

林社長は、SNSマーケティング支援の実例として、地方自治体のアカウント運用によるフォロワーの増加と、定量的な効果の伴う観光誘致を紹介した。
林社長は、SNSマーケティング支援の実例として、地方自治体のアカウント運用によるフォロワーの増加と、定量的な効果の伴う観光誘致を紹介した。

―初値が付かず、買い注文が殺到する状況をどう受け止めているのか
メンバーと一緒に作り上げてきた会社が、一定の評価を市場から受けている状況と思うので、非常に嬉しく思う。一方で、それだけ期待に応えなければならないので、これまでとは1段上の責任感を持って経営に取り組みたいと改めて思う。

―時折、企業のSNSアカウントが炎上しているが、そのようなケースでは専門家が介在していないことが多いのか
さまざまな企業のSNSアカウントの運用を長年支援してきたが、大きな炎上が起きた事例はない。プロとしてのノウハウがあるほうが、起こりにくくなるとは言える。

―炎上するかしないかで決定的な違いはあるか
絶対に避けたほうがいい、気を付けたほうがいいテーマはいくつかある。例えば、過去に大きな災害があった日などに、言い方は少し難しいが浮いた投稿をしてしまうと傷つく人が出てしまい、そのことによって炎上が生まれるということがあり得る。それ以外にも、反対意見がでやすい話題は非常に慎重に扱う必要があるなどさまざまなポイントがある。

―そのような知見を生かしてSNS運用を代行しているが、運用を委託している企業が内製化のために教育事業を利用することは相当数あるのか
数としては少ないが、そういうパターンもあり得ると考えている。我々としてはそういう顧客にも便利に利用してもらえるようにSaaSのプロダクトを提供している。教育のプログラムもあるのでそういった形で支援できればと思う。基本的には我々の立場としては、ノウハウの蓄積が非常に重要な領域なので、我々のようなプロに任せてもらったほうが、効果を出してリスクも少なく運用ができる。

―運用支援のSaaSツールで工数が削減されるというが、定量的にどのぐらい減るのか
顧客の声のような形で工数が半分に減ったというデータはある。例えば、Twitterに投稿する内容は上長に確認を取らなければならないことが多いが、そのような確認作業もツール上で行うことができる。それ以前はエクセルに入力して修正が入り、直して先祖帰りしたりバージョンが増えていくことを考えると、かなり工数が減ることが分かると思う。また、PCとスマホで見る画面は異なる。会社ではPCで作業することが多いため、いったんスマホで確認しないとリスクがある。我々のツールでは、スマホ上ではこう見えるというシミュレーションができるので大幅な工数削減になる。

―他社と比較しての強みは
新規顧客獲得の仕組みができあがっていることが圧倒的に優れている。機能的には、マーケティング・オペレーティングサービス(MOS)という運用支援が何よりも重要であるという考え方から、あらゆる業務を内製化して正社員によって提供している。例えば、Twitterやインスタグラムに投稿するコンテンツを、他社は結構な割合で外部のフリーランスや会社に委託することが多いと聞いている。そのような部分も自社で行うことでノウハウが蓄積して強みが活きてくる。また、SaaSプロダクトの強みを作ることにもつながってくる。非常に手厚いサポートを顧客に提供していることが強みだ。

―新規顧客をどう増やすのか
新規の受注を増やすためには、リードを増やす必要がある。「愛されるマーケティング」を掲げており、顧客が望まないタイミングに電話でアポを取って売り込みをするなどの活動を行っていない。その代わりに業界の老舗として、情報発信を積極的に行っている。

出版やWEBメディアへの掲載であったり、SNSマーケティングに関して困ったことがあった場合に検索すると結構な確率でたどり着く「WELOVESOCIAL」というメディアを運営している。このような活動で、先方から来てもらうインバウンド・マーケティングに注力し、年間で新規のリードを3000件以上獲得できる仕組みが整っている。これが新規の受注を増やすうえで非常に重要な施策だ。さらに重要なのは、そのリードから実際に顧客とするための活動に、インサイドセールスの組織を拡充していることだ。

―ツールがあっても人の力が必要だが、今は社員がどの程度いて、どのぐらいまで増やすか
竹内美稀執行役員:9月末時点で、グループ会社を含めて107人で、今後は増やしていく。

―MA事業は、Salesforceなどの導入支援を行い自社サービス開発は行わないのか
林社長:現時点では圧倒的なプロダクトが存在している。SNSマーケティング事業で、FacebookやTwitter、インスタグラムといった他社のプラットフォームの活用支援を行っているので、同様の感覚で、他社が提供するMAツールの導入や運用を長期的に支援する事業に育てていきたい。

―MA事業はSIerなども行っているが、どのような競争戦略で成長させていくのか
我々自身がいち早くMAツールを導入してインバウンド・マーケティングを実践してきた。そうしたノウハウに基づいて、マーケティングの知識を基に運用を支援できることが、技術志向のSIerと比べると差別化要因になると期待している。

―運用支援が売上高の8割を占めるが、3本柱の事業の売上高比率を今後どうするのか
支援ツールが21.9%だが、順調に売り上げに対する比率が伸びているので、さらに大きく伸ばしていくことが基本戦略となる。ただ、何%といった数値目標は現時点で定めていない。教育に関しては、SNSマーケティングに関する知識を提供し啓蒙することで、市場を作ったり、我々自身のSNSエキスパートとしてのブランドを作る目的もあるので、売上高にそれほどこだわらないで運用したい。

―SNSに詳しい人材がいないので力を入れていきたいのか
重要性に比べて、できる人材が少ないことが業界の課題としてある。それに対していろいろな形でサポートしていきたい。

―財務会計上のKPIと定量的な目標は
竹内執行役員:現状では売上高をKPIとして見ている。現状、特に数値としては定めていないが、今後定めていきたい。

―新規参入テクノロジーのイメージとは
林社長:今仕掛かっている具体的な新規参入のテクノロジーがあるかというと、ない。ただ、今後、FacebookがMetaに社名変更したように、例えば、メタバースがSNS的なプラットフォームになる可能性もあるかと思う。その場合、我々のSNSマーケティングの知識が活きる形で企業のマーケティング支援ができる可能性もあるのではないか。そういう粒度では、複数のアイデアを持っている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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