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上場会見:プロジェクトカンパニー<9246>の土井社長、「本質的なDX」

29日、プロジェクトカンパニーが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(2650円)を32%上回る3500円を付け、3950円で引けた。企業や自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を総合的に支援する。コンサルティングとマーケティング、UI/UX(ユーザーインターフェイス・ユーザーエクスペリエンス)を3本柱とし、ツールやWebサイトの問題点の洗い出しからマーケティング、新規事業の開発まで、業種を問わず一気通貫でサービスを提供する。土井悠之介社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

土井社長は、アジアをビジネスの射程に入れている点に関して、DX化による日本社会の変革に20~30年ほどの時間を要するとイメージしており、現時点では忘れてもらって大丈夫だと話した。
土井社長は、アジアをビジネスの射程に入れている点に関して、DX化による日本社会の変革に20~30年ほどの時間を要するとイメージしており、現時点では忘れてもらって大丈夫だと話した。

―初値が3500円となったが、感想は
非常に期待を持ってもらえていると実感した。DXという新しい業界のなかで、我々がイメージしている事業価値を高めていけたらと改めて身が引き締まった。

―公開価格が低過ぎたのではないか。証券会社とのやりとりや上場の手続きで課題と感じられることがあれば聞きたい
公開価格が安かったとは思っていない。当時の地合いも非常に難しい状態だった。株価の決定に際して、その後にマザーズ市場がかなり戻ってきた。

我々の価値とマーケットの状態を考えた時に、妥当であろうと証券会社との会話のなかで納得して決めた値段が2650円だった。投資家から見た時に業績やDXへの期待感が非常に強いことは改めて感じた。期待に1つ1つ応えていかなければならないと考えている。

―本当の意味での類似企業が国内にないことで、値付けの面でいろいろと議論が交わされたように感じるが、その議論は
難しかった。アクセンチュア<ACN>とベイカレント・コンサルティング<6532>の性質もあれば、KAIZEN Platform<4170>やSpeee<4499>、Macbee Planet<7095>、グッドパッチ<7351>というマーケティング系の会社に似ている面もあったので、どちらをどれだけの比重で見るのか非常に難しかった。できあがりの時価総額の規模などを鑑みて決めた。最終的にはミックスで見た。

―3つのカテゴリに該当する会社をそれぞれ見ながら混ぜ合わせて最終的な数字になったのか
コンサルサービスと広義のマーケティングサービスの2セグメントで、ベイカレントとKAIZEN Platform、グッドパッチの3社をミックスして考えるのが基本路線だった。

―経済産業省のレポートなどを見ていると、DXを満足にできている企業は日本ではまだ少ない。ネックの1つとしてレガシーシステムの存在が挙げられるが、どの辺にネックがあり、どのように解決するか
人の面が大きい。DXを行ううえで非常に大切なのは、(システム開発手法としての)ウォーターフォール型ではなく、アジャイル的な発想や思考が求められる。また、アジャイルといっても事業や組織を含めてPDCAを行う。これが絶対正しいと決め打つのではなく、これがベターだろうと改善を繰り返していかないと本質的なDXは実現していかないと思う。

そのような考え方にどれだけ日本全体が切り替わっていけるかがポイントだ。当社としては、我々のスタイルとしてプロジェクト推進を提案しながら、顧客のなかでそのような進め方が「本質的だね」と気付いてもらい、徐々に本質的なDXのプロジェクト推進が日本全体に広がっていくと、我々としても介在価値が非常に大きい。

―3つの柱の各事業領域に競合がいるが、それらを一気通貫でできることが強みで、同様の企業は限定的というが、具体的にどこか。また、それらの会社との違いは限定的と言ったのは観測できていないため。現時点では我々1社ではないかと考えている。例えば、Sun Asterisk<4053>はシステム開発領域で事業開発を一気通貫と言っているが、プロダクト開発を前提にしてそのなかでの一気通貫だ。我々は、プロダクト開発を伴わない組織の改革や、既存のツールをどう組み合わせるかという部分を含めての一気通貫なので、広範囲で支援している会社はあまり見ない。

フェーズごとに、例えば、事業開発フェーズではアクセンチュアやベイカレントが一応の競合に当たる。ただ、彼らは戦略からシステムの開発・構築がメインの プロダクトで、そこに強みを持つ。我々は開発・構築もするが、もう少し細かな改善も含めて入り込んで行う。現場の人も含めて一緒にプロジェクト推進する。

そうすると顧客の内情や過去の失敗や成功の知見が貯まってくる。次に大きなプロジェクトをする機会に、「ベイカレントとプロジェクトカンパニーが入ったプロジェクトチームを作ろう」と我々が呼ばれることも多い。スペシャリティを持った会社と一気通貫で支援する我々のチームが掛け合わせで使ってもらうことも増えている。

―スマホアプリやWebサイトの使い勝手をテストするサービスである「UIscope」のテストモニターの母集団の規模と属性はどのようになっているのか
現在、UIscopeが独自に抱えているモニター数は3万人以上で、属性は幅広い。ビジネスマンも含めて幅広いパネルとなっている。ただ、例えば最近は、「BtoBのSaaS系ツールの使い勝手を改善したい」とバックオフィスの人に調査したいという希望があり、我々だけではなかなか集め切れないため、モニターを抱えている外部の会社と連携しながらリーチしていく。潜在的にリーチ可能なモニター数は100万人に近い。

―プロジェクトへの共同参画パートナー数が現在100人ほどとのことだが、いわゆるパラレルキャリアや副業的なものとして関わるのか
今のメインターゲットのイメージはフリーランスやベンチャー企業関係者だ。事業がなかなか成立しないなかで立ち上げをする傍らコンサルティングのプロジェクトに参画したいという人を中心に集めている。今後、中長期的に見た時に我々のビジョンをどう実現するかを考えると、副業の人もどこかの段階では視野に入れていくべきだと考えている。

―プロジェクトの一部に単発で関わるイメージか
今はコミットしてもらうことが多い。フリーランスであれば100%、ベンチャー企業の人であっても60%ほどは(力を)割いてもらう形でプロジェクトに参画してもらっている。

―業種・業態を問わずか。またデジタルに限らずイノベーション的なものにも関わるのか
我々が携わるプロジェクトは基本的にはDXの案件で、そのなかで業種・業態が幅広い。メディアや製造業、飲料など幅広い。

―財務KPIで最重視するものと、現時点での目標は
最も重視したいのは売上高成長率だ。過去70%前後、今期は84%まで成長率が高まった。目標としては60%から高くて80%ほどまでのどこかの成長率を維持できるように事業計画や体制構築を進めている。

―目論見書にあるが、平均勤続年数1年半は短いと思うが
社員数が伸びてきているのがこの1~2年であり、退職しているわけではなく、最近のメンバーでは3~4ヵ月前に入社した人が多いので、平均するとそうなっているのが主な理由だ。

―平均勤続年素1年半で、さらに採用を拡大する。1人前になるのに2~3年かかると思う。売上高60~80%を掲げる時に直近数年間は育成期に当たるが、爆発的に伸びるのはいつ頃か
時期を示すのは難しい。成長スピードは2~3年で見ているので、きちんとできれば一気に拡大する。2020年代の半ばほどから成長が加速するというか規模が拡大するので、売り上げの成長率は維持していく。

この1~2年では既存社員のマネジメント人材の候補があらかた見えている状況だ。そのメンバーが実際に数字を作れるかチャレンジさせていくフェーズにはいるので、1~2年は実績を積みながら、3~5年経った時に、育成をある程度形にできている状態になるのではないか。

―国内で同一の業態はないというが、海外の競合はあるか。また、海外進出は
最先端事例や会社をリサーチし切れていない。展望としてはアジアでは日本と同じような課題が出てくると思う。例えば、中国やシンガポールで2000年代に成長している企業では、過去のITシステムが残ったままではないか。そのなかでビジネスをしていると思うので、射程を拡大したい思いはありつつも、まずは日本社会のDXが我々の目下最大の課題で、実現するにも時間と労力がかかるので、そこにフォーカスしたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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