21日、バトンズが東証グロース市場に上場した。初値は付かず、公開価格の660円の2.3倍となる1518円の買い気配で引けた。神瀬悠一CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値が付いていないが
投資家や社会から期待されていると嬉しく思う。一方で、期待に応えていかなければと、身が引き締まる思いだ。
―業績の見通しや成長可能性について
具体的な数字は控えるが、マーケットが2ケタ成長しており、それをアウトパフォームするぐらいの売上成長を狙っていく。収益性では、当社は原価率が低いため収益転換がしやすい。進行期である2027年3月期でオフィス移転など固定費の投資を考えているが、利益率を急激に下げるようなマネジメントをするつもりはない。収益性改善を見据えつつ、進行期の営業利益率については前年並みの水準を維持する計画だ。
―M&AプラットフォームとM&A SaaSの2本柱で今後も事業を推進していくのか。どちらかに力を入れていくのか
我々にとっては、不可分なビジネス構造になっており、SaaSを便利にすればするほど、プラットフォームで売り手・買い手のマッチングニーズも上がるため、密接な事業関係になっている。そのため、今後も2つのサービスを強化していく。
―配当性向についてどのように考えているか
まずは無配として、成長戦略を進め、財務基盤を整えた後、しかるべきときに配当政策を検討していきたい。
―調達資金の使途は
人手のかかるM&A業務に対してイノベーションを起こせる可能性をAIに感じている。そのため、1つ目はソフトウェア投資に、2つ目は、採用力や人材の強化という観点で東京・築地のオフィス移転に充当する予定だ。
―総売上高に対してプラットフォームの売上が大きく占めるが、売上高比率は現状を維持していくのか。ほかに増やしていきたいものはあるか
現在、プラットフォームが約7割で、SaaSが3割ほど。2~3年は、この割合が大きく変わることはなく、両方を伸ばしていく。その一方で、新たなサービスメニューとして人材事業などの展開も検討しており、実際に新サービスを準備している。30万の会員がいることを強みに、新たな収益の柱を構築していく方針だ。
―高品質なサービスを維持していくうえで、社内ガバナンスや育成などどのような部分に力を入れていくのか
中小企業庁の資格制度の検討など、現在、M&A業界で品質の高い人材を増やしていく流れになってきている。我々は、先んじて社内でM&Aの知識をつける認定制度を実施しており、SaaSを使用している地方の税理士に対して教育・支援する立場にある。そのため、品質の高いノウハウを全国に普及させていくことは、我々の重要な役割とも考えており、社内教育の徹底やガバナンスの強化は不可欠で、今回の上場プロセスを通じても、重要視してきた。今後も体制構築を進めていく。
―昨今スタートアップ企業は、新規上場の難しさから出口戦略としてM&Aを選ぶ企業が増えているようだが、この状況を機会として捉えているか
捉えている。創業期では、後継者不在理由が7~8割だったが、年間1万件ほどの案件を公開・支援するなかで、半分が30~50代の社長になっている。
後継者不在だけでなく、エグジットもそうだが、さらに事業を伸ばすためにもう一段資本力のある会社と統合していくことが当たり前になりつつある。スタートアップにM&Aが広がっていることは、我々にとっては好機と見ている。
―今後の提携数の見込みは
我々が運営しているM&A専門家向けのSaaSは、3期目で1000社ほどと提携し、そこから登録者数を1900社にまで伸ばしてきた。直近の1、2年は1800から1900社と、数字の上では横ばいに見えるが、一方で、国が認定する経営革新等支援機関として、中小企業の社長に経営助言を行っている人たちは全国に約3万4000社いる。
そのため我々としては、地方の会計事務所や税理士を含め、この1900社という数字をもう1段、2段と増やしていく。北米を例に取れば、プラットフォームに約7000社の専門家が登録されている。北米と日本を単純に比較することはできないが、我々としても、まずは3000社、4000社とさらなる拡大を目指していく。
―業者が乱立しているが、差別化など中長期的にどのような戦略を考えているか
M&Aの仲介会社やアドバイザーはこの3年ほどで急増している。まだ資格制度などが本格化していない段階ということもあり、参入障壁も低いことで増え続けているのだと見ている。
しかし、プラットフォームというビジネスモデルの特性上、M&A業界に限らず、1社にリソースが集中し、Amazonのような一強状態になりやすい側面がある。いわゆる「ウィナー・テイクス・オール(勝者総取り)」と言われるように、1位と2位の間でKPIに圧倒的な差がつきやすいのが、このビジネスの特徴だ。実際、現在のバトンズと次点を売り手の支援案件数などで比較すると、大体4~5倍ほどの開きがある状況だと認識している。
もちろん、我々のビジネスモデル自体は参入障壁が高いわけではないため、競合対策は重視している。だが、何よりも業界のリーダーとして走り続けることが、ビジネスモデルとして重要と考えている。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]
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