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上場会見:エリッツホールディングス<5533>の槙野社長、コロナ禍からの復帰

27日、エリッツホールディングスが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1580円を26.58%上回る2000円を付け、2500円で引けた。京滋(京都・滋賀)地区を中心とした近畿圏で、不動産仲介と、それを起点にした分譲や賃貸物件の管理、利益率が50%に迫る居住者サポート事業などを手掛ける。槙野常美社長が「長栄ホーム」として1989年7月に設立した。槙野社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

システムのカスタマイズの進展に伴い、手順に従っていけば仕事ができる状態になっており、入社半年の新人も使い方を覚えれば、営業に挑戦できるようになっていると話す槙野社長
システムのカスタマイズの進展に伴い、手順に従っていけば仕事ができる状態になっており、入社半年の新人も使い方を覚えれば、営業に挑戦できるようになっていると話す槙野社長

―初値が公開価格を上回った
良い評価を得ていることに多少びっくりしている。上がり過ぎるのは怖いというイメージも若干持っている。初めての経験なので、どういう表現をしたら良いか分からないが、やはり驚きのほうが大きい。

―コロナ禍で影響を受けて、そこから回復し、今後成長するとのことだが、どこに最も打撃があったのか
特徴的なところでは、企業の転勤が少なくなった。それから、学生のリモート授業があったことから、京都に引っ越さなくても、しばらくの間は授業を受けられた状況だった。今はほとんど対面授業に戻ってきており、学生の需要が回復したと見ている。

―2022年9月期から翌期にかけて営業利益や経常利益が大きく伸びているが、背景を聞きたい
一番の背景は、今年の春の商戦である1~3月の契約数が、当初の計画よりもかなり伸びて売り上げや利益を下支えしたと考えている。売り上げと利益が伸びたうえに経費を予定以上に抑えられたことが非常に大きい。

―これはコロナ禍からの復帰を意味するのか
秋の商戦である10~12月から、コロナ禍がかなり下火になったので一気に回復した。今年に入ってから100%達成が続いている。

―不動産管理の現場で、管理人が見つからないケースについて時折聞くが、管理人材は不足しているのか
当社の場合、今のところ、分譲マンションの管理人は順調に入っている。賃貸マンション管理の現場では、通常、1万室を管理するために50人が必要な場合でも、30~35人で済むぐらいシステム化が進んでいる。そのため、事務系に大きくウェイトを割かなくて良い。オーナーに対する営業や、入居者に対するサービスに人員が必要だが、今のところ大きく不足していることはない。年間1300室は入手できているが、その程度であれば今の人数で十分対応可能で、驚くほどの人出不足というものは感じていない。ただし、これから伸ばしていくのに、人の採用では上場が役に立ってくれると考えている。

―東京圏は不動産価格が上昇している。京滋地区の不動産市況の見通しは
京都はコロナ禍の時でも土地の値段は下がっていない。例えば、上京、中京、下京区は高止まりしており、今は本当に高い状況なので、今後びっくりするほど値上がりするかというと、ある程度高い値で落ち着いているのではないか。

ただし、京都駅以南は、高さ規制が多少緩くなり、駅から北側でも、堀川通りなど大きな通りは若干の高さ規制の緩和があるので、そうした地域は少し上がってくる可能性がある。

―滋賀はどうか
相変わらず落ち着いていている。ただし、大津や西大津といった地域は、若干値上がりしている。

―京滋地区以外に進出するうえで意識する競合や、競合環境の認識は
地域ごとにナンバーワンの企業が存在するので、広告のスピード化や、店舗を展開することでオーナー開拓の量を広げていく。近畿の2府4県でテレビCMが流れており、岡山県と広島県、富山県、石川県、東海地区には、春にテレビCMが流れる。そういった地域から転勤してくる人に関しては、当社の既存店舗が活きてくる。

法人契約に関しては、大抵の企業が導入している社宅代行会社のほとんどと付き合いがあり、送客も近畿圏で店舗の増加に従って受け入れやすくなる。店舗展開で腰が据われば顧客は増える。

―海外展開について、マレーシアのほかにどんなエリアがあるか。展開の仕方も聞きたい
当初の思いではベトナムやタイ、マレーシア、インドネシアの4ヵ国には何とか行きたい。ただし、確固たる計画があるかというと、マレーシアがコロナで2年間閉鎖して出入国が禁止されていたので、如何ともしがたく、預かっていた物件を全てオーナーに返した。コロナ禍前に仲介した新築マンションの完成が来年の1~2月なので、完成したマンションを預かり、マンスリーやウイークリーのマンションで運用していく予定だ。

つい2~3ヵ月ほど前にカンボジアのデベロッパーが、マレーシアの視点を訪ねてきた。カンボジアの最も賑やかな所、米国で言えばニューヨークのような場所、川の中州で1番賑やかになるだろうといわれている所がある。デベロッパーがそこで分譲マンションを建設し、販売を手伝ってほしいという依頼を受けており、その販売がもうすぐスタートする。不動産売買の仲介では、マレーシアとカンボジアの分譲マンションを取り扱うことができ、広告やホームページ関連は立ち上がっている。

―海外部門の売り上げは
まだ全然だ。これから仲介を始めるが、年間500~1000万円ほどで、当社グループ全体の規模からは、種を植えて芽も出ていない状況だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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