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上場会見:STG<5858>の佐藤社長、マグネシウムで波に乗る

STGが21日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1920円を67.45%上回る3215円を付け、3180円で引けた。マグネシウムを中心とした工業製品の部品を製造・販売する。金型の設計から部品の鋳造、機械加工、仕上げ、化成処理、最終検査などを一気通貫で行い、事業を国内外に展開している。2019年6月にTOKYO PRO Marketに上場した。佐藤輝明社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

1度の成型で金型から部品を2個作成するといった技術的なハードルのクリアが大型受注につながったというエピソードなどを話す佐藤社長

―初値の受け止めについて
我々は2019年にTOKYO PRO Marketにファイナンス上場して値段が付いているので、3250円前後の株価が付いて、途中で最高で3910円になったことに関しては、ほっとした。その値段は一般の投資家が入って付いたので、冷静に受け止めて「こういうものかな」というのが正直な感想だ。

―原点は大阪の町工場だが、そこから始まって上場まで漕ぎつけたものは何だったのか。なぜ上場したのかということも絡むと思う
質問の前半だが、日本のものづくりということに対しては、近年、中国やASEANの台頭でスポットライトを浴びなかったが、こと部品というビジネスについて冷静になって考えている。

我々は中国でも台湾系や香港系と戦ってきた。もちろん中国のローカル、現地の本土の会社とも戦ってきて、タイにも出ていたが、いろいろな部品を集めて組み付けるのであればどこのメーカーでも良い。

部品を作るのは完全に自動化もできないし、アナログな部分がけっこうあって、儲からなかったら韓国や台湾、香港系、メインランドチャイナの人たちは皆すぐにやめていく。

日系の会社は、最後までこれを突き詰める、極めるというか、リーマン・ショックの時もコロナ禍でもそうだが、結局残るのは日本の部品メーカーで、踏みとどまって頑張る。部品という結果に表れにくいようなビジネスモデルをきちんとやっている。イメージが湧きにくいかもしれないが例を挙げると、ニデックにしろ村田製作所にしろTDKにしろ、そういうところはシェアもある。我々はBtoBの部品のメーカーとして力を発揮していきたい。

なぜ上場したか。競合が今後、中国の大手になってきて、彼らがどういう資金調達をするのかよく分からないが、それなりに付いていかなければならない。全部が全部そこに乗る必要はないのだろうが、ある程度は付いていけるようしておかなければならない。

成長スピードを速めて資金調達をする方法も多元化、複数あるというようなことで東証グロースに上場した。

―上場したくてもできないでくすぶっている町工場も多いと思うが運なのか。それともある時の1つの決断が、今振り返れば大きかったのか
運だと思うが、本当に中国がやばいぞというぐらい、「中国、中国」と言われていた2006年頃、中国に出てみて、意外と勝てるではないかというちょっとした自信があった。

あとは、当時も台湾系は凄い勢いがあったが、そういうところと勝負していくには、借り入れだけではリスクがあることと、人材も採用しやすくするためには、上場会社のほうが良いというのもある。主な理由として調達資金の多様化を考えると、エクイティ・ファイナンスをしなければならないということで上場した。

―思い切って海外に出たチャレンジが上場につながったのか
それは当然そうだ。

―PRO Marketに上場した意義と、今後の業績成長率について
よく質問されることだが、PRO Marketは海でいえば琵琶湖で、そういう湖のなかで、ある程度決まった株主のなかで対応していくことができる。ただ、監査法人の適正意見は、PROもグロースもプライムもないので、その部分はきっちりしていた。

瀬戸内海や太平洋に出る前、いきなり一般市場に来て株主にわいわい言われることなく予行演習ができた。あとは、PRO Marketに上場する前、今日を起点として7年前からきちんと予実管理をして監査法人に意見を出してもらってきた。その辺りはグロースに上場するに際しては、非常に良かった。

今後の成長に関して、グロースにいる限りは当然に売上高での2ケタ成長は必須だと思っている。

―マグネシウム部品は自然体でやっていれば経常利益率が2ケタに到達するとのことだが、基本的には経常利益率10%が目安になるのか
当然そう考えてやっている。実質では達成しても、決算書でそれが確約できるかどうかというのはその時々の状況による。人材採用や、チャンスがあれば投資をして減価償却費が嵩む可能性もあるが、通常では10%を楽に超えるビジネスモデルだと考えている。

―自動車がこれから伸びていくと、自動車向け製品の販売比率が上がってくるだろうが、現在自動車向けがどのぐらいで、今後、自動車関連銘柄になっていくのか、それとも比率を抑えていきたいのか
自動車関連銘柄と思われるのは我々としても非常に不本意だ。ティア1、ティア2と続いて、よく、某大手の系列と見做されたら値段を叩かれて、毎年5%ずつコストダウンと有無を言わさず言われるが、我々はこのビジネスを始めて、毎年定期的にコストダウンと言われたことがない。

マグネシウムのビジネスで、価格決定権がどちらにあるかと言えば、五分五分かむしろ6対4で我々にあるのではないか。自動車関連銘柄=コストダウンというイメージがあるが、我々はそういうことは全く考えておらず、そういう経験もない。自動車関連銘柄と言われるのに対しては、あまり良い感じはない。

軽量化なので、自動車ではなくても何でもいい。たまたま今のEVを始めとする軽量電動車の波に乗っているので、自動車関連銘柄と言えばそうなのだろう。売り上げは50%程度になっている。ただ、普通のティア1、ティア2というようなアルミや亜鉛、プラスチックなどの部品を作っている会社とは全く違うということは、ここでも再度言いたい。

―比率は自然に任せれば上がっていく。
上がっていく。

―特にバランスを取ろうということではなく、伸びるところに伸ばしていくのか
ドローンなどの部品の量産も一昨年から始めている。どちらで利益が出るかという話はあるが、自動車のメーターパネルは材料も大きいので、売り上げの嵩は張る。

ドローンやミラーレスカメラの部品は利益率も限界利益率も非常に高いので何が良いかは分からないが、売り上げのボリュームで言えば、やはり原材料費が多いので車なのだろう。戦略ドメインである電気自動車関連に経営資源を集中して、その波に乗ることは大前提だ。

―マグネシウム部品が自動車のリフレクターとメーターパネルに採用されているが、今後どのような部品への展開が見込まれるのか
いろいろ来ているが、中国では、ボディーはけっこう錆びたりするが、ハンドルはもう始めているし、今はリチウムバッテリーのカバーがマグネシウムで作られようとしている。シートのフレームもマグネシウムになってきている。

今、日本でトヨタや日産、ホンダ関連だけを見ていたら、「本当にマグネシウムの需要はあるの?」と思われるかもしれないが、中国や欧米を見ると考えられないぐらいマグネシウム化が進んでいる。何で日本の大手は採用しないのかよく分からないが、ボディーは雨に濡れるような部分では採用されにくいとしても、そのほかは日本でも一気に進んでくるのではないか。現に日本以外では使われてきている。

―国内には競合が少ないが、世界の競合に対する優位性は
中国にある会社が多い。BYDやフォックスコンがマグネシウムを生産する世界で1番大きい会社だが、中国国内で作って売っている。経済安全保障や地政学的に我々のターゲットとしている顧客からは、できれば中国での生産は避けてほしいという声が多い。そういう意味では強みというか、今のところは競合していない。ガチンコでの勝負になると、我々も早く成長して資金を調達して、さらなる設備投資や大きな機械を入れていかなければならない。

―マグネシウムの需要が増えているとのことだが、原材料の確保は
ドロマイトという原料が元だが、最近までは、その鉱山はほとんど中国だった。マグネシウムの旺盛な需要が出てきたので、カナダやイスラエル、ノルウェーなどでも作り出して、我々も調達源を中国以外でも確保していきたいし、中国一辺倒ということにならずに済んだのかと多少安心している。

ただ、量的にはまだ圧倒的に中国が多いので、原材料の調達にもう少し踏み込んで急がなければならない。ただ、昔はレアメタルだったが、今は解除されており、その点はほっとしている。

―株主に複数のベンチャーキャピタル(VC)が入っているが、どういう経緯で資金調達をしたのか。PRO MarketではVCは売却せず、今回の売り出しからか
PRO Marketの時も、満期が来たものは売られていた。PRO Marketには珍しく取り引きがあった。調達の経緯は、TNP中小企業・ベンチャー企業成長応援投資事業有限責任組合という会社がリードインベスターだが、そこの会長は我々がソニーのVAIOを始めた時の担当常務で面識があった。

その人が退任してTNPというVCに行った。シリコンバレーの視察に一緒に行った時、「将来、エクイティも調達したい」という話をしていたら、「それだったらうちがやるよ」という経緯で、VCが1社入ると呼んできてくれる。芋づる式に来て始まった。

タイに出る時に借り入れが増えてきたので、借り入れを増やすばかりではリスクがある。将来に上場を考えると、「佐藤家の比率が」と考えたら会社を大きくできないので、増資を繰り返しながら、エクイティとデットのバランスを取りながら、資本政策をやってきた。

―パブリックになったので、後継者は佐藤家からなのか、もう少し広くという意味合いなのか
それはもう広くだ。私も息子が2人いて、全く排除することではないが、佐藤家が継ぐとか継がなければならないというのは全くない。

―息子は社内にいるのか
いない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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