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上場会見:イシン【143A】の片岡社長、“産官学金”のシナジー

イシンが25日、東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の1080円の2.3倍となる2484円の買い気配で引けた。ベンチャー企業のブランディングや採用マーケティングを行う「メディアPR」と、企業の自治体向け販促や営業支援の「公民共創」、国内大手企業が組織内外の知識や技術を交換して技術革新を行う活動を助ける「グローバルイノベーション」の3事業を展開する。メディアで業界に参入し、ソリューションを提供しつつプラットフォーム事業につなげる「MSPモデル」を特徴とする。片岡聡社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

片岡社長はこれまでに構築したネットワークとMSPモデルを活用して、第4、第5の事業の開発に注力したいと話した

―初値が付かなかった
もっと頑張れという高い期待の表れと思っている。非常に強い期待として受け止めているので、さらに精進していきたいという気持ちだ。

―投資家は、安定的に成長することは分かっているが、急成長に関しては確信を持てていないようだ
今までの成長に関しては、維持もしくは向上させていくのが大原則だと考えており、それは既存事業で十分にできるだろう。(急成長は)まさにこれからのチャレンジポイントだ。上場したからこそ手掛けられるものもある。一方で、上場には、大企業や自治体との接点が非常に増えてきて、それを加速するための意味を持たせているので、しっかり成長させていきたい。

―3事業についてそれぞれ紹介してもらったが、今後どのように、どの事業を中心に、どこまでその業績を伸ばしていくのか
公民共創事業を中心に業績拡大を図りたい。もちろんメディアPR事業もグローバルイノベーション事業も、それぞれポテンシャルを持っている。この2事業に関しては既に高い収益性を実現し始めている。堅実な成長を果たしたうえで、そこで得た収益を公民競争への投資に振り向けながら、成長を実現させたい。

良い意味での筋肉質な体質を維持しながら、売上が上がることによって、利益もリニアに上がっていくメカニズムを維持したい。近年はそれが顕著になってきている。

―公民共創事業に投資を振り向けるとのことだが、具体的にどういう分野に投資するのか、もう少し具体的に教えてほしい
自治体とのビジネスをどう始めればよいか分からない、何とかしたいと思っている企業が多く存在している。そういった企業の力になれるように、プロモーションもそうだが、主にセールスの部門、企業向けに営業活動をする。そういう部門だが、現在20人弱の組織の増員・増強を図っていきたい。

―要するに採用か
そうだ。

―事業で戦略的に検討しているものはあるか。既存事業を拡大していくイメージか、それとも新事業か
採用を強化しつつ、公民共創のメディア、ソリューション、プラットフォームの3つとも業績が伸びている。まず、既存の3サービスを強化していきたい。そのうえで、新しいソリューションの開発にも取り組んでいく。先月にGMOグローバルサインと事業提携を締結した。これは公民共創事業でのソリューションを一緒に新しく開発する取り組みだ。

企業の自治体に対する営業活動のプロセスはさまざまだが、その過程で我々が支援できるカバー領域を広げていく取り組みだ。この部分に関してもビジネスチャンスは多分にあると見ている。このようなソリューションの開発をいくつできるかというところだ。

―具体的にどういう領域をカバーしていくのか
今までは、BtoG(Business to Government)マーケティング、企業が自治体に対してのマーケティング・販売促進の前半部分を支援するケースが多かった。メディアでのプロモーション支援、我々のクライアントの商品をまず自治体に知ってもらう部分がけっこう多かった。

もう少し進んだところで、高知県にある我々のテレマーケティング拠点を活用して、電話による商品の簡単な案内といった部分にとどまっているのが現状だ。このなかでも、業績に関してはしっかり伸びている。

例えば、企業が自治体に営業する行為に、商談の形成など、より近いところの支援(がある)。観点が広くなるが、今回の取り組みでは、全国の販売パートナーを我々がネットワーキングし、GMOサイン、GMOグループの商品を一緒に販売してもらう営業チャネルの形成支援にも広がっていく。

BtoGマーケティングの前半の、初期段階の支援だけではなく、広範な後工程も含めて支援するソリューションを開発していきたい。

―後半の取引が成立できるところまで支援していく
一番はそこが大きいが、これからだ。

―グローバルイノベーション事業について、企業データベースを持って活動している会社は多いだろうが、競合の状況やそれらに対する優位性については、
当社としてもデータベース型×スタートアップという文脈での(競合)プレーヤーを認識している。1つはデータベースに格納している305万社という社数にアドバンテージがある。

特に、海外のスタートアップへの情報アクセスでは、英語をベースにした企業情報が非常に多いが、我々は日本語で展開している。日本にとどまることなく世界のスタートアップへアクセスできるデータベースとしてはストロングポイントと思っている。海外のデータベンダーと連携して活用しつつ、我々が翻訳をしているので、ほかのサービスよりもアドバンテージがあるのではないか。

―3事業のシナジーはどのような状況なのか
これからの部分と考えている。3事業で既に得ている“産官学金”とのネットワークがある。ビジネス的にどのようにシナジーを出していくのか、これからという前提で例えば、昨年3月に、京都府と、世界の脱炭素を推進していくイベントを共催した。

来場者は世界のスタートアップ、日本の行政関係、大学、金融機関の関係者2000人ほどが来場した。どのようにGXを推進していくかという取り組みをした。これは我々が保有するネットワークがないとできないものではないか。

もう1つは、プラットフォームサービスに関してで、グローバルイノベーション事業で、データベースを軸にしたプラットフォーム機能を先んじて開発・強化してきた。これを今後例えば、公民共創事業のBtoGプラットフォームに機能を実装できないかといったシステム的なアドバンテージを横展開するシナジーも持たせていきたい。

―新規事業の探索状況は
まとまりのあるテーマに関しては常に模索している。今回のIPOにおける調達の資金使途でも、具体的な調査開始を目論んでいる。現段階ではテーマを明言することはできないが、これから新しいテーマや、新しく生まれる社会課題に関し、メディア、ソリューション、プラットフォームのステップでビジネスが成立するものを模索している。

明石智義会長:「創発」をテーマに社会課題に取り組んでおり、どこにそういうニーズがあるのかというところで事業展開していきたい。ただ、今具体的に何かこれだというのを決め打ちしているわけではない。

片岡社長:既に活動しているメディア会社やプラットフォーム会社、メディアとソリューション、プラットフォームの3点セットはないが、どれか1つを手掛けているところと一緒に取り組み、我々がMSPモデルに昇華させていくなど、上場したからこそできる出資や提携、M&Aの可能性も広がってくると見ている。

―明石会長と、会長が代表を務めるBright Stoneが株式の8割以上を保有しているが、今後の株主構成は
明石会長:第三者割当増資と私の売り出しで20%程度下がって60%ぐらいになると思う。特に資本提携などは考えていないが、必要に応じて流動性の観点や、求められれば新たに売り出す検討も、会社の要請であれば考えたい。

―Bright Stoneはどういう事業をしているのか
資産管理会社的なもので、特に何か事業を行っているわけではない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]