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上場会見:セカンドサイトアナリティカ<5028>の髙山社長、金融から非金融領域へ

4日、セカンドサイトアナリティカが東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の1390円の約2.3倍となる3200円の買い気配で引けた。同社は、顧客の課題を抽出・設定したうえで、機械学習を活用して課題を解決するアナリティクスコンサルティング事業を行い、同事業で蓄積したデータや知見を汎用製品にしてAIプロダクトとして展開する。髙山博和社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

髙山社長は、特性や状況に応じてAIを使うことができるREDエンジンなど4つのプロダクト群についても詳細に説明した
髙山社長は、特性や状況に応じてAIを使うことができるREDエンジンなど4つのプロダクト群についても詳細に説明した

―初値が付かなかったが、受け止めは
マーケットが決めることなので当社が言うことではないが、初値が決まった後に関しても、その値を真摯に受け止めて役職員一同進めていこうと思っている。

―新市場第1号の上場ということで、感想は
特に新市場を狙っていたわけではなく、元々2018年頃に始めたらこの時期になったる。新市場はキリがよく、かつ当社しかいないというのは良かった。

―新市場になって最初の企業ということについてもう少し聞きたい。周囲の期待などはあるか
注目を浴びて名前を知られることは良かった。1号目ではあるので、恥ずかしくないように事業を運営していきたい。

―発行株式を5万株にとどめた理由や狙いは
もちろん上場によって資金(を調達すること)もあるが、上場したかったもう1つの理由は、社会的信用の向上や、採用の強化につながるのではないかと(いうもので)、市況の悪さから発行を抑えた。

―上場の狙いについて改めて聞きたい
資金の面だが、人材採用や、当社のデータ分析環境のサーバー費などの強化に使っていく。重要視しているのは資金だけでなく、上場によって得られる社会的信用や知名度に期待している部分があり、それによって採用の強化や顧客開拓がよりスムーズになるのではないかと期待している。

―コンサルティングからプロダクト開発につなげるタイプのAIを使う企業が増えており、個人投資家などにとってはなかなか分かりにくい部分があるので、分かりやすい代表的な利用例や定量的な効果を聞きたい
1つ目はキャリア系決済代行会社の事例だ。元々、アナリティクスコンサルティングで業界に参入しており、その会社が持っているデータで何ができていないかを洗い出して、課題を析出することから始まった。その過程で、この会社ではキャリア課金を扱っているが、その与信の部分と、決済代行の不正検知の部分を改善すると、すごい効果が見込めそうだというコンサルティングと、簡易検証を行い、その後に与信の部分と、AIプロダクト「REDエンジン」を導入して収益を上げていったことが分かりやすい例だ。

そのように事業を進めることで、フローの売り上げは年によって上下することがあるが、ストックの部分はだんだん積み上がっている。

―不正検知などは人手で処理するよりもスムーズになるのか
元々キャリア課金の与信枠付与は人でもできていなかった。ルールでざっくり決めていたので、それをAIにやらせることで、より精緻な与信枠を付与することができるようになった。不正検知も同様だ。これまではできていなかったので、不正が起きたら、そのまま不正として処理されていた部分を検知できるようになった。

―競合の認識はどうか
競合とぶつかることはあるが、金融の領域では、総合系のコンサルティングファームや、総研系といわれるシンクタンクの会社が多い。画像・映像などの解析でディープラーニングが使われる領域に関しては、よく名前が上がるのはAIベンチャーだ。

―競合と対決した時の強みは市場での立ち位置か、それともほかに強みがいくつかあるのか
コンサルティングファームに一概に言えるわけではないが、AIの機能を外部のベンダーに委託するケースもある。当社はそこを一気通貫で手掛けている。逆に、AIベンチャーとぶつかる時は、彼らが持っているプラットフォームに対して、顧客側のニーズを変えさせるような提案をすることがあるが、当社はカスタマイズの提案ができることが大きな強みとなっている。

―今後の成長戦略で、足元の動きを含めて特にチャンスがあると感じる分野を、具体的に教えてほしい
AIの適用範囲はとても広く、例えば、デジタルの領域ではテーブルデータ解析などがあり、画像・映像などリアルの世界の解析は本当に範囲が広くて、当社が行くわけではないが農業や鉄道といった領域は視野に入れて進めていきたい。

―農業とは
農業では、例えば、映像解析を適用しやすいので、AIを使えるのではないか。

―具体的にどのようなところで映像解析が使えるのか
これは当社がやるわけではないが、例えば、トマトを(収穫時に)掴むことは機械化が難しいが、そのような部分はディープラーニングを使うとけっこうできたりする。そのようなところに適用できる範囲は広いと思う。

―音声関連ではどのような関心があるのか
音声の解析にも取り組んでおり、音声を基に、特定の音が発生したタイミングの時間を掴んで時間を計るもの、シンプルに言えばタイムウォッチのような機能が細かくできるようなものにも、取り組み始めている。

―独自の人材採用や、京都大学と提携しての育成プログラムなどはあるのか
大きく3つ考えていて、現在も実施しているが、1つは、データサイエンティスト専問のエージェントを何社か使って採用している。もう1つ、当社は基本的に新卒を採用していないが、京都大学も含めインターンをこれから受け入れてみて、よほど優秀であれば採用して、新人教育体制を作っていこうと考えている。3つ目は、優秀な社員の友達は優秀な人が多く、いまも行っているが、社員紹介に対するインセンティブを大きくして採用しやすくしていこうと検討している。

―いまは提携パートナーに金融関係の会社が多いが、非金融領域に進むに当たり、非金融系の企業と提携していくのか
提携という形を組むかは分からないが、そのようなパートナーのようなものを増やしていきたい。

―例えば、M&Aで、関連分野の企業を取り込むのか
選択肢としてなくはない。

―売上高の中長期的な数値目標は
数値目標は、今までの伸びを維持しつつ、さらにプラスアルファで二次曲線的に伸びていくイメージだ。

―2022年3月期の予想営業利益率が高めだが、今後どのようにこの数字をとらえればよいか
まずストックの比率が上がると利益率が上がってくる。ただ、ストックを増やすためには一定のフローが入ってくるので、そのストックとフローの掛け合いで、この程度の比率をキープしていけると見ている。

―営業利益率2割前後を守るイメージか
ストックの比率を増やしていくので、もう少し強化できたら良いというぐらいで、明確なことは言えない。

―ROEの考え方は
保坂義仁取締役:ROEに関しては、それほど目標感を持っているわけではないが、およそ2割程度にできたらよいと思っている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]