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上場会見:クラシコ<442A>、高価格帯を支えるブランド力

5日、クラシコが東証グロース市場に上場した。公開価格の1390円を135.25%上回る3270円の初値を付け、3515円で引けた。大和新代表などが東証で上場会見を行った。

医療ユニフォームの機能性や品質、市場の見通しなどについて説明する大和代表

―初値が公開価格を上回りそうだが、受け止めは。また、株価形成について
大和代表:まだ、決まっていないが、非常に期待されていると認識している。さらに価値を上げていきたい。

相馬知明CFO:株価形成については、今後も安定的かつ永続的に伸ばしていけるだろう。特に海外の売上が、全体に占めるシェアが5%未満のため、ここは非常に大きい。大和が言ったように中期戦略を進めて、事業をしっかりと拡大していく。海外展開の加速により、海外比率が高まることで、その実現可能性などが株式市場に評価される。それにより、グローバルブランドとしての価値も、株式市場から得られると考えている。

―高い粗利率が出せている要因は
大和代表:直接販売は大きな要因の一つだ。また、価格帯が白衣で言うと5倍以上、スクラブだと2倍弱だが、それでも買いたいという顧客がいる。このブランド力が、高い粗利率の要因となっている。

―購入形態について、個人、または病院規模で購入されているのか
まず基本的な前提として、一定規模以上の病院では白衣などが支給される。ただ、それは安い製品。そのなかで医師の場合、好きなものを着用してよいことが多いため、支給品に不満足だったり、ほかのものが欲しい人は、自ら好みの製品を購入する。これらの人たちが顧客層の一部となる。看護師は、支給されたものを着用しなければならない割合が比較的高いが、それでも個人で購入する人も一定数いる。

また、当社の販売チャネルには、個人で購入ができるECサイトや店舗以外に法人向けのチャネルがある。法人向けでは、支給される白衣に対して、我々の付加価値の高い商品を提案する形で展開している。

―ワークマンやユニクロなどの会社もあるが、参入障壁やポジションの維持についてどう考えるか
我々は事業を17年行っている。この17年の間に、有名な大手アパレルメーカーも多数参入してきたが、現在は撤退か細々と続けている状況。これは、いくつかの参入障壁があるためで、1つ目の理由は素材開発。これをわざわざ数年かけてやるのは難易度が高く、普通のアパレル素材をそのまま転用することはできないため、諦めてしまう。

2つ目の理由は、価格帯の高い我々のブランド力だ。これを17年間かけて作ってきたことが大きい。我々の白衣は、1着あたり約3万円だが、ユニクロが同じものを作っても果たしてみんなは買うだろうか。高価格帯であるが、それでもファンがいるブランドを17年間構築してきたことが、大きな参入障壁となっている。

―特許などの観点から参入障壁はあるか
特許のようなものは基本的にない。素材開発したものは、開発した者だけが使えるというのが、この業界の商習慣であり、大手のアパレルでもよほどでない限りわざわざ取らない。また、我々もでき上がった素材を毎年アップデートしているため、過去のものより新しいものを作っていき、顧客に価値を提供している。

―MNインターファッションとの資本・業務提携の狙いと効果、現在の状況について
MNインターファッションは、有名なブランドを手掛けている企業のため、高い生産の知見やネットワークを有している。これらの強みは、我々の今後の成長に大きく寄与すると考えている。過去にも、複数の商社と連携してきたことで、生産キャパシティが急激に失われるような事態は発生していないが、実現できていないことが非常に多かった。例えば、工場の適切な配置や計画的な生産体制の構築、保管場所の選定、検品の回数などだ。

これらの課題に対して、同社のような企業と連携し、より良くすることで原価率も中期的に大きく下げられ、グローバル市場での成長にもつながる。現時点においても、当社はエントリーモデルを含めた生産を同社と共同で進めており、生産体制の強化が進行している。

―医療アパレルの市場をどう捉えているか。展開していくうえでの強みは
医療アパレルのグローバルマーケットは面白いが、日本のアパレルメーカーが海外展開しても、うまくいっていない企業がほとんどだ。その主な理由として、アパレル・ファッションは国や地域ごとにトレンドや嗜好性が異なる点が挙げられる。一方で、メディカルユニフォーム、メディカルアパレルに関しては、世界でどこを見ても同じものが着用されている。例えば、サウジアラビアでは私服としてターバンなどを着用しているが、スクラブや白衣は他国と同様のものを着ている。それにもかかわらず、グローバルにおいて強い医療アパレルブランドはなく、各国で老舗のローカル企業が市場を占めている。この点は、グローバル展開との親和性が高いと見ている。

そのなかで、世界共通で評価される要素は、ユニフォームである以上、機能性となる。機能性で何が大事かというと素材だ。スポーツウェアと同様に、医療アパレルでも素材の性能が重要で、日本は特にポリエステル素材などに強みを持つ土壌がある。我々においては、これまでその素材開発に注力してきた点が、海外の顧客から高く評価されると考えており、グローバルマーケットでの勝ち筋と認識している。

また、マーケット全体として、CAGR(年平均成長率)9.2%で、今後5年間で大きく成長する見通し。その背景には、まず医療人口の増加がある。日本では少子化のなかでも医療人材の不足が課題となっており、増員の方針が取られている。海外でも、医療インフラの整備が進み、医療人口が増えている。さらに、コロナの影響により、感染予防で1人当たりの保有枚数が増加しており、それによって市場が拡大している。

最後に、これまで「ペラペラでクタクタ」の消耗品だった医療ユニフォームに違和感を持つ動きが、日本だけでなく、海外でもようやく見られるようになってきた。2021年には、米国のスタートアップがおしゃれなスクラブでIPOを果たしており、こうした流れのなかで、医療アパレル市場は今後さらに拡大していく予想だ。

―国内シェアは、今後どの程度の拡大を見込んでいるか。また、戦略について
大きく伸ばしていける。当社の強いブランド力で、顧客のリピートを促進する流れのなか、国内マーケットでの市場シェアはわずか3.3%にすぎない。我々の商品は、10人中10人が着用するものではないが、10人中4人が着てもよいと感じられる製品であると認識しているため、大きく伸ばしていけると思う。

成長戦略としては、先ほど話したエントリーモデルで、これまで既存のスクラブを購入していた層にも広くアプローチできると見込んでいる。また、国内市場で、これまで医師や看護師を中心に展開してきたが、その周辺の隣接領域でもスクラブの着用が増えている。具体的には、整体、マッサージ、獣医、歯科、介護などの分野においてもスクラブが使用されるようになっている。こうした隣接領域に対して、様々なパートナーと連携しながら展開を進めることで、国内市場においても大きな成長が期待できる。

―市場改革の上場維持基準(時価総額100億円以上)に対して、3分の1程度の水準である約30億円の上場となったが、今後のシナリオについて
ITやAIは、波がありその後続かないこともあるが、メディカルユニフォームは、市場自体が大きくなってきており、安定もしている。かつ、我々は17年間伸ばし続けているため、これからも安定的に成長できる。それが100億円を超える大きな土台の1つ。また、先に話した国内の成長戦略、海外で言うと、昨年の11月に、既に重要な国と地域、東南アジア5ヵ国に進出して、投資しながら現地のパートナーと手を組み始めており、反響も良い。

また、今月から米国、カナダ、豪州といった大きなマーケットへの展開を始める予定。これらの市場はすでに顕在化していて、こうした地域で着実にシェアを獲得していくことで、100億円という水準は十分に達成可能と考えている。

―売上や利益の規模感について
相馬CFO:売上に関しては、現在35〜36億円内外であり、これについてはCAGRで20%前後の水準を安定的に維持しながら、まずはベースラインとして伸ばしていけると構想している。その根拠としては、当社がこれまでに販売チャネルを拡充してきた点が挙げられる。国内チャネルに加え、海外進出国の拡大によって、安定的な成長が見込まれる。

また、大和が話したように、今月より開始する米国、カナダ、豪州といった市場規模が大きく、医療従事者の数も多い、かつ年収帯も高い地域は、当社の商品とフィットする。さらに来期には、アジア地域への展開も予定しており、継続的な成長が可能だ。海外売上比率については、現在5%弱だが、中期的には20%は超えていきたい。

営業利益率については、中期的に20%以上を達成できると見込んでいる。理由は、繁忙期である3月・4月の単月ベースで、20〜25%の営業利益率を実現しているため。これは、国内の場合、3月・4月は医療従事者となる学生や異動による需要が集中するためで、そのタイミングでオペレーティング・レバレッジが効いて高い利益率を確保できている。

我々は、この1〜2年で利益体質の構築を進めており、売上を伸ばすことで利益率も改善していけると考えている。また、MNインターファッションとの提携により、原価率の改善も進めており、利益率の向上は中期的に目指せると経営として認識している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 紫乃]

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