3月28日、トヨコーが東証グロースに上場し、豊澤一晃社長が東京証券取引所で記者会見を行った。初値は公開価格の700円を19.3%上回る871円を付け、751円で引けた。補強で工場などのスレート屋根に特殊な3層の樹脂を吹き付ける施工を行う「SOSEI事業」と、橋や鉄塔などのサビを光で除去する「CoolLaser(クーレーザー)」を開発し、製造・販売する「CoolLaser事業」を手掛けている。

―公開価格の19%程度を上回って初値をつけた、受け止めは
良いスタートが切れたのではないかと感じている。
鈴木紀行COO:インフラメンテナンスに対する需要が、日本のみならず海外で非常に高まっている。直近でも、日本でインフラメンテナンスというキーワードがこの数ヵ月で様々なところでニュースになっているところで期待を持たれている結果と受け止めている。
―本社が静岡県富士市にあるメリットは
豊澤社長:製造業が多い地方なので、ものづくりという点では非常にプラスになる。それから事業を2つ持っており、例えば、鉄道会社では「SOSEI事業」のターゲットであるスレート屋根がある。また、鉄道そのものをレーザーで処理する土木と、建築の両輪で攻めることができ、シナジー効果が期待されている。そういったものが地方に多くあるため、展開しやすいというメリットがある。
―塗装・防水工事で創業しているが、「CoolLaser」を開発し、製造・販売するようになった背景やきっかけは
創業の地が塗装の聖地と呼ばれており、大昔に東京タワーの建設時に塗装したのが、私が生まれた小さな漁師町で、静岡県の由比という桜えびが取れる地域だ。そういった背景から家業に塗装業が残った。私が2代目として背景やルーツを遡り、その分野の課題である社会インフラの老朽化は、私がトヨコーに入ったときから叫ばれていた。現場目線での課題解決のために、同じ地元の浜松が光学の町、光の集積地と言われているので、新しい技術でやろうと着想した。
―今期は黒字着地予定だが、来期以降も安定した黒字を続けるのか。それとも黒字にこだわらず、拡大するために設備投資に使っていくのか
黒字に向けて展開を図っていく。過去の大きな設備投資は、高出力サビ取りレーザー施工装置「CoolLaserG19-6000シリーズ」の開発のために使った。これからは応用開発になるので、装置の販売のほうにどんどん製造体制を膨らませていこうと考えている。
―今期の売上高の比率は、「CoolLaser」がまだ上市したばかりで、これからだと思うが、現状の約2割をどれぐらいまで伸ばしていくのか
現在は2割が「CoolLaser」で、8割が「SOSEI」だが、社会インフラの市場は非常に大きく、2030年には逆転して、85%が「CoolLaser」で、15%が「SOSEI」と考えている。
白井元CFO:今期、来期、再来期などの時間軸のどこかで構成比が逆転すると考えている。
―長期計画で「CoolLaser」が除染分野に参入するとのことだが、除染はどういう分野か
豊澤社長:これは原子力の分野だ。汚染された部分をレーザーによって除去し、除去したものを回収する。
白井CFO:低レベルの放射性物質が付いた建屋の解体で、ブラストなどで除染すると、だいたい平米あたり1kgの塗膜などを除去するときに、40kgぐらいの砂などを使い、それだけ放射性のゴミが出てしまう。レーザーであれば対象物だけを集塵回収するので、危険物質などを安全安価に除去ができる。そういったニーズがある。過去に中部電力と約4年間、除染分野で共同研究をしており、同社と共同特許を持っている。原子力発電所の廃炉など、そういったニーズのところで使われていく。
鈴木COO:併せて、PCB(ポリ塩化ビフェニル)や今日(3月28日)のニュースでもあったように、アスベストなどの有害物質が世の中にはまだまだ存在しているので、綺麗に集塵して、作業員にも安全に提供できるのが「CoolLaser」の1つのメリットだ。今まではサビや塩分除去、塗料を剥がすといったことに注力していたが、このような領域にも展開が可能になってきたので、その辺も期待に応えられるだろう。
―浜松市内の工場について、稼働時期と生産能力はどのくらいになるか
豊澤社長:稼働時期はまだ明確にしていないが、秋口を目標としている。既に土地と建物があり、設備の導入を進めているので、そのぐらいになる。生産体制としては、中期計画で5年間分を示した部分で、月産最大10台が可能なので、その生産能力で当面やっていきたい。
―投資金額は、この目論見書のなかの3億円か
白井CFO:土地と建物の居抜きで、完成物件として3億4000万円がすでにキャッシュアウトで投資済みだ。公募で集める資金の一部の8000万円を資金使途として、なかの生産設備を入れるところに少し使っていく。
―合計4億円程度か
そうだ。4億円少しだ。
―海外展開の可能性は
鈴木COO:現在、各国からニーズが非常に寄せられている。「CoolLaser」は、環境に優しい新たなメンテナンス手法だ。日本よりも海外のほうが、こういった環境配慮型の工法に対して投資しているので、提供できる体制を販売パートナーと構築している。早期に始動したいため、今動いている。
―海外展開に関して、具体的にいつ頃に輸出開始か
海外展開は中期計画上、ホームページでも発表している数字のなかに一部組み込ませている。海外に輸出するとなると、様々な法規制への対応なども整える必要があるので、2、3年後に向けて動いている。本年度は国内市場を開拓する。
―3年後にまず輸出するのは米国などか
そうだ。海外の展示会に関して、防衛装備品の一環のメンテナンス商材として、「CoolLaser」を防衛装備庁が推奨してくれており、昨年度も4ヵ国で同庁の展示会に出展している。インフラメンテナンスの領域は、様々なディフェンスエリアを含めた形での展開が考えられるので、その辺も含めた対応をする。
―M&Aについてはどうか
白井CFO:具体的に検討している案件はまだ特にないが、成長戦略の1つとして、主に「CoolLaser」のものづくりで、技術で協業できるような会社などを検討していく余地はある。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
よく読まれている記事
2021年12月23日 上場会見:リニューアブル・ジャパン<9522>の眞邉社長、3領域を10年で1ギガに
2024年7月23日 日鉄興和不動産債:上限に寄せて増額
2025年3月31日 神戸製鋼が社債を準備
2022年12月15日 上場会見:スカイマーク<9204>の洞社長、磨き上げたサービス
2024年10月23日 上場会見:Schoo<264A>の森CEOと中西CFO、“第一想起”を獲る