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上場会見:トライアルホールディングス<141A>の亀田社長、デジタルとリアルの体験価値

トライアルホールディングスが21日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1700円を30.29%上回る2215円を付け、2200円で引けた。ディスカウントストア運営と、そこで蓄積したデータを分析基盤「MD-Link」で解析し、メーカーやベンダーと共有。セルフレジ機能付きショッピングカート「Skip Cart」などで利便性や効率性を高める。昨年4月に上場を中止していた。亀田晃一社長と永田洋幸取締役が東京証券取引所で上場会見を行った。

ドミナント出店やメーカー・流通事業者とのデータ共有、リテールDXによる店舗オペレーションやサプライチェーンの効率化などで成長を加速させると話す亀田社長

―初値が公開価格を上回った
マーケットの評価なので、グループを発展させてきちんと評価してもらえる会社になっていきたい。

―1年前に申請を取り下げ、このタイミングで上場した理由は
前回は、シリコンバレーバンク(の破綻)やクレディ・スイス(の買収)などでいろいろな問題があったので、金融環境を見定めて延ばしただけだった。大きな意味はない。

―1年間延期した効果は
マーケットでの認知度については、2回アピールするタイミングがあった。この1年間いろいろな準備をして、マーケットはどういうものなのか社内でいろいろ議論できた。社内体制のコンプライアンスやガバナンスという意味では、レベルを1段上げることができたと思っている。

―公募価格について、仮条件の段階で昨年よりも低く抑えたが、投資家の反応の変化は
投資家とはコミュニケーションを長く取ってきたので、信頼関係もできていて、比較的好調な滑り出しができたのではないか。

―利益が出ていて借り入れで資金調達できるのになぜ上場するのか
上場にはいろいろな意味がある。社会的認知度や採用の問題もあり、総合的に見た。もう1つは、これからは環境の変化が激しいので、積極的な投資のチャンスがある。そこに柔軟に対応していくためには、銀行からの調達だけでは限界があるのではないか。

マーケットから調達ができる状況を準備しておけばいろいろな戦略を打っていけるので、このタイミングで上場した。

―企業規模からするとプライム上場の選択肢もあっただろうが、なぜグロースに上場したのか
トライアルグループは、まさしく”トライアル”カンパニーだ。会社自身も成長企業だと思っているし、マーケットでもそう見てもらいたい。ガバナンスについては体制が十分に整っているので、市場はそのタイミングで判断していけば良い。

―人材採用などの面ではプライムのほうがより良い面もあるのではないか
それはイメージで、人の判断によるだろう。

―リテールDXについて、AIカメラは、いわゆるエッジAIを使っているのか。
永田幸洋取締役:我々のAIカメラに関してはエッジで処理している。

―そのうえで目指すべき1to1マーケティングの理想型と現状を比較すると
まず、目指すべきAIカメラの展開は多岐にわたる。AIカメラを通じてどのようなことができるのか試行錯誤した。突き詰めた結果の1つは、欠品を管理できる環境を整えることだ。

分かりやすいのは、商品にQRコードを付けたり、色で(識別させ)たりして、棚からなくなれば欠品を従業員に知らせて補充する。小売業としては、商品がなくなるということは顧客に対する裏切りで、顧客が小売業(の店舗)に行って商品がなかったら、「何だ、ここは」となってしまう。それをカメラで補う店舗を作ることが重要であるとして取り組んでいる。

一方で、カメラを使いながら総菜のロス(廃棄)をなくす。「パーソナル・ダイナミックプライシング」と呼んでいるが、ロスが近くなればダイナミックプライシングで値段を下げて顧客に早く提供する。当社としてもロスをなくす、顧客にとっても安い価格帯になることで買い取ってもらえる。将来的にロスをなくすことを実現できると考えている。

1to1マーケティングは、どちらかといえばAIカメラを使うというよりも、IDーPOSデータという顧客の購買データに基づいて、顧客が今後必要とする商品について、カートのタブレット端末や(顧客が持つスマホの)アプリにクーポンを発行する。また、店舗内にモニターを置くサイネージで、購入する顧客が近付けば、「買ってください」と促す仕組みを設けることで、1to1を実現できる環境を整えていきたい。

―データ処理基板である「e3-SMART」を外販する予定は
当社の分析ツールなので、あくまでも我々のものだ。

―MD-LINKの利用企業数は
現在は270~280社ほどと契約している。

―MD-LINKと物流との接点は
卸売業者もMD-LINKを使っている。物流業者や卸売業者に使ってもらえるように、UI/UXを向上していくため、今後も試行錯誤しながら進めたい。

―温泉施設を運営しているが、リテールDXとの関連はあるのか
可能性があるのはいくつかある。トライアルグループの価値を顧客に提供することだ。まず、アプリを通じて、トライアルリゾート施設を顧客向けに展開している。リゾートやゴルフでの展開は、カメラを使い、無人で決済ができる仕組みも将来的には試行錯誤して進めていきたい。

亀田社長:リゾートについて補足すると、トライアルグループが運営しているのはリアル店舗だ。リアル店舗の価値はデジタルだけではなく、顧客の体験価値を非常に重視しており、その延長線上に食と健康の話がある。健康の部分で温泉施設やゴルフ場もグループに入ってもらっており、連携していける。

―スーパーセンターを中心とする新規出店について、具体的に何年に何店舗という目標はあるのか
年率1割ぐらいの成長を今までも継続しており、(その継続を)考えている。そこから先はいろいろと環境を見ながら判断していくことになる。

―年率1割の成長は売上高のことか
売上高のことだ。

―インフレが定着したが、戦略が変わったのか
仕入れも販売価格も同じなので、適切に対応すれば大きな変更にはならないと見ている。もう1つ言えるのは、インフレの最中に出店しようとしているので、建築費が上昇することはある。トライアルグループは設計事務所と建築会社を持っている。今後出店を加速するうえでは、競合他社と比べると強みになってくるだろう。

―調達資金は主に新規出店に振り向けるのか
新規出店もあり、インフラ投資もある。さらに言えばいろいろなビジネスチャンスはまだある。
永田取締役:我々IT側への投資もあるので、そちらのほうでの運用を検討している。

―株主について。ベンチャーキャピタルかどうかというのはあるがSBIVenturesTwoというのはどのような会社なのか。SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長が出資しているということは期待されているのか
株主の会社や個人に関して、この場でのコメントは差し控えたい。後程広報担当者に確認したうえで返事をさせてほしい。

―株主還元について
亀田社長:成長投資のタイミングがたくさんあると見ているので、投資家とは継続・安定的にコミュニケーションを取りながら、配当も考えている。着実に配当還元をしていける形に持っていきたい。
永田取締役:今回は15円としたので、今後もそれを目安としたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]