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上場会見:property technologies<5527>の濱中CEO、不動産BtoCに打って出る

13日、property technologiesが東証グロースに上場した。初値は公開価格の2950円を34.92%上回る3980円を付け、3670円で引けた。全国の不動産仲介会社ネットワークを活用し、実際の不動産取引に基づく情報とAIを組み合わせて取り引きを効率化。リノベーション済みの中古区分所有マンションを販売する。グループ会社は山口県と秋田県を中心に戸建住宅を扱う。一般消費者向けの住宅取引プラットフォームの「KAITRY(カイトリー)」も展開している。濱中雄大CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

査定実績データの蓄積とAIによる査定で、買取価格を仲介業者に30分程度で回答できると話す濱中CEO
査定実績データの蓄積とAIによる査定で、買取価格を仲介業者に30分程度で回答できると話す濱中CEO

―初値の受け止めは
良い評価を得たと思っている。バリュエーション的にどうなのかという議論はだいぶあったが、初日としての評価は、我々にとってはありがたい。

岩尾英志COO:個人的には、株価というよりは、今日の出来高が400万株以上と、初日で4回転ぐらいした。注目度が高く身が引き締まる思いでいる。

―想定外の反応か
ここまで株数が増えるとは思っていなかった。午前に1回転、午後に1回転の(合計)2回転ぐらいないと嫌だと思っていたが4回転した。12月にこれだけ上場が控えているなかで、株数が増えたことはありがたい。

―改めて上場の狙いを
濱中CEO:上場のタイミングとしては、先ほど説明した買取AIのサイトが2021年にオープンした。それに加えて主要都市への出店は一通りはできた。「KAITRY」のサイトを使って全国の顧客を集客するので、その現場ごとにまず営業担当者を配置していかなければならない。その配置が一定程度終わったところで、タイミングとして良かろうというのが大きな理由だ。

また、我々の業界ではBtoCビジネスに打って出る会社がない。ここにチャレンジしていくに当たって、BtoCの顧客ということで、直接買取を行っていく意味では、信用力は必要だろうと上場を目指した。

―今後、戸建建築に限らず、リノベーションも含めて事業拡大にM&Aを検討しているのかこれは縁だとは思うが、そういう縁があれば(検討する)。また、施工も全国的に展開が大きくなってきていて、今期も3ヵ店ほど増やしていくことになると、2000件ぐらいの供給量になってくる。それだけの工事を行っているので、出会いがあればそのような建築施工の内製化も視野に入れて検討に入っている。

―今は、外部委託も多いということか
そうだ。

岩尾COO:工事については、中古のリフォームを含めて、ほぼ外に出しているので、その利益を内部に取り込むために、M&Aは大きな選択肢の1つだ。

―足元のインフレの、市場と業績への影響をどう見るか
濱中CEO:今期の仕入れが1400件強、子会社が約400棟の新築戸建てを受注している。合わせると約2000件。ユニットバスでも商社から直接買い付けをしているが、ボリュームがある程度まとまったので、共同購買することによって部材関係の確保、コストダウンをかなり図ってきた。

当然、ウッドショックなどもあった。経費が上がってきたものが、他の部材単価を下げることによってある程度賄えた。このインフレの影響もさほど受けず、部材関係は整えられた。

―今後もインフレは続きそうだが、今後もそれで吸収できそうか
我々の扱う商品は、一次取得に特化している。30歳代後半から40歳代前半の人たちが買える商品なので、東京では約3500万円まで、地方では2000万円前後の販売価格となっている。そこに合わせた商材を使う。富裕層向けの商材を扱っているわけではないので、コストはコントロールできると考えている。また、今期はもう少しボリュームも上がってくることを考えると、十分賄えるだろうと見ている。

岩尾COO:我々がその価格帯を狙っているということは、アパートやマンションに今払っている賃料よりも安い金額で毎月の住宅ローンが払える価格帯に取り組んでいる。今後インフレが続いて価格が上がっていくとしても、同等レベルで落ち着くだろうという認識であり、高額帯を扱っているボラティリティの高い商品ではない。需要はそれほど落ちないのではないかと見立てている。

―中古マンションに比べて新築戸建の引き渡し数の伸びが鈍化しているように見えるが、理由は
サンコーホーム、ファーストホームともに、地元で長年トップビルダーだ。サンコーホームに至っては、秋田県の、軽量鉄骨も含めた全ての着工件数でナンバーワン。ファーストホームはいわゆる木造でナンバーワンを10年以上続けている会社だ。そういう面では、地元では非常に人気や認知度が高い会社になっている。

これを成し遂げているのは、サンコーホームの仕事だけをやる大工の数を決めているからだ。サンコーホームはこの大工しか使わない、ファーストホームはこの大工しか使わない、「その代わり年間きちっとあなたたちに仕事を与えます」(と約束する)。これが、いわゆるアフターフォローも品質も含めて、顧客からのに非常に高い評価となり、両社とも非常に高い紹介比率になっている。(既存の職人が仕事をたくさん抱えていて手が回らないため)新しいぱっと出の大工に1棟だけ任せることは行っていない。そのため、年間のおよその受注数が、サンコーホームであれば250件前後、ファーストホームであれば200件前後というイメージで理解してもらいたい。

―指標となる金額が5秒で算出されるAI査定で、新人の営業担当者も成果を出せるとのことだが、これまでAIがなかった時には、営業担当者がそれぞれ能力を自分で高めてきたと思う。上長に求められる能力、不動産業界のなかでの力の付け方は変わってくるのか
濱中CEO:いろいろな物件も、最終的にはコンディションを見る作業をするので、値段をつけて(問い合わせてきた仲介業者に)返答する。

AIの査定の仕組みは、全てフルリノベーションをする前提で、AIが計算式を出している。我々は今、400~450万円ぐらいをリノベーション費用としてかけている。これは全て新品にする前提になっている。最終的には、顧客の自宅に行って物件を見せてもらう。

我々の商品は、築20~30年のものが多いので、その程度経過していると、「昨年、ユニットバスだけ新しいものに取り替えていた」とか「キッチンはもう2年前に新しくなっている」というリフォーム履歴がある。その時は加点をする作業がある。上長が一緒に行って、最終的に説明する作業はしている。

―営業人員がこれから育つうえで、物件に対する目利きの力は上長から部下に受け継がれるものなのか
サンコーホームやファーストホームをM&Aした狙いはもう1つあり、技術者が欲しかった。一級建築士を含めた管理技士が2社に60人いた。その技術力をグループ内に入れることによって、目利き力は専門家に任せる。営業部隊は営業としてあくまでも情報収集に徹してやっていくという分業制が、他社に比べて大きく仕入れが伸ばせているということだ。

―同業はなかなかそのような発想にはなりにくいのか
中古戸建の分野にもこれから入っていく。前期に40棟ほどの成果を上げている。今、カチタスという会社の独壇場だが、我々は支店配備が既に整っているので、いつでもゴーサインをかければやれる。そのためにはそのような目利きができる専門家が欲しかった。これがグループ内に入ってきたので、中古の戸建分野も伸ばしていきたい。

―在庫の回転率はどのような状態なのか
松岡耕平CFO:契約をして決済になって我々の物件になって、リノベーションをして、購入者が見つかって、契約をして引き渡す。その決済の部分、我々の物件になって新たな買い手に渡るまでの間が、およそ200~210日の間が直近の状況となっている。

―DX化でかなり短縮されたのか
DXがあって、1件1件を管理でき、そもそもどれぐらいかかっているかしっかりと管理して、工事自体の期間も販売期間も短くする。販売先の顧客に関しても、データ登録で分かっているので、その地域に強い仲介業者に働きかけて、なるべく早く売ってもらうなど工夫をして短くしているところだ。

―全ての事業における具体的な数値目標を教えてほしい
どこまでの数字を出すか、新しいものに取り組んでいるところで、上場することで事業を拡大していける。オーガニックで拡大していける部分は当然あるので、そこは、足元でも見据えて目標を貼っている。

今後育っていく部分や、iBuyer(の発想に基づくKAITRY)がどう育ってくるかが非常に大きい。今、この数字をやりますと言ったところで、売り上げと利益をどういう形で取り組んでいくのかも非常に大切だ。今ここで、具体的な数字がこのようなところへの着地を目指していることを出すのは時期尚早と思う。増やしてきた売り上げや利益の伸びてきた部分を何とか頑張ってやっていきたい。中期の数字を具体的にここで出すのは控えたい。

―売上高・営業利益も含めて、今後適時に発表するのか
まず、今期はどうか出していき、今期は特に上場してからの動きのようことが見えてきて、どこかのタイミングで3ヵ年計画を出していくのか、出していくことが投資家にとって情報として良いのかよく見据えて、検討してしっかり対応していきたい。

―中期経営計画は改めて作るのか
中期をどうしていくか、足元の考え方はあるが、そこを表に出して、こういう数字までいくのかという部分については、もう少し見極めたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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