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上場会見:スカイマーク<9204>の洞社長、磨き上げたサービス

14日、スカイマークが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1170円を8.72%上回る1272円を付け、1277円で引けた。MCC(Middle Cost Carrier)として12空港・23路線、1日当たり150便をボーイング737-800型機で運行する。東証マザーズへ2000年5月に新規上場したが、民事再生法の適用を申請し2015年2月に上場を廃止。インテグラルがスポンサーに就き再建した。洞駿社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

洞社長は、自社サービスで注力している点や再建までの道のり、今後の展望について話した
洞社長は、自社サービスで注力している点や再建までの道のり、今後の展望について話した

―初値が公開価格を上回ったが
まだコロナ禍が続いている最中であるにも関わらず、また市場環境が決して良いわけではないなかで、非常に良いスタートを切れたのではないか。正直ほっとしている。これからも、投資家・株主の期待を裏切らないように、さらに企業価値を向上して資本市場にしっかり向き合って社員一同頑張っていきたい。

―黒字転換や企業価値の向上を経てスタンダードやプライム上場を目指す手段もあったかもしれないが、このタイミングでグロースに上場すると決めた理由は
グロース市場は成長企業もたくさん上場している。また、要件的にもいろいろあり、クリアする意味からもまずはグロース市場からスタートしていく。企業価値をしっかり高めて力を付けていくことが当面の目標と思っている。

―スタンダードやプライムに上場する予定や計画は
企業価値を高めて株主や投資家の期待に応えていくことに専念したい。状況がいろいろ変わってくるだろうから、変化に応じて、さらに上のクラスを目指すかどうか、その時点で考えていきたい。基本的な願望としては上のほうに行きたいが、それがいつか言う時期ではない。

―上場の際に、継続企業の前提に関する重要事象が付いている。これが記載されたままの新規上場は極めて異例だと思っている。記載されたまま上場に至るまで、社内でどのような議論があったのか
西岡成浩専務:我々は、過去2年半~3年にわたり、新型コロナウイルス感染症の影響を極めて大きく受けている。そういったなかで、財務とキャッシュフローの状況などを踏まえて、この記載がされている。

ただ、足元で、コロナ禍からの非常に力強い脱却が見えており、外形的には、こういった記載が第2四半期の決算時には残るが、引受証券会社、監査法人などとも密に議論をしながら、上場することに何ら問題ないという判断し、この日を迎えることができた。

―日本航空が2年半ほどで再上場したが、スカイマークは8年弱かかった。自己評価と総括を
洞社長:民事再生の卒業が上場のタイミングと考えるかは別として、上場のタイミングからすると、コロナ禍前の春に上場申請をしていた。私が社長になってすぐにコロナ禍となり、会社が潰れそうな状況になった。上場どころではなかった。

コロナ禍の3年間を除けば、4年少しかかった。民事再生の終了した翌年度には、もう黒字を計上している。何をやったかというと、経営陣の刷新でガバナンスを立て直した。いろいろな事業分野でガバナンスを生かして規律を持って無駄なことはやらない。赤字が出るようなこともしない。赤字路線を切り、複数機材を単一機材に統一するなどして、効果としては1年で黒字を計上した。

社内的に変わったのはガバナンス、社員の意識改革だった。「航空会社は何を心がけるべきか」、「利用者へのサービスはどうあるべきか」、「時間をきちっと守る」。極端なことを言うと以前は、CAは保安要員でサービス要員ではないという考えで、お年寄りが手荷物を頭上の荷物入れに入れることも手伝わなかった。そうしたマインドが今と180度違っていた。定時性という概念があったかどうかもよくわからない。利用者とどう向き合うべきなのか、意識改革が見事に成功して定時運航率ナンバーワンになった。

当社は小さな会社だから、あらゆる職種の人、機長からCA、地上から旅客から完璧なまでのマニュアル化が体に染み付いていないと定時運行はできない。一種のブランド化をしている。

民事再生からの立ち直りは1年ぐらいでできたのではないか。完璧にピカピカになったわけではなく、不完全なところはまだいっぱい残っていると思うが、基本的なところは元に戻った。

スカイマークの強みは、羽田路線に集中してスロットもたくさん持ってる。そういうところでうまく経営すれば、絶対うまくいくはず。基本的なところをきちんとやればちゃんとできる。

西岡専務:非上場時代の株主から支援を受け、新生スカイマークが始まった。当時は5年以内の上場を目標に掲げていた。2020年の2~3月以降コロナ禍になり、2~3年弱、足踏みがあった。日航は速やかに上場したが、我々は定時出発率・顧客満足が最下位集団だった。しっかりと品質を磨き上げて、お値打ち価格で提供する会社になろうということを新しい会社になって最初に掲げ、社員一丸となってやってきた。

改善すべきところはまだあるが出来上がりつつある。拙速に破綻後1年で上場するよりは、新しい経営陣、新しい株主の下で作り上げたいという絵を描いた。しっかりとメドをつけたうえで、新しいスタート地点に立てたのではないか。今後もスカイマークが今のビジネスモデルや良さを磨き上げていくことで、日本の航空業界、日本の空に長きにわたって良い影響を与えていけるのではないか。

―再上場を果たせたことで、会社をどのように成長させていきたいのか改めて聞きたい
洞社長:株主や投資家、利用者に対する我々の社会的な、いろいろな意味での責任が、これまで以上に重く大きなものになる。新規参入した時と変わらず、より多くの利用客に、高い運航品質とシンプルだが心のこもったサービスを身近な価格で提供するビジネスモデルが我々の目指すところだ。このサービスをできるだけ日本の多くの利用者に利用してもらいたい。これが我々の利用者に対する約束なので、その責任をしっかり果たしていきたい。

日本の航空市場が、コロナ禍の環境もあって非常に厳しい競争環境にあり系列化がどんどん進んでいるなかで、当社の存在意義は極めて大きい。サービスを徹底して磨き上げて、より多くの利用者に提供し、利用してもらうことが当社の存在意義であり、そして国民生活の向上に資することだと思う。

SDGsの目標の11番目に、あらゆる弱者を含めて公共交通機関を安価な値段で提供していくというものがある。航空業界でこれを目指して頑張っているのは、まさに当社だと思う。この事業を追求することによってSDGsの実現に貢献したい。

―今後、航空業界の競争がより激しくなるなかで、社長の思い描くビジョンや意気込みのようなものを聞きたい。
我々の利用者は戻りつつあると言ったが、航空業界全体としては、多分そこまで戻ってない。そういう環境もあって、航空業界の競争は、依然厳しいものがある。それを踏まえて、勝ち抜くためには、高い運航品質とホスピタリティ、サービスに磨きをかけることによって、利用者の心をしっかりつかむことに努力する。

当社の飛行機に乗って、空港の旅客カウンターやCAのもてなし、機長のアナウンス、窓の外に目を転じれば、ランプの従業員がそれぞれ思い思いに自分自身で考えた利用者に対する歓迎の気持ちを示していることに気付くかもしれない。手前味噌になり、ほかの航空会社でもそのようなことがあるかもしれないが、その違いがはっきりしてくる。1人ひとりの創意工夫はマニュアル化されたものではなく気持ちの問題だが、社員も自覚している。それが当社の高いロードファクター(有償座席利用率)を保っている源だと思う。

―第三極として残っていくなかで、今までANAホールディングスが株主、日本航空とも手荷物の受託で提携があった。いわゆる大手との関係を今後どうしていきたいのか
ANAHDは我々の重要な株主だ。これまでも、再生に当たって大変世話になってきた。整備や運航、サービスの在り方について、いろいろな指導を受けて、その指導と協力があってこそ今日のスカイマークがあると思うし非常に感謝している。

ANAHDも日航もそうだが、整備部品の融通などお互いにwin-winの関係で、協働する分野がかなりある。そういう面では、貨物の受け渡しを日航と取り組んでいるのも通常の延長だが、ANAHDや日航を問わず、互いに利益を得ることがあるのであれば、共有して協力していきたい。

ただ、基本的には、航空運送の営業の部分は、あくまでANAHDは競争相手なので、そこはしっかりガチンコで競争する。協力できる領域で、それが商売の根幹に響かないところであれば大いに協力するのが基本姿勢だ。これからも良い関係を続けたい。

―競争に打ち勝つ他社との差別化戦略は。日航とANAHDの2大巨頭にどう対抗するのか。また、LCCも両社と連携しているが、どう対峙するのか
洞社長:コロナ前の当社のロードファクターは全体で80%を超えている。幹線に至っては90%を超えていて、パンパンだった。

2025年に6機のリース機が入ってくるが、機材数は2025年まで増えない。現有の29機をいかに効率的にパンパンになって飛ばすかがそれまでの成長戦略だ。2019年と20年に飛行機を2機、下地島線も含めて羽田の枠を2つ手に入れたが、コロナ禍の3年間、利用者が引いた。普段ならその2機のうち1機で平均33億円ほどを稼いでいた。2機がフルに活動すれば収入が70億円弱増える。現有の29機をパンパンにして飛ばすと同時に、それだけ高いロードファクターになれば、イールドマネージメント、ダイナミック運賃などで機動的に操作できる。

利用者が少ないなかで、それをやろうとしても、利用者やほかのエアラインがついてこない。これから他社も含めて、日本の国内需要がぐっと伸びる。また、インバウンドも増えて、全体の利用者がコロナ禍前に戻ってくれば、イールドマネジメントも、これまでと同様に、効果を発揮することができ、必要な単価の上昇と利益の拡大も機能してくる。

2025年度以降は機材数を増やす。26年度以降、MAX-10が入ってくれば、さらにキャパシティを増やせる。ロードファクターを高く維持しつつ、収入を適正化あるいは拡大していくというのが、今後の成長ロードマップだ。

利用者にしっかり乗ってもらうためには、繰り返しになるが、当社のサービス品質、運航品質にいささかの翳りがあってはいけない。

利用者は、皆自腹で乗っている。当社のビジネス客は、幹線では、もう少し比重が高いと思うが、トータルで2割ぐらいしかいない。ほとんどの利用者は、自分の財布から介護のために毎月田舎に帰る。あるいは単身赴任者が福岡から東京の家族の下へ帰る。

当社の飛行機を利用した利用者は必ずリピーターになってくる。そういう意味で、自分たちのサービスモデルには、慢心するつもりではないが、絶対の自信があり、他社にはない差別化ができている。そこをしっかり磨けば、利用者は付いてきてくれると思っている。

西岡専務:お気に入りの定食屋はあるだろうか。ホスピタリティが溢れていて、店員さんも大変良い感じで味は絶品。かつ、値段は懐に優しい。我々のエアラインはそういう会社だと思う。例えば服でいうと高級ブランドではなくてお気に入りの普段着、コスパが良くて、ついつい着てしまう。

航空業界は競争が激しいが、大手のフルサービスキャリアは、お気に入りの定食にはならないと思う。安かろう悪かろうと言うと怒られるかもしれないが、日本であのビジネスモデルが根付いていないLCCも、お気に入りの定食にはならない。

我々だけがこういったビジネスモデル、非常にユニークなサービスを提供しながら、コロナ前については、しっかりとロードファクターを高めながら、多くの利用者に支持された。大変ありがたいことだと思うが、そのような状況だ。コロナ禍を乗り越えて、引き続きこのビジネスモデルを磨き上げることで、より多くに利用してもらい、大手やLCCにない強い競争力があると信じている。

そういったなかで、例えば、羽田や福岡、神戸、2025年に枠が増えることもあるし、機材を入れ替えてしっかりと地に足のついた形で事業を1歩1歩拡大していく。

―旅行需要が盛り上がるなか、全国旅行支援の再開は追い風になるのではないか
洞社長:全国旅行支援が始まり、第3四半期、9月の終わりから11月にかけて、当社に関して言うと、コロナ禍前の2016年の利用者の数をほとんど100%回復した。1月の予約状況を見ても、第8波の最中ではあるが、今のところ順調に、これまで見られたような波の到来によって大きく予約がキャンセルになったという大幅な落ち込みは、今のところ全く見られない。ほとんど平年並の数字で推移している気配だ。

全国旅行支援の影響が、どれぐらいの割合で出てくるかは統計的に知ることができないが、その影響は大いにあることは定性的に言うことはできる。1月以降は旅行支援の内容がまだ具体化されていないが、ある程度明らかになれば、買い控えをしている人もいるかもしれないが、変化してくる可能性がある。

一方で、第8波はそれとして罹患者の増加との見合いで、正月休み以降、どうなるか楽観せずに慎重に見ていく。今年度の財務の収支見込みを発表しているが、概ね見通しに沿って今のところは順調に推移している。

―国内路線の今後の戦略は。発着枠や機体が増えるが、新規なのか、これまで就航していたところを戻すのかも含めて聞きたい
洞社長:結論を先に言うと、具体的な計画はまだできていない。羽田の枠は取れるのか、いくつ取れるのかという状態で、神戸は拡大することがはっきりしている。福岡はどれくらい確保できるかはっきりしない状況なので、具体的な路線や既存路線の増便で対処するのかなどは決まっていない。

ただ、羽田はどの路線を取っても極めて有望で、福岡も同じように極めて貴重な路線で競争が非常に厳しい。神戸は当社が60%ほどを占めており、ANAHD・日航はむしろ伊丹を基地としている。いずれにせよロードファクターを、どの程度の利用者を期待できるかしっかり見極めながら、選定を間違わないように検討したい。

西岡専務:当社は、今は製造されていないボーイング737-800を29機使って事業を運営している。後継機が導入される2025年までは機材数が増えない。若干の便数の変動はあろうかと思うが、国内路線のネットワークを増やしていくことは、25年までは基本的に想定していない。25年以降は羽田の枠の回収・再配分があり、福岡の滑走路が新たにでき、神戸の枠がある。

こういった大きな変化があり、そこに新たな機材を導入していく。枠を取れる状況を見極めながら、羽田以外に神戸や茨城など独自のネットワークを持っているし、そういったところを組み合わせながら2025年を見極めて、慎重に路線ネットワークについても検討していきたい。

―ビジネス客の割合が少ないことに関連するが、コロナ禍の影響がなくなった後でもリモートワークの常態化した事業環境で、ポストコロナのビジネス環境の変化をどう見るか。有利なものになるのか
洞社長:ビジネス客の戻りは統計的に示せないが、確かに遅いということがはっきりしている。当社の法人顧客を見ていると、これまでの利用者の5~6割ほど戻っていないという報告も受けている。また、報告によると、ANAHD・日航が発着している伊丹空港と、我々の神戸空港の賑わいに関しては、神戸より伊丹が空いている。ANAHD・日航はビジネス路線なので戻りが遅れている。

最終的にどこまで戻るのかは予測できない。リモート会議で用事が済む部分はかなりあるので、その部分は減ってくる。事実、我々の会社でもリモートで済ませる部分は全部リモートになっている。ただ、商売として全部リモートで済まされないものは必ずある。ましてや営業などでば膝を突き合わせて話をしないとなかなかうまくいかない部分もある。

最終的にどこまで戻るかは分からないが影響は確かだ。そういうなかにあって、当社が受ける影響は、コロナ禍にあり、諸物価が上がっているなかで、コスト意識の非常に高い出張客が逆に増えたと思う。そういう意味で、当社の便は、便数もちゃんとあるし、時間の選択肢もたくさんある。何よりコストが大手に比べて安い。定時性も高い。これまでANAHD・日航を利用していたビジネスの利用者が当社に移る可能性もあるのではないか。

毎日のように利用者のアンケートを分析しているが、「スカイマークのおかげでこれまで鉄道で行っていた出張に、飛行機で行けるようになった」とか、札幌や福岡にしょっちゅう行き来しなければならないビジネス利用客が言うには、「スカイマークは安いうえに便数もたくさんあるし、定時性も1番だからスカイマークを専ら利用している」という声もたくさんある。そのような利用者が今後さらに増えることを期待している。

リーマン・ショックの時は、顧客数が激減した。その時はスカイマークの落ち方と日航・ANAHDの落ち方に差があった。言葉を変えて言えば、不景気のときに強いエアラインという評価が立てば良いと思っている。

―サイパン線の運休が続いており、それも含めて国際線についてどう考えるか
2026年ぐらいまでは、国際線の再開についての具体的な計画は持ち合わせていない。当面は、コロナ禍によって傷んだ財務体質などをしっかり立て直し、戻りつつある国内線の需要を当社がしっかり受け止めて、早くコロナ前の状況に戻り、それからさらに(業績を上方に伸ばす)ということに注力したい。

だからといって国際線を諦めたわけではない。その後の成長戦略を考えると、国際線の再開・開始は極めて大きな検討事項だ。規律を持って、どの路線をどこから取るかといったことを見極め、必ず成功するためにしっかり検討したい。そのためにも、国際線のノウハウを維持する必要がある。その間に需要があればチャーターを飛ばすことは考えている。

西岡専務:我々の前には成長する機会がたくさんある。経営破綻の原因になった過度な機材戦略やネットワーク戦略を反省し、まずは、限られた社内のリソースを充てながら規律を持って取り組む。

―中長期目標の事業収益1100億円の達成時期の目印になるものは
洞社長:2025~2026年を考えている。

―上場で得た資金を、具体的にどのように使いたいのか
約20億円は、日本政策投資銀行から借り入れている劣後ローンの返済に充てる。残りの130億円余りに関しては機材の前受金に充てる。2026年度にまた6機、確定4機とオプション2機の発表をしたが、その頭金に充てていく。

―機体について。上場の資金などを使って、ボーイング737MAXシリーズ「-10」の導入を決めたが、まだ型式証明が下りていないと思う。極めて不確実性が高いなかで機材の導入を発表したと思うが、発表までに社内でどのような決定プロセスを経て、発表に至ったのか
洞社長:MAX-10に関しては、型式証明がまだ取れていない。ボーイングの副社長の先立っての会見記事を見ると、来年の後半(に証明がずれこむ)ということだった。

MAX-10の型式証明の取得可能性についてボーイング側と緊密な意見交換などを、数年にわたって継続している。(導入予定の)2026年度までには、いろいろな事があったとしても、これから4年後なので、取得できるだろうという、ある程度確信みたいなものがあって導入したいと考えている。もし、直前になってそれができない場合には、それなりの対応を考えている。

―MAX-10以外の選択肢はなかったのか。MAX-10導入に際して検討委員会のようなものが社内であったと思うが、反対意見は出なかったのか
当然ながら対象となる機種を全て俎上に並べて、いろいろな角度から検討した。その結果、当社は737-A800を運航しているが、MAXシリーズはその派生型だ。時間的にもコスト的にも、また経済合理性でも、他機種と比較しても優れているというか遜色ないという結論に至った。

社内的には、機種選定委員会を作って、3~4年にわたって検討していた。その後の状況の変化も踏まえて、改めて検討を見直したうえで決定に至った。

西岡専務:MAX-10は、米国でまだ認証のプロセスが進んでいる状況にある。我々が考えているのは、まだかなり先のタイミングであるということで、万一、認証がずれる場合には、まだまだこの機材の入れ替えのなかでMAX-8についても、投入するところがいろいろある。それらを見極めながら柔軟に機材戦略、機材導入のタイミングについては考えたい。

MAX-10は、搭乗率の極めて高い羽田幹線を中心に考えている。仮に認証が遅れた場合には、先にそのほかのところをMAX-8から中心に(導入する)と考えてもらいたい。

―今後のIR方針について確認したい
洞社長:早速社内組織を立ち上げている。IRのホームページを開設して、活動を開始している。今後とも投資家に対し、適切なIRの徹底に努めていきたい。

―再上場に当たってインテグラルの立ち位置は非常に大きかっただろうが、今後、安定株主の形で残るのか、普通に売るのか。残るとすれば、どれくらいを目安として関与していくのか
西岡専務:インテグラルも、上場後に一定の株式を残すとのことだが、我々の立場としては、特定の1株主の今後の売却意向については関知するところはないので、コメントする立場にない。

上場後、オーバーアロットメントの状況次第だが、概ね半分が、従前の非上場前の株主、半分が新たな株主を迎えることになる。上場で、我々の今後の成長に期待した株主の立場を大事にしながら、従前の株主も、新たな株主同様に大変重要なステークホルダーと考えている。その観点で、上場会社として少数株主にもしっかりと配慮しながら経営していきたい。

―株主優待や配当の考え方について
洞社長:今のところその計画はない。昔からなかったが、当社は相当手頃な運賃を提供している。株主優待を発行する積極的なメリットはあまりない。優待に回すリソースをむしろ株主還元などそういった形で報いていきたい。また、株主還元については、極めて重要な課題なので、真面目に考えていきたい。

ただ、当面はコロナ禍で非常に傷んでいる財務の改善に注力していきたい。財務の状況や今後の投資資金、事業計画、投資計画などを勘案しながら、それらとのバランス、他社の動向なども見ながら、その時期や在り方などについて検討していきたい。

西岡専務:今回の増資で、今後の成長戦略を進めていくうえでの非常に良い形での財務基盤が整った。しかしながら、大手航空会社との比較で言えば、もう一段の、財務基盤強化も念頭にある。足元はそれを優先しながら、事業運営から生まれてくる非常に大きいキャッシュフローに関して、タイミングを見極めながら株主還元についても前向きに検討したい。

―中長期の目標を掲げているが、その達成時には配当を実施したいという認識か
洞社長:非常に重要な課題だと思う。その時の事業の状況、財務状況、投資計画、事業計画などを勘案しながら、繰り返しになるが、ANAHDや日航が配当を再開すると考えていると思うが、他社の状況も重要なファクターだと思う。今年度は無理だが、そういったものを総合的に勘案しながら、タイミングや規模を考えたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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