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上場会見:ナイル<5618>の高橋社長、自動車をオンラインで

20日、ナイルが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1680円を8.33%下回る1540円を付け、1260円で引けた。オンライン完結型のマイカーサブスク関連サービスである「定額カルモくん」を扱う「自動車産業DX事業」と、DXマーケティングに関するコンサルティングなどを行う「ホリゾンタルDX事業」を手掛ける。カルモくんの利用ユーザーの82%が7年以上のリース契約を結び、軽・小型車など日常使いの車の利用が85%となっている。高橋飛翔社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

自動車産業DXの意義について、自動車の購買過程をデジタル化して省力化すること、与信が弱い需要者のニーズを満たす金融包摂的な側面があることと説明する高橋社長
自動車産業DXの意義について、自動車の購買過程をデジタル化して省力化すること、与信が弱い需要者のニーズを満たす金融包摂的な側面があることと説明する高橋社長

―初値の受け止めについて
マーケットが株価を決めていくと思っている。初値のみならず、これからの株価についてもそうで、私達ができることは、その結果を真摯に評価として受け止めながら、事業を成長させて中長期的な企業価値の向上にコミットし続けることだ。今日の結果をしっかり受け止めながら、改めて事業に、経営に向き合っていきたい。

―初値が公募価格割れしたが、先日のSBI証券のIPOの株価操縦の話は、影響しているのか
影響はしていないと思う。

―SBI証券からこの件に関して説明はあったか
説明は求めている。ただ、現時点で回答できることは、オフィシャルにないというような反応を得ている。

―回答できるものはない
現時点ではという言いかたをしている。

―それを受けて上場を延期することは考えなかったのか
全く考えていなかった。

―それはなぜか
なぜというか、逆になぜ上場を延期するという考えなのか分からない。

―主幹事が不祥事を起こしているということは、もしかしたらナイルのレピュテーションにも影響するかもしれないという風には考えなかったのか
社内でSBI証券がこういった状況になっていることについて、どのように対応すべきかという議論はあったが、既に承認がされた後で、かつ私達は共同推薦という形でSMBC日興証券がメインで取り組んでいた。

そうした環境のなかでSBI証券1社の事情によって、そういったことをやるという考えには至らなかった。

―SMBC日興証券からは、助言や説明があったのか
このIPOを例えば、中止をするべきだ、あるいはこのSBI証券のニュースに対して私達が能動的に何らかのアクションを起こすべきだというような助言は、一切なかった。

あくまでも、現状では状況が把握できない環境のなかで、そこに対して能動的なアクションをするような状況にはないという見方をしていたと認識している。

―投資家の一部からはホリゾンタルDXは必要ないのではないかという意見もあるが、自動車産業DXはホリゾンタルDXからの派生と見て良いのか
ホリゾンタルDX事業をやっているメンバーで車のDXも立ち上げているので、ノウハウ的にかなり近いところもあって、人材的なお互いの移動は大いにある。

投資家からの評価という観点では、車のDXを大いに評価した人もいれば、ホリゾンタルのほうが圧倒的に評価できると言った人もいる。2つの事業をやっていることが強みになっている。そのシナジーを生んでいるがゆえの強みが生まれていると考えているので、両事業ともにしっかりと成長させていきたい。

―自動車産業DXは個人向けのカーリースの仲介だと思うが、個人向けカーリース市場での現状のポジショニングと強みは
カーリース系の事業者は非常に増えているが、そうした会社と当社の明確な違いとしてまずあるのは、無店舗型か否かだろう。石油元売り系や整備を手掛ける会社が参入しているが、店舗があるがゆえのオペレーションを構築している会社が多い。オンライン主体で、あるいはオンライン完結でやりきっている会社は少ないのではないか。

―市場のシェアは
どこも開示していないので、一概にシェアが何%とは言いづらい。オンラインで車を買う人と、店舗で買う人は、ニーズや顧客層が違うと見ているので、カーリース市場で比較するのではなく、車を購入する人たち全体のマーケットのなかでどのようなポジションに付けていくのかが大事ではないか。

つまり、車のローンや一括購入も含めたマーケットがターゲットであるという考え方をしている。顧客と会話をしているのを聞くこともあるが、競合でバッティングするのは。新車ディーラーの残価設定ローンや、中古ディーラーのローンであるので、カーリースというセグメンテーションがされた市場で比較をする考え方を持っていない。

―現状、ホリゾンタルDXは黒字だが、自動車産業DXは赤字で、赤字幅は縮小している。このペースでいけば全体での黒字化は近いだろうが、社長自身は黒字化の道筋をどう見るか
そこまで遠くない未来に黒字化していく認識を持っており、資本市場において黒字の是非についても、投資家の判断を決定づける非常に大きなファクターだと思っているので、しっかりと収益化を進めて黒字化を達成するのは、私のなかの重要なテーマとして捉えていきたい。

―自動車産業DXは、契約件数がどのぐらいになると黒字化するのか
アップフロントのフィーや、広告投資に対するCPA(Cost Per Acquisition)はどのくらいか、いろいろなKPIによって黒字か否かが決定されるので、一概に契約件数という形ではない。赤字が減っていく速度については、直線的に減っていく構造を持っている事業と考えているので、そこまで遠くない将来に黒字化が達成できる見方を持っている。

―全社ベースの黒字は、来期は難しいが再来期(2025年12月期)ぐらいにはというイメージか
あまり明言できない部分なので、そんなに遠くない時間軸という意味合いで、投資家にイメージを持ってもらえればと思い、迅速に達成するために集中している。

―自動車産業DXのサービスについて、排気量2000cc以下の車両に対してのみメンテナンスサービスを提供しているが、どのような戦略か
私達のメインの顧客は、軽自動車やコンパクトカーを検討する人が多い。まずはそこからサービス提供している。ただ、今後より大きな車についてもそうしたサービスを提供していく余地は大いにあるだろう。

―自動車産業DXの、解約率が債務不履行を含めて0.2%だが、利用者の裾野が広がっていくことで、どのように推移していくと見るのか
与信の弱い顧客層を広げていった場合に、この数字が若干拡大する可能性はあると思っている。そこは検証を重ねながら徐々にチャレンジをしていきたい。

―ベンチャーキャピタリスト(VC)の保有比率が27.5%で、新生企業投資ときぼう投資事業有限責任組合、ユナイテッドは今回売り抜けたような感じだが、今後のVCとの付き合いは
各VCあるいは、純投資した会社のなかで、どのようなエグジットをしていくかという思惑は当然ながらあるだろう。我々としては中長期的により大きな企業価値を獲得していけると確信している。そこをより長期的に見たほうが、投資家にとっても価値のあるリターンを還元できるという考えの下に、資本効率の高い経営をしていく。

何かの約束をすることができるわけではないが、コミュニケーションを重ねながら、私達のグロースに対する確信度合いを、より深めてもらえるような努力をしていくしかない。

―姿勢としては、できるだけ安定的にコミュニケーションを取った上でという方向か
既存の投資家とは非常に良好な関係を築いており、常にコミュニケーションをしている。上場後についても、重要なステークホルダーとして捉えながらコミュニケーションをしっかりと重ねていきたい。

―今後関心のあるバーティカルDXの領域は
アイデアレベルではいろいろあるが、これからしっかりと検討を重ねていく領域であるので、コメントを差し控えたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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