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上場会見:スマートドライブ<5137>の北川社長、移動データ活用に伸びしろ

15日、スマートドライブが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1320円を23.48%上回る1630円を付け、1472円で引けた。国内FO(フリートオペレーター)事業では、商用車を利用する企業向けに、車両管理や法令遵守、安全運転管理、車両に関わる業務のDX化、モビリティデータの分析・解析などをSaaSで提供する。国内AO(アセットオーナー)事業では、FO事業のサービスをパッケージ化し、リース会社や自動車メーカー、保険会社などのアセットオーナー企業へのOEMで供給を通じて、エンドユーザーに各種サービスを共同で展開する。北川烈社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

東南アジアでは日本で行っていないEV周辺領域での取り組みも行い、サービスの日本への逆輸入も視野に入ると話す北川社長
東南アジアでは日本で行っていないEV周辺領域での取り組みも行い、サービスの日本への逆輸入も視野に入ると話す北川社長

―初値の受け止めは
株価についてはマーケットが決めるものだと思う。とりあえず公開価格を少しでも上回ることができて、少しはほっとしている。移動データの活用は、もっと伸びしろがある事業だと考えているので、そこは株主との対話をしっかり行ったうえで、事業をもっと成長させていきたい。

―今日上場予定していた会社が延期し、直近の資金調達ラウンドからは規模を少し下げての上場となった。例えば、市場の回復を待ってから規模を大きくして上場という形の選択肢があろうかと思うが、それでもこのタイミングで出た要因を聞きたい
、フリートオペレーター向けの事業で1000社近くの顧客に利用してもらっていて、日本国内に関して言うとトップレベルのシェアを持っていると考えている。今後さらに広げていくためには、アセットオーナーのような大企業との提携や、地方で車をたくさん持っているがデータ活用が進んでないところに、パートナーと一緒に売っていくことが大事だと考えた。

信用を上げていくことや、展開をより早めることが今回のIPOの目的だった。タイミングについては、よく質問されていてその通りと思う。我々としてはマーケットの市況は読めない。仮に来年がさらに悪くなるとしたら、今が一番良いと言えることもあるし、逆に良くなればそれは良いこと。市況は我々がコントロールできないので、事業の目的に照らし合わせて今回のタイミングを選択した。

―資金調達のサイズが最優先というわけではなかったのか
そちらももちろんあるが、それだけではない。

―このタイミングで上場した意義や業界に与える効果は
直近、マザーズ指数なども戻ってきているタイミングではあり、MaaSの分野では本邦で初めてに近い上場ではないか。最初に上場した会社として恥ずかしくないようにしっかり事業成長をしていきたい。

―超大手や零細を除いた1000万台の車両が主なターゲットであるとのことだが、例えば、ヤマトホールディングス<9064>やSGホールディングス<9143>といった企業は、SIerに委託して運行に関するシステムを、独自に作っているという理解で良いか
我々の言う超大手は、まさに数万台以上の車両を保有している顧客で、自前でSIerに作ってもらい、個別性の高いシステムで運用していることがほとんどだ。

―そうすると競合の認識は
フリートオペレーターとアセットオーナーそれぞれある。フリートオペレーターに関しては超大手に入っているSIerよりは、我々と同じようなフリートマネジメントサービスを展開しているサービスベンダーや、デバイスメーカーがドラレコの付随サービスとして付けているものが競合になる。

我々の強みとしては、データのインプットとアウトプットがN対N(同じデータを複数のデバイスやソフトウェアの上で扱うことができる)の関係になっていると話した。デバイスメーカーの製品は、そのメーカーがそのデバイスを売るために(運行管理などの)サービスを作っており、基本的に1対1の関係になる(データを特定用途でしか使えない)ことが多い。顧客の視点からすると、フリートマネジメントで集めたデータを保険に活用できる、ドライバー向けのアプリにも活用できるといったデータの活用の幅が全然違う。

―黒字化の見通しは。それに必要なこと、KPI、どのぐらいの規模拡大で黒字化しそうなのかを聞きたい
今期の予想では少し赤字だが、会計基準が変更になっている関係で、若干分かりにくいが、赤字の幅は毎年2~3億円ぐらい減ってきている。かなり赤黒トントンに近い状態になってきている。

今後どのように黒字化していくのかという点は、我々にはフリートオペレーターだけではなく、アセットオーナーのビジネスもあるので、そこで比較的利益率が高く、イニシャル(サービス導入段階)で大きなお金を受け取ることもある。FOとAOのビジネスがそれぞれ伸びていけば、必然的に黒字化していく。そのざっくりした損益分岐点のイメージが今期の売り上げプラスアルファ程度だと思ってもらえれば良い。

それをいかに達成するかという点に関しては、このようなサービスを必要する顧客がたくさんいる。ただ、そこに関しては我々の社名はもちろん、このようなデータの活用ができることをそもそも知らない会社がほとんどなので、アセットオーナーとの取り組みで、彼らと一緒に売りにいく。あとは、地方の代理店を含めて、地方でたくさん車を持っているが、まだ使いこなせてない顧客と一緒に広げていくことが成長のポイントと考えている。

―地方では、どんな業種への拡大が見込めるのか
我々は基本的に業種を問わず偏りがそこまでない。配送やメンテナンスといった会社や営業車が多い。車を持っている企業であればそこまで業種の縛りはない。

―研究開発費の考え方について
研究開発費に関しては、基本的に人件費となっている。これまでも基本的に社内でサービスを全て内製化していて、今後領域を広げていく際にも、基本的には社内の開発になる。ほとんどが人件費だと思ってもらって問題ない。

―そうするとハードウェアに関しては、新しく出てくる物にしても、外の物にソフトウェアの側面から対応をして、APIでデータを連携させる形で進めることになるのか
その通りだ。今後デバイスが増えたとしても、設備投資などの研究開発は今のところ予定はしていない。

―今後の具体的な数値目標や事業の見通しついて聞きたい
開示している今期の予想以外のところは、具体的な回答は控えたいが、車が数千万台あるなかで、日本国内でもシェアが1%もない状態なので、伸びしろはまだある。

―今はBtoBの事業だと思うが、規模の拡大に伴いBtoC領域への関心はあるのか
法人車両が2000万台あると話したが、個人の車両は6000~7000万台、統計によっては8000万台ぐらいあると言われている。そちらのほうが規模としては大きい。我々としては直接BtoCのマーケットに進出するよりは、例えば保険、安全運転していると保険料が安くなるようなものは、技術的にはBtoBに限るものではない。保険会社と一緒に組んでCを攻めるBtoBtoCのような領域には、可能性は十分にあると見ている。

―マレーシア以外の東南アジアの国に提案を開始しているのか。これから始めるとすれば、いつ頃からどのような戦略で展開するのか
コロナ禍の前はマレーシアだけではなくて、中国・深圳やタイに出張所を作ろうと動いていて、実際にプレスリリースを出したこともあった。直近の状況としては、コロナ禍の影響でそもそも渡航ができないことなどで、マレーシアに絞って展開をしている。マレーシアでは、現地の社員も採用して、彼らだけでしっかり事業を進められる体制になってきている。加えて、コロナ禍も若干落ち着いて、私も今年ようやく3年ぶりに行くことができた。再開しつつあるので、具体的なタイミングは言えないが、近い将来、ほかの国にも展開していきたい。

―海外の売り上げ比率を何年後までにどの程度まで高めたいという目標はあるか
我々の事業セグメントとしてフリートオペレーターとアセットオーナー、海外事業と一部開示している。海外は全体で見るとかなり小さい規模で、全体に関してはそこまでインパクトがない。ただ、ポテンシャルという意味では、人口も多いし課題も大きいということで、近い将来、日本の事業と近しい規模に成長させられたらいい。

―だいぶ将来の話かもしれないが、データをいろいろところで使えるということで、例えば、スマートシティや、自動運転との関連で、車両同士の通信や、車両と道路に備え付けられた設備との通信、最近上場したunerry<5034>という会社が扱う人流のデータなどの組み合わせによる形の展開はあり得るのか
中長期的にはあり得る。既に事例なども公開しているが、自治体に利用してもらって路線バスの統廃合に活用してもらい、いわゆるスマートシティのような形で渋滞するエリアや危険エリアを特定する使い方もある。道路ではないが、国土交通省の外郭団体であるHIDO(道路新産業開発機構)が管轄しているETC2.0からもデータが取得できるような連携を進めている。今後もそのような連携に積極的に取り組みたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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