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上場会見:フーディソン<7114>の山本CEO、3000SKUの生鮮プラットフォーム

16日、フーディソンが東証グロースに上場した。初値は公開価格と同額の2300円を付け、2200円で引けた。同社は、鮮魚を中心とする生鮮流通プラットフォームを運営する。中央卸売市場大田市場を拠点に、生産者やメーカーから食材を仕入れ、飲食店向け自社ウェブサイトの「魚(うお)ポチ」で販売するBtoBコマースサービスが売り上げの7割を占める。一般消費者向けの鮮魚セレクトショップ「sakana bacca」も展開する。山本徹CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

山本CEOは内製しているシステムの将来的案オープン化や、販売チャネルに関し店舗とECの組み合わせなども検討していると話した
山本CEOは内製しているシステムの将来的案オープン化や、販売チャネルに関し店舗とECの組み合わせなども検討していると話した

―初値の受け止めは
今日を無事に迎えられ初値が付いたことに関しては、ほっとしている。投資家からの評価として真摯に受け止めている。我々が何をやっている会社なのかまだ十分に伝わり切っていない部分もあるので、しっかりとコミュニケーションをして、評価してもらいたい。

―魚ポチで購入している飲食店や居酒屋は、地域的に全国のどのあたりが多く、どこに注力しているのか
飲食店の総数から、大手チェーン店を除いた45万店が我々のターゲットの顧客だ。注力エリアは(南関東)1都3県で、同様に大手チェーンを除くと12万店ぐらい、今使ってもらっているのが3200店となっている。現状は1都3県が圧倒的で、特に東京が多い。

注力エリアと全国では、配送機能が若干違う。1都3県に関しては、深夜に注文してもらうと、翌営業日に間に合わせる配送ができる。それ以外の全国エリアに関しては、深夜に注文すると、1日置いて、翌々営業日に届く。当面、集中エリアである1都3県、サービスクオリティが高いエリアで、顧客をしっかり獲得していくのが我々の方針になる。

―競合はどこか
提供しているプラットフォーム事業としてのライバルは、現状ないが、サービス単位では存在している。例えば、魚ポチサービスでは、我々のサービスを使う前に何を使っていたのかというと分かりやすい。

1つは朝方の4時に豊洲市場まで行き、そして1時間かけて場内を回って今日の仕入れをして帰ってくる。そういう人は当然いるが、築地から豊洲に移転したために、交通事情は以前より悪くなっており、「行きにくくなった」、「朝4時に起きてまで行く体力がなくなってきた」という人は、遠隔で仕入れる方法を探していた。競合していると表現すると語弊があるが、市場で調達していた人たちが我々に移り変わっている部分はある。

もう1点、あまり世のなかに出ていないだろうが、市場で調達できない飲食店の人は、スーパーマーケットを使っていたりする。小売価格で、しかも小売のバラエティー(品揃え)で買っている。このような状態に対して、我々の卸売価格で3000種類のSKU(Stock Keeping Unit)で買ってもらうサービスを提供しており、乗り換えてもらっている。ベンチャーの会社で何社か似たポジションで運営している会社はある。

―ベンチャーでいくつかやっている会社に対しては、圧倒的に勝っているのか
規模的にはその認識だ。同じビジネスモデルでやっている会社とは規模的に差があり、やや違うビジネスモデル、マーケットプレイスでチャレンジしている会社もあるが、そこと比べても規模的にはだいぶ違う。

―現在の仕入れ先は国内か
海外からも特に冷凍品などは輸入している。鮮魚についてはほぼ日本だけだ。国内のネットワークでは産地の70ヵ所程度のなかで豊洲と差別化できる商品を日本国内で調達している。

―海外産の魚の扱いは
鮮魚という意味では、特にそこは考えていない。

―冷凍よりも生鮮か
海外の鮮魚がどうなっているのか十分に理解しているわけではないが、生で流通することを前提に、日本は水揚げから流通まで、一貫してコールドチェーンを高いレベルで実現できている。日本は世界的に見るとすごくレベルが高いことをやっている。

鮮魚でいうと、かなり良い状態の物を調達するには、サプライチェーン全体でレベルを上げていかないといけない。海外で鮮魚を調達して国内に入れていくのは、マグロやそれぐらいの規模になっていないと難しいかもしれない。

―設備投資効率の高さの背景は
設備投資効率と商品販売効率が表裏一体になっているが、棚卸資産の回転率が非常に高いのは水産品の特性としてある。売り物になると魚が深夜に届き、そして朝方には出ていく。そのように高回転であるという背景がある。売り上げを上げるために在庫を多く抱えている必要があるかというと、当然在庫も持っているが、生鮮品に関しては入ってすぐ出ていく。他社と比較した時に、設備に対しての投資は相対的に少なくて済む。

―商品のプライシングでは、何かアルゴリズムのようなものがあって自動で決まるシステムなのか
目安になる粗利率は持っていて、それを基準にして、顧客の利用度合いによって金額を変えている。それはある意味アルゴリズムという部分で、利用度に応じて適切な価格設定をしている。

―生鮮品固有の要件があるのか
価格の設定に関しては、特有というものではない。

―水産品以外の展開の可能性について聞きたい
まさに我々が積極的に取り組んでいく必要があるところだ。現状、顧客から注文を受けている売り上げのうちの、構成比で95%が水産品だ。これは顧客から水産品が支持されている一方で、野菜や肉に関してはまだ品揃えが足りていないことは課題として、我々が取り組んでいく対象だと見ている。

―成長戦略の1つとして売上総利益拡大のための商品基盤の拡充を掲げているが、そのなかの商品特性の拡充とは、どのようにして幅を広げていけるのか
水産品も水産以外のものも拡充させていく。現状で言うと、成長の軸になっているのはやはり水産であり、そこはしっかり拡充させていく。野菜と肉に関しては、専属のバイヤーが必要になる。今のところ、そこはまだ片手間のような状況になっていて、それだとSKUが揃い切らない。自前で顧客のニーズをしっかり踏まえて商品探しをしていくバイヤーを採用していく必要があり、採用する考えだ。

―水産品に関しては自社のバイヤーがいて、活躍しているのか
そうだ。

―水産品の拡充に関してこれからやっていくことは、取引先を増やすことか
バラエティーでいうとある程度十分に整いつつある。今後、顧客のボリュームが増えていく際には、バラエティーを担保しながら量をしっかり扱えるようにしていくことが重要になる。その際に新たな取引先が当然増えていく。

バラエティーを担保しながら商品を確保できるようにする意味では、豊洲とのネットワークが非常に重要だ。豊洲は我々の売り上げ規模に対しては全国から集まってくる魚の総金額でいうと、金額としては十分にある。年間5000億円程度の商いがあるはずだ。

我々は数十億円を売っているレベルから、当面拡張させていくうえでは、豊洲もしっかり活用しながら、全国のネットワークを並行して使っていく。そうすることで十分に足りるのではないか。

―調達資金の使途は
魚ポチの事業に関しては、顧客を含めてサプライサイドが増えていき、その時に重要なのが物流センターの拡張だ。出荷する場所のキャパシティをしっかり上げていくことが必要になる。今回得た資金に関しては、物流センターの整備に活用するのがまずある。また、小売店を増やしていくので、その出店のための資金や、それに伴って人件費といったところに活用していく。

―物流センターや流通機能だが、倉庫がいくつあるかなど固定資産的な設備を自社でどの程度保有しているのか。
倉庫に関しては、基本的に大田市場の倉庫を活用している。細かく小分けされた冷凍庫や、超(低温)冷凍庫や冷蔵庫は、大田市場の市場の機能を使っている。そこは資産ではなく、月額の費用で利用させてもらっている。物流センターも我々の持ち物ではなく利用している。

―物流センターのキャパシティを増強することは、建設するのではなく、費用を出して使わせてもらうのか
その通りだ。大田市場の近くでそういった場所を探して見つけて利用させてもらう。

―sakana baccaの出店地域や目標は
今後も東京の利便性が高い立地に出店していく。店舗を急激に増やしていくのは、むしろ品質を劣化させることになるので、良い場所を定めて良い店舗をしっかり増やしていくという方針だ。

―3県は今のところ考えていないのか
現状でいうと、東京だけでも十分余裕があり、まずはそこに集中していく。

―可能な範囲でOMO戦略について聞きたい
ここはまだ具体的に決まっていない部分で、sakana baccaの店舗と、魚ポチの取引先の店舗ネットワークなどを組み合わせていける可能性があるのではないか。まだ具体的に何か伝えられるレベルではない。

―そうすると、例えば飲食店の人がsakana baccaで預かってもらった物を受け取るような感じにもなるのか
Webで注文することではないにしても、sakana baccaを仕入れに使ってもらう動きは既に起きている。そういった動きを見定めている部分はある。それをより活性化させるための仕組みでどうかかっていくのかは今後の検討になっていくが、クロスし始めている部分はある。

―海外展開のイメージについて詳しく教えてほしい
まだ方針として定めているものではないが、日本の魚を調達したいニーズは以前より大きくなっていることは、間接的に理解している。既に代理人を通じて海外の顧客が魚ポチを使っている実態がある。利用額が年々増加していることも把握できている。

現状は動向を見定めて、いつ自前で動いていくべきかを検討していく。展開の仕方はいろいろある。現地でパートナーを見つけ、魚ポチを現地版にアレンジする方法などがある。方針として決まってるものではないが、いろいろな選択肢を取れる。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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