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上場会見:オープンワーク<5139>の大澤社長、定性データに事業の芽

16日、オープンワークが東証グロースに上場した。初値は公開価格の3150円を11.11%上回る3500円を付け、4200円で引けた。転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」の開発・運用業務を含むワーキングデータプラットフォーム事業を手掛ける。515万人ほどが登録し、求人数は約4万3000件。社員クチコミ・評価スコアは約1380万件となっている(2022年10月末時点)。大澤陽樹社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

OpenWorkのクチコミデータは国内で唯一、企業や企業の業績や株価と強い相関があるという査読付論文で証明されていると話す大澤社長
OpenWorkのクチコミデータは国内で唯一、企業や企業の業績や株価と強い相関があるという査読付論文で証明されていると話す大澤社長

―初値が公開価格を上回ったが、その受け止めは
投資家によく評価してもらったことを感謝するとともに、当社に寄せる期待の強さを改めて感じている。期待に引き続き添えるよう経営努力していきたい。

―この時期に上場した狙いや目的は
当社の主力事業であるOpenWorkリクルーティングがこの1~2年で力強く成長し始めた。成長をさらに伸ばしていくうえで、資金を調達することが必要であると考えたことが、このタイミングでIPOを目指したきっかけとなった。現にそのまま順調に伸びている。

当社の今後の課題は、社員クチコミサイトとしての認知が非常に強く、転職・就職のためのサイトとしては認知がまだ弱いので、今回調達した資金を活用して、マーケティングやブランディングに投資して、さらなる事業成長を実現したいと考え、このタイミングでIPOに踏み切った。

―転職希望者がOpenWorkを見た時に、ポジティブな情報のみならずネガティブな情報も目にするので一定の選好が働くと思う。求人企業からすると必ずしもプラスになるだけではないのではないか。ネガティブな要素を打ち消す何かがあるのか
必ずしもポジティブに働くものではない。ただ、調査によると、転職や就職をする際に半数以上が社員クチコミを使って会社選びをしているなかでは、遅かれ早かれネガティブな情報が求職者に漏れてしまう。

そうであれば、最も信憑性の高いサイトを活用する。OpenWorkでは企業側からも会社情報を発信することができるようになっている。いずれにしても知られてしまう情報がある前提のもと、会社からも正式な情報を発信し、両面から明らかにしていくことで転職者に正しく情報を出していくことで選ばれていると思う。

ネガティブなイメージを与えることもあるので、企業からするとそれが世のなかの当たり前になっているので「しょうがないね」という感覚が最も近いのではないか。

―OpenWorkにクチコミを寄せる際の要件として、正社員や契約社員で雇用期間1年以上というものがあったと思うが、その点にこだわる理由は
現時点では需給のバランスを見ている。当社のクチコミを見る人が、正社員や契約社員、そして1年以上、どちらかというと短期の有期雇用よりは、一定期間長く働く人で、そのような人たちが見るサイトとして元々スタートした。

そのため、そういったニーズに応えるうえでは、例えば、1~2ヵ月のアルバイトの人のコメントが混ざってしまうよりは、純粋な正社員や契約社員のコメントを集めた方が、情報価値が高いだろう。まずこの人々に絞ってスタートした。今後は未定だが、当社のミッションとしては、全ての人に働きがいを持ってもらいたいので、ゆくゆくは対象を広げたり、違うクチコミを集めていく可能性は否定できないが、現時点ではそういった理由から絞っている。

―マッチングの際に、N対Nのマッチングをするシステムだと思うが、そういったものも含めて全て内製化しているのか
開発チームがあり、基本的にはそこで開発をしている。

―データが株価の予想にも繋がるという学術的研究があるとのことだが、なぜ他社のデータではなくオープンワークのデータではそれができるのか
他社のデータを活用して研究論文を作ろうとした人がいたかは、そこまでは確認できていない。現在、日本証券アナリスト協会やJAFEEという金融工学系の学会で、社員クチコミを活用した業績データとの相関関係が証明された論文は当社のみとなっていて、当社のみと(発表)している。

なぜ当社が強い相関を見いだせたのかという観点から言及する。これは推測になるが、当社のクチコミは、AIや機械学習だけではなく、弁護士を含む審査チームで1件ごとにチェックし、審査基準をクリアしたもののみが公開される。一定の品質が審査により担保されている。これがおそらく企業の業績や株価と強い相関が出るほど品質が高まっている理由ではないか。

―オルタナティブデータ事業をどのように成長させていきたいのか
まだ事業になっておらず、「その他サービス」の1つとしてあるので、今後事業として伸ばしていく可能性があるか検討中だ。ただ、その前提で答えると、オルタナティブデータ全体の、世界の市場は非常に大きく拡大している。

そういったなかで、日本の自然言語に特化していること、センチメントデータといういわゆるESGでいうところのソーシャルやガバナンスのデータを従業員のクチコミから導き出していく。ワークライフバランスに関して、定性コメントが書かれている。今のソーシャルやガバナンスのデータは、例えば、女性の取締役が何人いるかという0か100かで分かるデータのみになっている。

日本のオルタナティブデータ推進協議会が発表しているカオスマップによると、日本市場では当社のみが日本のHR(Human Resources)のオルタナティブデータのセンチメント領域を提供している。この競争優位性と先行優位を活用しながら、海外のヘッジファンドやアセットマネジメントで日本への投資に力を入れている先に提供して成長できないか模索している。

―自社の組織改善に役立つレポート作成などをしているとのことだが、具体的には
企業は人的資本の開示を求められ、例えばIRでどういった人材面の投資をしているか開示しなくてはならない。そのなかで、自社の組織課題が何なのかというのを、在籍している従業員だけなく退職者の口コミも含めて分析することで、より本質的な課題を見つけられるというニーズがあるのではないかという仮説を立てている。

実際に企業がそういったデータを欲しいということで、生データではなく当社でそれを簡単に分析したものをレポートとして提出している。

―新規事業か、既にもう始めているのか
新規事業とまではいかず、顧客から問い合わせがあったものに応えているところで、これから事業化するかどうかは検討中だ。そうした芽が少し出てきている。

―調達資金の具体的な使途は
大きくは2つで、1つはサービス認知向上のためのブランディングやマーケティングに活用する。2023年12月期に3億8900万円を充当していく。ほかはWeb広告やマス広告などに展開していく予定だ。また、OpenWorkリクルーティングで優秀なビジネス人材やエンジニア人材が必要になるので、組織体制強化のための採用費と人件費として7億8500万円を2023年12月期に充当する予定だ。

―リンクアンドモチベーションと共同で事業を行うのか
現時点では、開示している情報のなかでは、ない。親子上場ではあるが、独立して経営しているので、現時点では何か共同してサービスを立ち上げるといったことは考えていない。

―株主還元は
しばらく配当はなく、内部留保をしたい。今OpenWorkリクルーティングが非常に成長しているので、事業への再投資をして企業価値を向上させることが、株主への1番の還元だと考えており、配当はなしと現時点では計画している。

―この程度の利益が出たら行うという計画はあるのか
現時点では開示していないし予定はない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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