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上場会見:サーキュレーション<7379>の久保田社長、プロが働く土壌を作る

27日、サーキュレーションが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1810円)を77%上回る3205円を付け、3905円で引けた。同社はビジネス上の課題解決能力を持つプロ人材の経験・知見を活用し、企業の経営課題の解決を支援するプロシェアリング事業を手掛ける。「プロシェアリングコンサルティング」と「FLEXY」など4サービスを展開する。久保田雅俊社長がオンラインで上場会見を行った。

久保田社長によれば、データマネジメントでは、企業の課題や登録者の職能、契約のほかプロジェクトの進捗や評価に関するデータを集積する
久保田社長によれば、データマネジメントでは、企業の課題や登録者の職能、契約のほかプロジェクトの進捗や評価に関するデータを集積する

―初値が公開価格を77%上回ったことをどう評価するか
新しい投資家というステークホルダーに期待してもらえて大変嬉しい。時価総額の拡大は、今後は当然ポイントになるので意識を高く持っていきたい。プロシェアリングというサービスやサーキュレーションに興味を示してもらい非常に嬉しい。世界ではもっと進んでいる会社もあり、我々もいつか世界に出ていきたいと思っているため、投資家に力をもらった。身の引き締まる思いでもいる。

―プロシェアリングの専門的人材を1万7000人集め、さらに集めるためにどのような工夫をしているのか
企業における8000件のプロジェクトを進めてきて、どんな課題が各社にあるかしっかり把握する。それができるプロを集めることが非常に重要だ。ただ量を集めていけばいいマーケットではなく、徹底的に質を追求する。その質の理由になるものは、企業の課題やプロジェクトだ。このマーケットは広がっていくが、まだ小さく、提供する良いプロジェクトを作る。これによって個人に集まってもらう。我々がプロとして感じる人、職能のデータや経験としてもプロとして感じる人に集まってもらう。まずそこを目指していく。

―登録しているプロ人材のうちアクティブに活動している登録者はどのぐらいか
アクティブ率は公開していないが、今後より多くのプロ人材とともにプロジェクト創出ができるよう、事業拡大に務めていく。

―プロ人材は委任契約でアサインして善管注意義務を負い、また、規約の整備で情報管理などについては問題がないと思うが、案件の受任状況によっては事実上の利益相反的な事態が生じる可能性があるように思う。予防する制度的な仕組みはほかにあるのか
当社は、1人のプロ人材が複数社に同時に支援に入ることを支援するサービスだ。個別プロジェクト毎に締結する準委任契約書で、守秘義務を徹底している。そのうえで、毎月プロ人材に作成依頼・回収を行う「業務報告書」の授受で、情報管理項目を含めた「セキュリティチェックリスト」への回答を依頼している。加えて、口頭での当社担当からの説明を行っている。

また、プロ人材が取得しうる法人顧客のインサイダー情報に関しては、プロジェクト稼働時に締結する準委任契約書にて守秘義務を課し、インサイダー取引に利用しないこと、またプロジェクト進捗中に取得した場合には即座に当社に連絡をすることを告知している。

―ビザスクなどが競合と考えるが、競合に対する強みは
シンプルに3つある。まずデータマネジメントだ。しっかりとデータを貯める。厳選したプロで、かつプロジェクト自体も我々が顧客と一緒に要件を定義していて、そのデータの全てが残っている。転職マーケットなどでは、例えば、A社からB社に個人が移る時に評価できないデメリットがある。評価をストックできる意味ではデータマネジメントがある。

2つ目はどこよりも力を入れている地方創生。今、既にこのひと月でかなりの中小企業を地方の銀行の行員がプロシェアリングのサービスを提供してもらえる仕組みができている。活用してもらえる中小企業がまだまだある。全てが成功するとは思っていないが、地方と専門性がちゃんと嚙み合えば、素晴らしい新領域に進出できたり、革新的なことができる。地方創生は差別化に当たる。

あとは、新領域や新事業をどんどん立ち上げている。新しい領域でも勝負できる土壌を作っている。上場後にはSaaSもあるし、今は新しく仕掛けている新領域もある。期待してもらいたい。

―これからの会社像は
世の中の会社がどうなっていくかということと、サーキュレーションという会社がどうなっていくかという2つの観点で話すと、プロが3社同時で働く世界観は、世界でも出てきていて、一方でそういうプロたちを増やしていくことが日本では非常に重要だと感じている。まず我々がプロジェクトを作り出して、プロたちが働く土壌を作りながら、プロが育つ社会環境や会社を作る。要するに人を育てていく会社なのか、極端に言えばプロたちだけで会社を運営するのかという部分で、これからの会社像は働き方の変容と雇用する側の戦略を変えていかなければならない。

サーキュレーション自体の会社像は、社名もそうだし、サステナビリティーのホームページを先日オープンした。この2年半以上、ソーシャルセクターを社内に作り、プロフェッショナルを置いて、ずっと取り組んできた。当然ながら上場でのガバナンスもそうだが、ESG全般に取り組んでいくことで、社内の役員やメンバーの一人ひとりが自分たちで認識することを進めてきた。Jリーグや地方の町にプロをプロボノとして提供することで、社会価値を起こす活動をしている。サステナビリティーの意識は高いという会社像を持っている。

一方で、今は風の時代と言われ、コロナ禍で時代の変化が大きいところでいえば、あまりに元に戻り過ぎてはいけない。グレートリセットと言われているが、まさに世の中がリセットされるからこそ新しいサービスを生み出すために前に踏み出していかなければならない。5~10年後に起きる社会課題は仮説が付く社会だと考えており、データベースを持っている会社であるので、10年後に社会課題として起きるものに対して事業戦略や人事配置、風土設計をしなければならない。まさにサステナビリティーの10年後の課題から想定して会社を設計する。そういうことを考えて会社を経営している。

―4サービス以外の領域への進出可能性は
当社の事業は、高い専門性を持つプロ人材の経験・知見を活用し、企業の経営課題を解決する「プロシェアリング」事業であり、国内外の「知」のめぐりをよくしていくことを目指している。

そのうえで、現在提供しているサービスではない形での提供が、企業や社会の課題解決により寄与できると判断した場合、新サービスをリリースする可能性はある。しかしながら、現時点では具体的な予定で開示できるものはない。

―株主還元の考え方は
経営者として重要であると考えている。業績と連動させて今の高成長を作ることが重要だ。足元は既存事業も伸びるし、新規領域にも投資をすることで伸びるポテンシャリティーがある。足元をしっかり伸ばしていきたいが、今後は重要だ。当社は、配当よりは成長投資を重視し事業成長、それによる株価での株主への還元を考えているが、安定、継続的に配当を行えると判断した際には、可能な限り早く配当を実施したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]