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上場会見:アウトルックコンサルティング<5596>の平尾社長、経営管理のインフラ

12日、アウトルックコンサルティングが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1800円を8.00%下回る1656円を付け、1395円で引けた。同社は、マイクロソフトのエクセルを用いた経営管理システム「Sactona(サクトナ)」の開発や導入、経営管理コンサルティングを提供する。会社や業務ごとに管理方法が大きく異なる業務を、統一したシステムで処理する。352万株を保有するAG2号投資事業有限責任組合が51.5%を売り出す。平尾泰文社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

正しい情報に基づいて意思決定のスピードアップを図れることが製品導入の最大のメリットと話す平尾社長
正しい情報に基づいて意思決定のスピードアップを図れることが製品導入の最大のメリットと話す平尾社長

―株価についての感想は
そういうものだとして受け止めるしかない。当社としては事業の拡大や成長に邁進していく。そのなかで中長期にわたって投資家にも評価、信頼されるような企業になっていきたいということに尽きる。私自身は非常に良い事業・企業だと思っているので、評価も伴ってくれば嬉しい。

―競合が市場に参入しやすく、1つの商品に注力している状態で、上場後も競争力を維持できる根拠は
対象としているマーケットは現在、マニュアルで対応している部分が大半なので、専用ソフトの対象マーケットとしてはブルーオーシャンだと考えている。その裏返しのリスクとして、魅力的な市場なので、新規の参入を含めて入ってくる可能性はあるだろう。やはり長年にわたって事業を営んでおり、一日の長はある。

製品のみならずコンサルティングも合わせて、かつ、既存顧客から高い評価を得ているなかで、現在のところ競争力は十分にあると考えている。このブルーオーシャン・マーケットでできるだけ早期に高い市場占有率を取ることで、そのリスクは回避できるのではないか。

単一製品ではないかという点について、対象業務範囲が、仮に全社の損益計算書の予算管理だけでは、非常に狭い領域での事業となるが、Sactonaはプラットフォームであり、いろいろなアプリケーションを載せることで、販売管理や製造業での需給管理、人員管理など複数の機能を適用できる。そういう意味では、単一製品というよりはかなり広範に利用できるインフラだと考えている。

例えば、エクセルは単一の表計算ソフトだが、あらゆる使い方をされて、その上に(複数の機能が)載っていく。それと同じように、基盤としての位置付けで、その上に載っていくアプリケーションが多岐に渡って分散されている点で、集中リスクは避けられている。

―製品ライセンスやインフラサービスを扱うベースビジネスと、導入・拡張支援のコンサルティングビジネスの売り上げの比重は、10年ぐらい先を見た時にコンサルのほうに移していくのか
今は両輪になっていて、顧客数の増加に伴って、ベースビジネスのほうが増加傾向になるだろうが、コンサルティングでしっかりと顧客ニーズに則ったものを導入できるというのが強みの1つなので、コンサルティングも現在の比率程度は維持しながらと考えている。基本的にはベースビジネスが増加することで、利益率は上がっていくと見ている。

―直近の実績として営業利益率が30%を超えているが、今後の営業利益率の見通しや目標について
基本的には顧客が増加するにつれて、製品ライセンスの積み上がり部分が増えていく。その部分の利益率は高いので、利益率については売り上げの増加に伴って増えていくと想定している。

―3割をボトムに維持していけるのか
どのぐらいまで増加でき得るのかという点については、将来の話になる。規模は違うが、同じような事業モデルと見ているオービック<4684>は制度会計を中心に扱い、営業利益率は6割を超えている。我々も十分にそれを目指していけるだろうと考えて取り組んでいる。

―成長戦略としてのグローバル展開とAIがある。グローバル展開のターゲットは英語圏とある。中国語にも対応しているが、まず英語圏を狙う理由は
順序の問題で、排除するものではない。社内で中国語よりも英語を話す人員のほうが多いこともあり、やりやすさの点が大きい。米国やカナダ、英国では、既に管理会計としての認知度も高く、啓蒙活動が必要なマーケットではないこともあり、順序としては英語圏が取り組みやすい。ただ、現時点でも例えば、中国の現地法人からオーダーを得ることはある。全く排除するものではなく取り組んでいきたい。

―海外に本格的に出ていく場合、海外の競合に対する優位性は
海外でも、当社の製品の柔軟性についてはニーズが高いと考えている。企業によって、ベストのやり方があるが、海外製品は一般的に、ある程度のパターンはあるようだが、このパターンでやってくださいというもので、カスタマイズする時は費用も相当かさむと聞いている。そのような意味では、柔軟性が体現できる当社の製品は競争力があると見ている。

―成長戦略のなかのAIサポートは、どのような機能か改めて聞きたい
経営管理とAIは非常に相性が良い。例えば、決算や税務は、1円単位できちんと正しい数値でなければならない。管理会計や見通しを扱う場合、まずは素早く大掴みでも見たい。1円単位の話は、本来はあまり重要なものではないと思う。

求めるものが結果として凄く正確なものであると、AIは必ずしもそこに到達していないかもしれないが、大掴み、または過去のトレンドから判断していくという点では、最終的には人間が判断するものだが、かなり強いサポート材料にはなっていくだろう。

当社もデータを顧客の資産として預かっており、了解を得る前提にした将来見通をAIを使って、ある程度導き出せるのではないか。もしくは計画や予算見通しを作った時に、「過去トレンドからして、かなり特異値ですよね」ということは、人間が見てもある程度チェックは可能だが、漏れ・抜けなく見ていく意味ではAIは強力なサポートになるだろう。最近は生成AIが著しく進化していて、データは持っているので、それを繋げることで、見たいものを出していくような使い方は十分できるだろうという想定で研究を進めている。

―新規事業のように扱われているが、この機能を使うとさらに客単価が上がるという収益モデルなのか
でき具合によるが、付加価値は十分あり、何社かの既存の顧客にヒアリングをしたうえで、十分に追加的な位置付けになり得るだろうという想定ではいる。完成度と顧客のなかでの需要はあるが、今までになかった付加価値にはなっていくだろう。

―コンサルタントの拡充について、どの程度のイメージで増やしていくのか
具体的な数値は公開していないのでざっくりとした話にはなるが、過去の経験も踏まえて、人員の増加は組織の強化にもつながるものの、間違えると脆弱にしてしまう。ある程度慎重に考えなくてはならないが、15~30%であれば、質を落とさず、文化も維持しつつというのは十分に可能なレベルと見ている。

昨年度末にコンサルタントが41人で、その15%は年間に6人程度、3割でも12人程度なので、月に多くても1人程度というペースは、現実感のない数字ではない。そのようなペースで採用していきたい。

―求められる人材の質は。例えば、会計やコンサル経験がある人か
Sactonaの上で開発するアプリケーションは、ノーコード、プログラミングしなくてもできるものだ。SEなどのプログラマーでなくて大丈夫だ。ただ、顧客の経営や会計については知識がなければならないので、会計関係に携わったことがある人だ。かつ、システム開発ではあるので、システム導入経験があって、物事の進め方が分かっているという点で、制度会計を中心とする会計システム、ERPの導入を経験した人は適性が高い。ERPなので母数は本来多いので、そこから優秀な人たちに是非来てもらいたい。

―新卒は
この規模の会社にも関わらず、毎年ずっと新卒を採り続けている。来年もそのまま入社してもらえば4人入る。そのぐらいの人数を継続して取っていて、新卒で取った人間がシニアマネージャーとして既に活躍しているぐらい長く働いているので、継続的に採っていきたい。

―大株主のAG2号投資事業有限責任組合について。沿革として、前の経営者の高齢化による事業承継か
事業承継としてプライベートエクイティファンドが買収した。

―AG2号投資事業有限責任組合がかなりの部分を売り出したが、今後は何らかの形で売却するのか。持ち続けて何かするのか
基本的にはファンドという事業そのものが、一定期間でエグジットをしながら、という事業モデルなので、そういう時間軸のなかでの検討になると思う。このファンドを運営している母体は今まで、事業会社に株式を売却することでエグジットをしてきた会社だ。

今回についても、上場はするが、ある程度の持分を当社の事業提携などに分散して持ってもらえればと私も考えている。その意向については、確認しているところなので、そういう方向感で検討を進めてもらえるものだと想定している。

―株主還元の方向性について
私自身エクイティ投資側にずっといた人間なので、資本効率についての意識は高いほうではないか。現在でも利益をしっかり計上して、内部留保が高まってきている。今後、現金をそのまま積み上げていくという意図はないので、有効に活用し、株主にも喜んでもらえる形がどのようなものか、今後いろいろな可能性のなかで検討したい。ROEが悪化していくようなことにはならないように進めていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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