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上場会見:KOKUSAI ELECTRIC<6525>の金井社長、ALD技術を展開

25日、KOKUSAI ELECTRICが東証プライムに上場した。初値は公開価格の1840円を15%上回る2116円を付け、2350円で引けた。半導体製造装置の開発や製造、販売、保守サービスなどを手掛ける。日立製作所の持分法適用会社である日立国際電気の成膜プロセスソリューション事業が前身。米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が2017年に公開買い付けで日立国際電気を買収後に会社分割を行った。筆頭株主のKKR HKE Investmentが、保有する1億6870万500株(保有比率:70.77%)のうち、OAを含めて最大で4割を売り出す。金井史幸社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

複雑な基盤上でも均一かつ高品質な成膜が可能なALD技術を用い、100枚以上のウェハーを一括して処理できるバッチ式の装置で事業を伸ばしてきたと話す金井社長
複雑な基盤上でも均一かつ高品質な成膜が可能なALD技術を用い、100枚以上のウェハーを一括して処理できるバッチ式の装置で事業を伸ばしてきたと話す金井社長

―初値が公開価格を15%上回る2116円だった。受け止めは
提案価格は1840円からあったので、それに対して最初の値として2116円が付いたことは、安心感をまずは覚えた。そのうえで、今後さらに伸ばしていける会社である自負を持っている。取引が継続されていくなかで、我々の価値をさらに高く評価するところが出てくると想定しているので、まだまだこれからだという判断をしている。

―このタイミングでの上場は
2年ほど前から上場しようと決めて活動してきた。コロナ禍があってウクライナ問題があり、米国の金利問題があって市場が冷え込んで、我々はずっと上場したいしたいと思いながら、狙いを何度も何度もずらしてきた。ほぼ3ヵ月おきぐらいに目標の期日を動かしながらやってきた。

ここへ来て、目先の半導体市況は良くはないが、先はもう見えている。上がるのはもう間違いない。投資家も絶対疑わない。値段は下がったところでも、我々もそれに応じた手頃な価格を付けて出られれば、今後さらに上げていける自信はあった。タイミングとして悪くはないだろうとKKRも納得していた。相談のうえで証券会社の意見を聞きながら、この時期に出ようと決めた。

―再上場で苦労したことは
日立国際電気時代から1つの上場会社として機能していて、日立グループの傘下にあった。そういった面で助けてもらえるところは幅広くあった。

そこから財務や広報・IRといった機能はほとんど継承せずに、技術領域と工場経理のようなものと総務などで出てきたので、そうした機能を全く持っていなかった。KKRの力も借りながら、人材も新たに採用しながら、体制構築をこの2年間、幸か不幸か長くかかったので、体制を構築する時間は十分にあった。その間に強化してきた。ただ、今後、投資家と十分な会話をしていくうえでは、補強しなければならない部分はあるので、手を抜くことなく、今後もしっかり進めていかなければならない。

―大株主のKKRについて

投資家と会話していても、我々の投資に制限を受けているのではないのかなど、いろいろな質問を受けたことがあったが、そうしたことは全くない。むしろ我々の投資を後押ししてくれる存在であった。また、M&Aの可能性の紹介を受け、人材をグローバルに採用するうえで、彼らが持っているネットワークを通じて紹介してもらったこともある。そういった形で貢献してくれているので、今後、持ち株数が減ったとしても、当面は、我々のバックボーンとして活躍してくれると見ているし、そこは期待したい。いつまで持っていてくれるかは、まだ分からない。徐々に退いていくのではないか。今、社外取締役として2人が入っているが、これも持ち株数の減少につれて減っていくだろう。

―株主構成のなかで、アプライド・マテリアルズのヨーロッパの会社が株の15%ほどを持っている。例えば、バッチ式の成膜装置やトリートメント装置などいろいろあるだろうが、今後、具体的にどういったところで協業する可能性があるのか。現時点での見解を
一時、アプライドと統合することを模索した時期があった。一部の国の独占禁止法の審査が通らずに断念したが、統合の議論をしていた頃から、競合している製品群については相互に一切情報を開示していない。それは継続している。
ただ、半導体では、プロセスとプロセスの関わりが、どうインテグレーションしていくのかという点が非常に重要になってきている。我々のように成膜しか持っていない会社にとっては、違うプロセスを持っている会社と会話することはとても大事なことだ。

また、アプライドはALD(Atomic Layer Deposition)の技術が弱い。ラムリサーチやASMLなどにかなり取られている部分があると思うので、我々と協力関係を持つことはアプライドにとっても非常に大きな意味がある。お互いの強みを持ち寄って、新たな領域を作り出す。顧客に新たなソリューションを届けられる場所をお互いに見つけていこうとコラボレーションを始めている。

今はアプライドが15%の株式を持っているが、これ以上大きく増やしていくとはないだろう。1度独禁法の関係で統合を断念した経緯もあるので、当社の株を多く持ったからといって彼らに大きなメリットはないが、株を持つことで、我々とのつながりを継続して我々のALD技術をうまく活用しながら、自らの技術も伸ばしていくのを模索していると考えている。

―成膜装置分野での協業を模索しているのか
我々の成膜技術と、例えば、彼らのエッチング技術がある。膜を付ければそれをエッチングしなければならない。エッチングしたところには次に膜を付けトリートメントもしなければならないかもしれない。お互いに、自分たちの処理をしたことによって何か違うことが起きてしまったらそれを修復する、成膜したものに対して、よりエッチングしやすい技術を開発するといったコラボレーションを考えている。

まずは我々が持っている装置と、彼らが持っている装置のそれぞれを使いながら、付けたウェハーを相互にやり取りすることで、新しい領域への進出や、役に立つことができないかということに取り組んでいる。将来的に、お互いの装置を持ち寄って、全く違う新しい装置を作り上げる可能性もないとは言えない。まだそこまで話は進んでいないが。

―アプライド・マテリアルズとの連携について確認したい。技術的な連携を深めると言ってしまって良いのか
悪くはない。ただ、お互い競合するところは、技術開示をしないという前提で、技術の協力関係を作っていきたいと考えてもらいたい。

―中国向けの売り上げが 3割ぐらいあるだろうが、最近、米国の輸出規制強化もあり、地政学的リスクに関して、市場のなかでどう説明し、アピールしていくのか
米国の規制に加えて、日本からも規制が発動されている。我々の製品のなかで1膜種が対象となる。確かに規制の対象となっているのは事実だ。米国の規制によって、中国での顧客の、先端の投資が止まっているので、その止まった影響は、全装置メーカーが影響を受けているだろうが、我々も当然受けている。

ただ、日本からの規制の発動によって、新たにさらに規制の範囲が広がったかというと、そういうことはない。既に止まっているものに対して、新たな規制が重複してかかっている状態にある。現在、全世界の半導体装置メーカーが影響を受けている中国の先端の投資の凍結については、我々も同じように影響を受けているが、それ以上に大きく影響することはないと判断している。

今、30%ぐらい中国の顧客とビジネスをしているが、ほとんどは規制を受けない範囲で活動している中国のDRAMメーカーや、レガシーのロジック領域の顧客が主体となっている。そういったところは全く影響を受けずに投資が継続されているので、この数年で我々が大きく影響を受けることはないと考えている。

―今が半導体サイクルの底であると判断し、フェアバリューの見方に関して投資家にそう説明した根拠について
顧客との会話のなかで判断しており、ガートナーなど各アナリスト会社からの情報を基にして判断している。確かに、非常に厳しい状況が続いているので、「本当に底を打ったのか」という疑問の声が出ているのは確かだろうが、顧客の在庫が減り始めているというのは事実で、底は打ったと考えている。

ただ、どのぐらいで完全に在庫が解消して、顧客の生産が元に戻って、次の投資へのモチベーションが湧いてくるかについては、もう少し時間はかかると見ている。来年の後半から再来年にかけては、確実に大きく元に戻ってくる、さらに超えていくだろうと考えている。2024年末から2025年にかけて、大きく成長が戻ってくると見るが、時間が長くかかるのは、業界の通説としてある。

そういった点で、「本当に底を打ったのだろうか」という疑問が出てくるのは当然だが、我々は顧客やアナリストたちとの会話のなかから、底を打って、徐々に回復していくだろうという判断をしている。

―成膜に関する技術について。得意とするALD技術と、そのほかのCVD(Chemical Vapor Deposition)の技術の、使われている一般的なシェアはどの程度か
昔の製品で考えれば、ほとんど全部CVDだ。最近の先端の製品になると、ALDの比率が高くなっている。

当社の売り上げデータをベースにしているので世の中一般の数字とはちょっと違うが、NANDで見ると、大体85%がALDと考えて良い。DRAMで65%、ロジックではかなり下がって45%ぐらいになっている。これは、ほぼ先端の話が中心になっているので、今後、ALDが成長するのと同時に、レガシー領域もどんどん広がっていくとすると、そこでのCVDも増えていく可能性はある。一概にCVDがどんどん減ってALDだけが大きくなっていくことではないだろう。

―売上高構成で、NAND、DRAM、ロジック、その他を分けると、大体どういう構成になるのか
時期によってだいぶ変動する。今は特にNAND市場が完全に冷え込んでいる。

神谷勇二専務:直近ではNANDが相当減っているので、従来では4割以上あったが、その半分以下で、比率で見ても、今年度は10%台の半ばだ。今年度では、ロジックとDRAMがほぼ40%弱で半々程度だ。来年になるとNANDがもう少し戻ってくるだろうが、それでも過去の、40%台あったところに比べると戻りが低い。

―今後DRAMやロジックの市場を開拓していくうえで、中長期的にどういう売り上げのバランスを志向するのか
金井社長:感覚としてはDRAMが3割で、NANDが3割、ロジック4割ぐらいに持っていきたい。

―ロジック半導体でも装置が使われるようになるという話があったが、そうするためには、技術的には新しいものが必要になるのか。設備も含めて新たなものが必要になるのか
顧客と会話するなかでは、我々が3DNANDで培ってきた技術を展開すれば、膜の種類が変わり、新たな膜種開発は必要になるだろうが、技術のエッセンスそのものは、バッチのALD技術で勝負していけるのではないかと考えている。そこで新たな技術開発が必要になる可能性はある。

ロジック半導体なので、例えば、枚数を少なくしても良いから高速で成膜できる技術を作っていきたいといったいろいろな要求が出てくると思う。顧客と会話しているなかでは、これまでやってきたバッチのALD技術にも興味を持たれている。

エンドユーザーもそうで、imecやIBMと会話を始めているが、そういったところからも非常に興味を持たれている。協力関係を強める計画ができているので、来年にはそれも含めて大きく動いていける。

―Rapidusが、パッチ式でなく枚葉式でやろうという話をしているようだ。枚葉式への対応を進めるのか。バッチ式の市場の将来性、成長性も含めて教えてほしい。
我々は今、バッチのALDという成膜の分野で枚葉に手を出す気はない。そこはもう完全なレッドオーシャンだと見ているのでやらない。ただ、我々の持っているトリートメントの技術は元々枚葉なので、それはかなりRapidusの役に立てる技術だろう。

ただ、Rapidusの小池淳義社長は昔から枚葉路線を志向しているのは十分承知している。バッチでないとできない部分、枚葉ではとても時間がかかって生産性が落ちる部分が出てくると我々は確信している。小池社長を説得してでも我々の装置を入れたい。

―今後、M&Aを通じて、他社と協力する考えは
M&Aに関してはネガティブなものは全くない。事業を展開するうえで、良い案件があればぜひ仕掛けていきたい。どれだけシナジーを持たせられるかが判断のポイントだと思っている。

―3~5年を長期と捉えているが、例えば10年後にどんな会社を目指すのか。例えば、グローバルでどんな存在になることを目指しているのか。3~5年で数字として3000~3300億円を目指すがそれほど伸びている感じではない。どんな規模の会社を目指していくのか。長期で聞きたい。
10年後を目指した時に、今のNANDもDRAMもロジックも、デバイスが進化していくことに変わりはないので、今の技術の延長線上で開発を続けていけばビジネスは続けていけると思う。ただ、そこだけに安住して良いとは思っていない。流行りだが、アドバンスド・パッケージのようなものがどんどん出てきている。そういった領域で我々の薄膜形成技術が活躍できる余地もあるのではないかと模索している。

将来的に、NTTがIOWNの話を積極的にしている。光の世界で我々に何ができるのか考えていかなければいけない重要なアイテムと見ている。今のシリコン半導体のなかでの成長は絶対止めてはいけない我々の基軸なので、開発はしっかり進めていく。

そのうえで、レガシーなロジックの世界では、従来からあるCVDも市場規模が膨らんでいく可能性を多分に持っている。そういった横の広がりでも顧客の増加を含めて取り組まなければならない。アドバンスド・パッケージのような世界で、新たな活躍どころを見つけ出していくことも必要だ。もっと将来的には光の世界で何ができるかを模索したい。

投資家の理解も得なければならないが、半導体以外の世界に飛び出していけるようであれば、ぜひポジティブに捉えながら進めていかなければならない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]