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上場会見:ノバレーゼ<9160>の荻野社長、二極化のなかで生き残る

6月30日、ノバレーゼが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の600円を1.67%下回る590円を付け、520円で引けた。完全貸し切り型の結婚式場などを運営し、婚礼関連サービスを全て内製化している。ポラリス・キャピタルによるTOBで2016年11月に上場を廃止していた。株式の100%を保有するポラリスが持ち株の半分を売り出し、売出株数の18%をIBJやアサヒビールなどの提携先が親引けした。荻野洋基社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

セレモニーの会社ということで、荻野社長を始めとする役職員は礼装にて会見に臨んだ。結婚式の延長線上にある事業にも力を入れるという。
セレモニーの会社ということで、荻野社長を始めとする役職員は礼装にて会見に臨んだ。結婚式の延長線上にある事業にも力を入れるという。

―初値の受け止めは
当初からずっと思ってはいたが、一喜一憂せず、私達ができることをしっかりとやっていくというのは元々理念として持っていた。今後しっかりと成長していくことで、良い状況に向かっていくと考えている。

―再上場に際しての抱負や考え方は
少し遡ってしまうが、2016年までは創業社長が経営してきた。そのなかで成長のかげりが見えてくる。時代の流れとともに、そういったかげりが見えてくると、世代交代をしながらさらに成長してほしいとTOBで非上場化して、ファンドの傘下に入った。そのなかで不採算店舗の閉鎖や人事制度の改革といったものを全て完了でき、今回の上場となった。

今後、資金調達を含め、成長戦略のなかで新規出店も必要になってくる。また、本当にありがたいことに順調に採用できているが、上場することによって、人材採用の優位性などもある。さらに成長していくなかで、新規出店や新たな投資、人材戦略を大きな軸として考えていく。

―ポラリス・キャピタルとの関わり方について、上場前の経営のサポートはどのようなものだったのか
かなりサポートしてもらった。以前に上場していた時には赤字店舗もけっこうあった。そういったところを全て整理した。

出店戦略も、創業社長の感覚、とてもカリスマ的な創業社長だったので、戦略のなかに感覚的なものがあった。そのあたりを数値化して出店基準を明確にした。また、100日プランなどを用いて、新規や受注率、来館動向の分析などもしっかりとサポートしてもらった。基本的にうるさく言われることはほとんどなく、良い関係を構築できていた。

―ウェディング業界の動向や今後の見通しは
婚姻組数は少子高齢化もあって右肩下がりになってくるだろう。ただ、それ以上に二極化が進み、生き残る会社と淘汰される会社に分かれる。我々は足元を見ると生き残る会社に入っていて、良いものを提供することによって顧客から必要とされる会社になると思っている。

出店戦略に関わってくるが、淘汰された会社の会場の買収案件が凄く増えている。これからさらに増えていくのではないか。自前の新店とは別に積極的に取り組むことで、現在1%程度のシェアを伸ばすことはまだできる。

―厚生労働省の統計では1~3月の婚姻件数が14%減となっており、コロナ禍後に回復したものがまた下がった印象を受ける。環境の厳しさをどう受け止めているか
コロナ特需はあった。延期した人が昨年頃に結婚式を挙げて、それが落ち着いて二極化してきた。コロナ禍での顧客はほぼ結婚式を終えたので、今は、もう特需はほとんどない。足元で受注した顧客に関しては、コロナ禍後の顧客になっている。当社はコロナ禍後であっても、事業が順調に推移していると理解してもらいたい。

―ブライダル市場では上場している競合が多いだろうが、差別化要素は
4社が大手と言われている。我々は完全貸し切りの1バンケット1チャペル。他社は2~3バンケットと複合バンケットがほとんどだ。貸し切りという点で考えると、我々との違いが出てくる。

あとは、会場のデザインが圧倒的に変わってくる。一般的な婚礼施設としてよくある白亜のような建物やヨーロピアン調の会場は十分に素敵だが、我々は、小バンケットかつシンプル、モダンで、20代後半から30代の人向けにターゲットを絞っている。他社ではもう少し若くなってくるが、ターゲット層が明確に異なる。また、婚姻周辺事業を内製化しているので、収益性の高さと品質の担保がメリットとなる。どのエリアに行っても高品質のものを提供できる。

他社は地方にほとんど出店していない。今回の宮崎も10年近く新店がなかったエリアだった。「結婚式を挙げるところがない」、「毎回同じところで参列する」というものだったが、「やっと新しい式場が来た」と非常に好調に推移している。そういった点が他社との大きな差になる。

―人材採用の注力領域は
大事にしているのは、顧客と向き合うスタッフだと思っており、現場の採用は創業当時から力を入れている。ありがたいことに中途採用で倍率が40倍ぐらいだ。コロナ禍でも給料の減額や人員のカットはしなかった。そうしている同業者もけっこうあったが、そうしなかったことで、V字回復の時にも人材難にはならずに、本当に良いサービスを提供してくれている。

人に関しては惜しまず、ハードルを下げず、かつ、入社後の研修もしっかりとやっていく。プランナーやドレス、レストランのスタッフは、これからも力を入れていく。

―今期の見通しについて。通期では最高益だが、第1四半期が終わった段階では赤字だが、どうしていくのか
我々のビジネスは閑散期と繁忙期があり、第1四半期は割と閑散期になる。例年赤字にはなるが、第2四半期以降は全て黒字になっているので、そこに関しては安心してもらいたい。施行に関しても、秋には順調に入っているので、足元の数字も非常に好調でしっかりと良い状況に持っていける。

―今後、中長期的な業績の伸びは
年間3店舗の出店で、1店舗当たり年間5億円の売り上げを見込んでいる。その後3店舗で約15億円というのを成長戦略の軸としていきたい。既存店に関しても、稼働が現在7割程度で、修繕やリニューアルも踏まえて、8~9割まで高めたい。

内製化している商品の外販に関しては、今までほとんど力を入れてこなかったので、営業も踏まえて外販していく。年間10~15%ぐらいを見込みながら成長を目指す。

―ブライダル業界が縮小傾向と言われているなかでの年間3店舗の出店について、どのような勝算を見込むのか
ブライダルは1兆4000億円市場と言われている。売り上げの寡占率は、上位9社で22%程度になっている。当社に関しては、マーケットのなかで1%程度なのでシェアを伸ばしていける。施行組数はこれから右肩下がりで推移すると予測されるが、マーケットの縮小以上に、二極化のスピードが上がると見ている。積極的に買収に取り組む。そうすることによって、元々箱があり、そこに人的資本もあるので、我々のリソースを加えながら成長していきたい。

―今後の出店戦略で、各都道府県に1店舗を基本に最大3店舗までの出店をすると聞いているが、その趣旨はどのようなものか
出店基準が25万人以上の都市と考えていて、そうするとまだ78都市ぐらいに進出の余地がある。そのなかで1都市に1店舗という考えではなく、マーケットサイズによっては2店舗でドミナントもできる。

―マーケットサイズに合わせて柔軟に出店していくのか
そうだ。例えば、名古屋は契約満了で1店舗を撤退したが、2店舗を出していた。大阪も2店舗運営していたので、今後もドミナントを考えている。

―株主還元の方針について
残念ながら今は原資がないので、今期、来期と結果を出して、2025年から配当で還元できるようにしていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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