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上場会見:クラダシ<5884>の関藤社長と河村CEO、お得・ワクワク・イミ消費

6月30日、クラダシが東証グロースに上場した。初値は公開価格の520円を53.85%上回る800円を付け、785円で引けた。フードロスの削減を掲げ、賞味期限が近い食品などを安価で買い取り、自社のウェブサイトやアプリで販売する。登録会員数は累計46万人で、そのうちの約2万人が有料会員(月額550円)。売上金の一部を環境保護などの社会貢献活動に寄付する。関藤竜也社長と河村晃平CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

1.5次流通市場の拡大について話す関藤社長
1.5次流通市場の拡大について話す関藤社長

―初値の率直な受け止めを
関藤社長:市場からの評価と真摯に受け止めたい。今後の事業成長に結び付ける。

―受け止めとしてはポジティブか
そうだ。

―上場の狙いは。いろいろな理由があるが何を優先したのか
主目的は社会的信用を得ることだ。フードロス削減をより加速させるためにも、透明性が非常に重要と思っている。
河村CEO:ソーシャルグッドカンパニーであり続けるというミッションの下に活動しており、社会性と環境性、経済性の3つを成り立たせる。上場してからも、この3つをしっかりと立たせたビジネスを展開・拡大したい。商品の仕入先であるパートナー側からの信頼獲得で、さらなる商品提供が膨らんでいくことを狙っての上場となっている。どちらを狙ってというよりは、社会性と環境性、経済性を成り立たせていく。

―上場するに当たって大変だったことは。東証がグロース市場の改革に向けていろいろと意見を募集している。特に大変だったことや課題だと感じるところは
上場に際して、継続した社会的な公器の企業になる観点では、ガバナンスを整えるために、この2~3年間力を入れて取り組んできた。もう1つは、事業としての成長を成し遂げられないとこのような形の場を得ることができなかった。この点では、社外のマクロ的な環境の変化に関して非常な難しさがあった。

―投資家は利益を厳しく見る。四半期ごとの決算発表などの煩雑さなども含めて、そういった課題にどう対応するのか
現状の制度に則った形では、機関投資家との対話を重視しながら進めたい。赤字に関しては、来期は売り上げの成長率と利益の確保を目指し、そのなかで成長戦略なども含めて対話していきたい。

―関藤社長に意気込みを聞きたい
関藤社長:クラダシは社会と経済の利益を同時に追求していくことがとても重要なので、引き続き、継続企業として会社を経営していきたいと強く思っている。

―関藤社長と河村CEOの役割は
昨年の6月に執行役員制度を導入した。私(関藤)が主に中長期的な将来を見据えた部分と、ステークホルダーの官公庁や自治体などへのロビーイングを中心に展開している。河村はいわゆるCEOの役割として業務を執行している。ガバナンスの強化と、業務執行のスピードアップのためこの形にしている。

―足元の物価高の影響について、プラスマイナス両面あり、値上げの広がりに関してプラス面では消費者の節約志向が強くなり利用が増える可能性がある。一方、メーカーは数量を絞り込む、定番商品を集中生産するなど仕入れが不安定になることもあり得るが、その両面をどう捉えるか
物価高やエネルギー高などいろいろな外的要因に、フードロスはあまり左右されない。むしろロスが出てくる傾向にあるという意味では、ビジネスには全てポジティブに作用していると見る。実際に消費者の“財布の紐”で言うと、我々の取り組みが注目される傾向にあるのもポジティブと思っている。

質疑に応えてKuradashiの今後の展開を説明する河村CEO
質疑に応えてKuradashiの今後の展開を説明する河村CEO

―利用ユーザーの拡大余地は
日本の世帯数まで増やせると想定している。
河村CEO:現状、46万人となっており、ユーザーのメインの層が40~50代の女性だ。この3年間で6倍近くまで数字が増えてきている。引き続きソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」の認知を拡大して、ユーザーを獲得していきたい。具体的な人数は差し控えたい。

―拡大の過程で、商品の仕入れとのバランスはどのようにするのか
ビジネスモデルは自律的な成長モデルで、最初の仕入れ、パートナーからの商品拡充がポイントになる。商品の拡充でユーザーにとっての魅力が高まる。商品ラインアップが利用頻度の向上に繋がる。マッチングの“リボン図ビジネス”であり、商品の拡充があってこそのユーザー獲得と、それに従って商品の獲得がさらに増える循環モデルになっている。

―フードロス市場を8500億円としており、なくなりはしないだろうが、企業自らの努力としてロスを削減していく面もある。流通も、3分の1ルールをなるべくなくしていく取り組みをしていくと、フードロス市場は小さくなっていく印象がある。今のクラダシの規模からすると伸びしろはたくさんあるが、日本の人口減少を勘案すると限界があるのではないか。市場が小さくなっていくことは良いことだが、成長モデルは
関藤社長:3分の1ルールを2分の1ルールに緩和しようという動きは、基本的に歓迎している。2011年の段階で農林水産省が旗振りをして緩和していこうという動きが、ここに来てようやく再度火がついた感じだ。すぐには移行しない、仮に移行してもサプライチェーンのどこからロスが出るかの場所が変わるだけで、大きなフードロス削減には至らない。

フードロスは、食料の3分の2を輸入に頼っていることを含めての国際的なサプライチェーンの構造上、絶対にどこかで出てしまう。マーケットが大きく縮小するとは見ていない。

一方、人口減少に関しては、フードロスの前に1次流通での売り上げと利益が縮小傾向にある。今回の成長戦略の1つでもあるが、ECで蓄積したデータを利用して、Storesでマーケティング支援やエシカル消費につなげたい。

―海外は
今のところは、国内が大きなマーケットと考えている。

―個人的な感想で恐縮だが、潜在顧客に関して、フードロスに関心のある人がこれ以上増えていくのか。どう掘り起こしていくのかもう少し詳しく聞きたい
河村CEO:当社のサービスの提供価値という観点で3点ある。1点目は、お得に買い物ができることだ。ただ、単純にお得な買い物を求めるということではなく、そこにいろいろなフードロス商品が出るということのサービスを体験する“ワクワク感”を提供している。最後に、社会貢献活動に参画できる。その3点を提供している。

ユーザーが社会的な意義を持って使っている面もあり、入口としてお得に買い物ができるからと利用していたら、「実は社会貢献活動にも資する」として、粘着性の高さを生むことができる。まだ市場が大きく、会員を獲得する領域が大きいと見ている。

―Kuradashiでの販売価格を決定する基準は
賞味期限の残日数や在庫数、市場の今の消費者の動きを総合的に勘案しながら、全て売り切れる価格帯で販売する。結果的に、平均すると市場価格から60%オフぐらいで提供できる。

―価格面だけでは、楽天市場などで安く商品を出す会社がけっこうある。最近はフードロス削減への貢献を謳うサイトもある。消費者から見ると競争相手が多い市場ではないか。サステナブルの意識が高い消費者をターゲットにしていくのか
フードロスに関しては、当社の主だった取引先はメーカーになっており、楽天などで出している物とは流通網が違う。

消費者から見たときの違いでは、当社はパートナーからの信頼やトレーサビリティ担保の一任を受けて販売している。フードロスの8500億円市場を削減する企業としては、独自のポジションを当社のみが築いている。

ユーザーは価格メリットが大きいだけで選ぶこともある。だが、“イミ消費”というサステナブルな活動を選択していきたいという消費者も増えてきているので、そこが選定基準の1つにもなる。また、それが顧客層の強さと捉えている。

―成長戦略をもう少し具体的に聞きたい。会員数や関与するパートナーをそれぞれ拡大させていこうとするが、サービスや事業拡大のためにどのような戦略を描いているのか
クラダシの1丁目1番地のビジネスは、KuradashiというBtoCのオンラインビジネスだ。成長モデルという形で、今回の上場でパートナーから信頼を得ることによってさらに加速すると考えている。

さらに、商品ラインアップが増えることでユーザーの利便性が高まる。自律的に伸びていくと見ているのが1点。Kuradashiは現在、在庫型とマーケットプレイスの2つのモデルを持っている。マーケットプレイス型は、メーカーからユーザーに直送で届けるモデルを取り、拡張性が高い形で自律的に成長できるため、強化していきたい。

これに付随して、Kuradashi Hubで、販売チャネルとしてのオフライン常設店を活用する。Kuradashi Storesでは、メーカー向けのサステナブルなブランド支援策の提供や、ECマーケティングのコンサルティングを展開したい。さらには、Kuradashi Baseという倉庫ビジネスとKuradashi Forecastという需給予測事業で成長戦略を描いていく。

―Hubはポップアップや常設店でのオフライン販売で、Storesは企業のオンラインとオフラインの販売チャネルを融合したOMO(Online Merges with Offline)サービスを支援するソリューションの提供という2軸のイメージか
Hubは、横浜市のたまプラーザでオープンしている常設店だ。Storesは、メーカーのブランディングやマーケティングソリューションを提供している。Hubを販売/情報チャネルとして活用する。Storesのブランディングソリューション提供としてHubを活用する。OMOなどの展開はStoresとの連携で行うと考えてもらいたい。

―売り上げと利益の中長期的な目標を聞きたい。例えば、2022年6月期まで赤字で、2023年6月期は第3四半期に黒字になって、第4四半期には赤字予想だがいつ頃に黒字化するのか
今期の赤字に関しては、前期にベンチャーキャピタルから調達した資金を使い、先行投資としてマーケティング費用への投資を計画通り進めていた。第1~2四半期に関しては赤字となっている。第3四半期は、当初の計画通り黒字転換している。第4四半期に関しても、業績予想を出しているが、上場一時金などがあり赤字となっている。今後はしっかりと利益を確保していく。

―どれぐらいの規模で売り上げや利益を増やしていきたいのか
明確な数字の明言を避けたいが、グロース市場に上場したという観点では、市場に求められる水準の売り上げ成長率は維持したい。

―KPIのARPPU(1人当たり平均購入金額)が、最近は8000円ぐらいで横ばいに推移している印象だ。単価よりも会員数を追っているのか
2年前は6700円ぐらいだったのが、7000~8000円と右肩上がりになっている。単価は安定的に3000円強となっているので、1ヵ月の利用頻度で、これまで改善してきているというのが、ARPPUの改善数値で見てとれる。

―定量的な成長イメージを持てるようなものはないのか。会員数や売り上げ、利益を開示しない。5~10年後、来期でも良いが何かないか
未来の数字に関しては差し控えたい。過去の成長というのは、これまで実績の通りで、今後はグロース市場ということで、成長を引き続き目指していくことだけ伝えたい。

―販促や広告宣伝が必要なビジネスとの認識だが、調達資金の使途は
フードロス削減のECサイトに関するUI/UX改善への投資や、成長の4つの柱でのシステム投資を検討している。マーケティングへの広告宣伝費投下は、今回の調達では予定していない。ただ、ユーザーの獲得では、CPA(顧客獲得コスト)をコントロールして、Kuradashiの成長速度に合わせて獲得していく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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