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上場会見:ノバシステム<5257>の芳山社長、業務知識とデータ人材

3月30日、ノバシステムが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1700円を50.88%上回る2565円を付け、2320円で引けた。生損保など金融機関向けに特化した情報処理システムを受託開発する。ニッセイ情報テクノロジーとSCSK、日本アイ・ビー・エムの3社の売り上げが7割を超える。飲食店の店舗運営支援や受付業務支援のクラウドサービスも提供する。芳山政安社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

従業員の10%以上がプロジェクトマネージャー・プロフェッショナルとしてプロジェクトを管理する能力を持つと話す芳山社長
従業員の10%以上がプロジェクトマネージャー・プロフェッショナルとしてプロジェクトを管理する能力を持つと話す芳山社長

―初値の受け止めは
公募割れせず、ほっとしている。

―ウォーターフォール開発がメインか。最近上場してくるシステム系企業がアジャイル開発を強く打ち出すことがある。業歴の長いノバシステムはどう見ているのか
平山雅浩取締役:基本的にはウォーターフォールの数が多い。特殊なプロジェクトや小回りを利かせながら進めたいものは、アジャイル開発を選択する。顧客が選択した開発形態で、我々も一緒にやっていく。

―どちらにも対応できる
そうだ。

―人口が減少するなかで生損保業界の仕事をしているが、市場そのものの先行きは
芳山社長:50年先は分からないが、2030年をターゲットと見た時には、現在のシステムを再構築しなければならない状況で、縮小するとは考えていない。

―勘定系のモダナイゼーションは、相当な市場があるのか
ある。三菱UFJ銀行も発表したが、約1400億円のプロジェクトがスタートする。

―例えば3メガバンクも同程度の規模でやらなければならないのか
そうだ。銀行だけでなく、システムがより古い生保でも同じ現象が起きていて、この市場はまだまだ伸びていく。

―基幹システムか
そうだ。

―それをニッセイ情報テクノロジーと一緒に進めているのか
ニッセイ情報テクノロジーは、日本生命の100%子会社だ。システム会社で、日本生命の案件がここを通じて出てくると感じている。

―基幹システムのほかに、例えば、生命保険加入者が自分のIDでホームページに入ったりするものを作るのか
川上秀樹副社長:必ずしも基幹のみならず、マイページ機能など周辺系や情報系も担当することがある。

―モダナイゼーションと一緒に進んでいくのがDX化か
芳山社長:一緒というよりも、モダナイゼーションをやりながら、その一部としてDXという新しい案件が出来上がってしまう。

―DXというと漠然とし過ぎてイメージが湧きにくいが、生保や金融業界向けのDXとはどのようなものか
加藤博久取締役:例えば、データサイエンティストが行うデータ分析だ。特に大手生保は、過去から莫大なデータを持っている。それをモダナイゼーションなどとともにどう活用していくか、データサイエンティストが必要になる。日本生命も、今年の組織再編でDX推進室を設けて進めようとしている。我々は技術者を養成している段階にあり、そこに注力していく。

芳山社長:福岡銀行などの案件に携わっている。DXは、データをどう管理し、そこからどう収益を上げていくのかというモデルだ。それが新しく発生する。この技術はデータ分析を中心とするので、従来型のシステム技術とは異なる。Pythonの技術や統計学などがなければ分析できない。案件が増えていくと見ている。

―データサイエンティストの採用は理系が中心か
社内で採用した理系の人間を3年前から養成している。毎年10~20人ぐらい育てている。

―新卒で情報系の人が必要なのか
理系も文系も入ってくる。文系は勘定系に配属し、理系はデータサイエンス分野に配置する。新卒でいきなりDX案件のために養成している人員もいる。

―今期は11%の売上高成長、8%の営業利益成長率だが、中期的にはどうか
同様かそれ以上の伸び率を想定している。

―売り上げで10~12%、利益率は8%程度か
営業利益率は10~12%ほどだろう。請負型と二次請けの案件があり、今は45%が請負型だ。その比率を上げることで利益率が改善する。請負型のほうが単価が高く、自社で開発でき、利益率が高くなる。全体を請負型にシフトして利益率を確保できる。

―45%をどのぐらいにするのか
半数以上、60%程度と見ている。

―2019年から2021年にかけての売り上げの変動はコロナ禍の影響か
売り上げは横ばいだが、その8割をキープでき、下がることは少ない。コロナ禍の影響と、2000年に受注した案件の不採算プロジェクトが発生してしまったのが大きかった。

原因は、案件開始の時からコロナ禍が始まり、当初のコミュニケーション不足で要件定義のつまづきが尾を引いた。現在はその影響はもうクリアしたが、要員を全て充てたため新規案件が取れず、売り上げは横ばいで利益は減った。

―保険か
加藤取締役:保険ではない。

―金融か
金融でもない。
平山取締役:公共系だった。

―最近の金融領域では、サービスとしての金融を提供する流れがある。一方、従来のシステム会社も並立しているが、事業環境や業界動向をどう見るか
現在の主取引先7社の外注費を推計すると、昨年は約5000億円あった。我々はこの5000億円がターゲットとしている。業界がどうというよりもメインのクライアントの数字で十分ではないか。

業界から見ると、自動化が進んでいく。我々が関わる保険・金融業界からシステムはなくならず、ますます開発が進む。それと同時にDXで変化していく。手掛ける案件や業界に対してはあまり心配していない。特化しているので他業種は分からないが、この業界は多分なくならず、そのような場合には日本が沈没するだろう。

―ChatGPTが流行しており、システム開発にも影響があると聞くが、どう見るか
開発への影響は、まだないのではないか。いずれプログラム開発は完全に自動化すると思うので、業務知識に力を入れている。この部分はChatGPTでは無理だろう。

―必要になる人材も急激には変わらないのか
2030年ぐらいまではあまり変わらない状態だ。唯一、DX人材としてデータサイエンティストのニーズが非常に強まると見越している。日本生命や銀行で、従来のレガシー・システムとは別にDX部署が出来上がり、新しい案件が出てくる。

それらに対応するには、業務知識とデータサイエンティストなどDX人材が合わさって初めてDXが完結する。業務をまず分析して、そのなかでデータを技術に落とし込むことができるかが肝要だ。我々は業務知識を保有しているので、DXのニーズに合う人材が増えてくる。

また、データサイエンティストだけでなく要件定義ができる人材が再び注目されている。データサイエンティストに重点を置いていたが、各社が、上位のSEクラスの人材の必要性を見直しており、米国でもデータサイエンティストの単価は下がりつつある。上流工程を優遇する動きがある。

―クラウドサービスの売上高割合は2%で伸びしろがあるが、飲食店向けのシステムは他社もやっている。厳しそうだが
芳山社長:2010年に開発して売り出し、その時はシステム的に我々が優位だった。良いものは売れると考えていた。しかし、今は販売力の勝負だと痛感しているので、販売代理店政策を取っている。

飲食店は、コロナ禍で人手が非常に不足して再度募集できない状況で、事業環境的には良い。同業社も同じものを作っているが、小さいソフトハウスが小規模に行っているのが大半だ。大手は自前で開発しているので、我々は複数店舗ある飲食事業者に販売する。飲食店向けの機器を販売する代理店に頼むので、市場規模はまだある。

また、「アイウェルコ」という受付システムを昨年から販売している。会社の受付の電話機の代わりにタブレットを置いてもらうだけで、その前に来訪者が立つと受付が完結する。来訪先担当者が決まっていたら、その人に連絡が直接届くシステムだ。同業他社は顔認証を行っていない。QRコードでも音声でも受付できる。AI技術が蓄積されていて、音声を識別し応答する。

―AI技術は買ってきたのか
加藤取締役:買ってきたわけではない。AI部隊のメンバーが自分たちで研究して全部作った。ほぼ独自技術だ。

―最初は顔を登録しなければいけないのか
芳山社長:我々が出資する会社がベトナムにあり、画像処理が得意だ。そこと共同開発して基本的な顔の識別の考え方を確立させて日本で商品化した。顔の特徴を140ぐらいのポイントを一瞬で判断して識別する。今はNECや富士通が最もよくできているが、コストが高過ぎて、一般のユーザーが利用するのは非常に難しい。我々はそれを安価で使えるようにしていく。

―例えば、私が初めて訪ねた時にはどうか
平山取締役:事前に顔を登録してもらうこともあり、その場で登録することもできる。
芳山社長:飛び込みで来たら音声で受け付けが始まる。

―株主還元の方向性は
2年間は内部留保して、3年目からは約30%の配当を基準にしたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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