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上場会見:Globee<5575>の幾嶋社長、普遍的な英語力

14日、Globeeが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1150円の131.83%である2666円を付け、2380円で引けた。英語学習のためのAI学習プラットフォーム「abceed」を手掛ける。単語学習や問題演習、シャドーイング、ディクテーションなどの機能を備え、AIによる学習データの蓄積に基づくレコメンド機能も持つ。幾嶋研三郎社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

コンテンツに関しては、ハリウッド作品のライセンス獲得の感触が良く、また、利用者のユーザビリティーの向上を続けると話す幾嶋社長
コンテンツに関しては、ハリウッド作品のライセンス獲得の感触が良く、また、利用者のユーザビリティーの向上を続けると話す幾嶋社長

―初値や終値の感想は
非常に期待を持ってもらったという印象を持っている。引き続き、寄せられた分の期待を超えるパフォーマンスを出していくのが、私の責務として遂行していきたい。ただ、あくまで初日ということもあり、そこは何とも言いがたいので、引き続き見ていきたい。中長期的に成長していく。

―有料会員が6万5000人ぐらいだろうが、将来的にはどの程度まで増やしていきたいのか
今期の成長なども踏まえると、10万人という規模が見えてきている。次の飛躍として、100万人規模をベンチマークに置いている。100万人というと、日本国内で100万人以上の有料会員がいる教育サービスは本当に限られている。ベネッセホールディングス<9783>の、こどもちゃれんじや進研ゼミが挙げられるが、着実にその規模感を出していくには、やはり100万人が1つのベンチマークになってくる。そこは子供から大人まで使うサービスを実現することで達成できるのではないか。

―何年ぐらいで100万人になるのか
10年以内に達成したいという目標だ。

―ChatGPTをはじめ生成系AIがブームだが、サービスへの影響はあるか
大きく2つある。当社はオリジナルの教材を開発している。例えば、映画に付く語注・解説であったり、TOEIC向けの問題集や単語帳を開発している。ChatGPTを活用することで、ファーストドラフトのようなコンテンツを作ることに工数があまりかからなくなってきており、業務効率の改善に大きく貢献している。

また、ユーザーへの提供という観点では、今後、英会話の機能のリリースを予定している。abceedを使った英会話学習もAIを活用してアップデートすることによって、例えば、オンライン英会話や店舗型の英会話教室へ通っていた人にも、「もうabceedでいいじゃん」と思ってもらえるクオリティのものをリリースしていきたい。

―デュオリンゴ<DUOL>が、今年の3月からChatGPT4.0の機能を取り入れているというニュースがあったが、Globeeではレコメンドなどに使われるAIエンジンの開発を内製化しているという。他社のプロダクトと比べて、AIを使って競合優位性となるものは
内製しているAIの要素としては、学習者の予測スコアを算出することと、そのスコアをいかに効率よく上げるかということで、問題のレコメンドエンジンの部分がAIの要素になっている。一方、ChatGPTに関しては、言語生成という点では、AIの種類が若干違う。

自社のAIに関しては現在、⁠高い水準でレコメンドやスコア予測をできている。その点では、TOEICにとどまらず、大学受験でも、TOEFLやIELTSなどいろいろな分野で転用できると考えており、伸ばしていきたい。

―プラットフォームを展開すると利用者の学習データが集まってくる。レコメンドの精度向上以外に活かせる場面があるのか
英語教育にはいろんな分野がある。教科書もそうだし、受験英語や英検、TOEIC、英会話などいろいろなジャンルがあるが、それがある意味ぶつ切りにされてしまっている。TOEICで900点を取れても英会話ができない、受験英語ができたのにTOEICやTOEFLはできない。ぶつ切り状態の現状の教育システムを、AIを活用することで、「これができるとTOEICでこれもできるようになる」といったつながり方を、しっかりと定義していくことで、英語力をより普遍的なものとして捉えて、その力を高めることでどの分野でも学習できる世界を作りたい。

―今はその土台を作っているのか
そうだ。受験英語で学んだ人が、TOEICのどの問題で正解できるのか間違えるのかというデータがどんどん集まってきているので、そういったところから、英語力というものの、そもそもの定義を当社内で独自に進めていきたい。

―学校への導入が進むとのことだが、現状、公立や私立などどういった属性の学校に入っているのか
中学校については、私立が基本的な導入校になっている。公立は自治体が相手なので、まだ営業できていない状況だ。一方で、高校については、私立や公立を問わず幅広く導入してもらっている。エリアに関しても、都道府県ごとにそれぞれ営業が付いており、(契約が)取れた学校では利用されている。

―法人向けプランに関して、どのような業種・規模の企業が利用しているのか
幅広い法人に導入してもらっており、英語教育に社内のリソースを割いていこうと研修を行っているのは、大企業が中心になってくる。加えて、官公庁、具体的には外務省が導入しており、中学校や高校、大学など法人のジャンルは幅広い。

abceedは教材の要素が非常に強いので、これまでのカリキュラムに組み込みやすい。そういった点で、幅広い法人に利用されている。

―翻訳の技術が進んで手軽になることで、英語学習のニーズが減衰するという議論も一部にはあるが、どう見るか
むしろ英語ができることがより簡単になっていく時代になる。補助器具を使って英語を理解できるイメージだ。例えば、Zoomなどで会話している時にも、自動で字幕を付けたりすることができるようになってくる点では、「英語も慣れたらできるよね」という世界に変わっていくのではないか。

逆に言うと、そういったツールで読めば、ツールに翻訳してもらえば分かるが、「英語はそもそも全くわかりません」という状態だとけっこう苦労することは、引き続き変わらないと見ている。ハードルが下がることで、英語を習得するのが「こんなに簡単になったんだったらちょっと習得してみよう」と考える学習者は、むしろ増えていくのではないか。

―単価の安さも強みだが、サービスの充実に合わせた単価上昇をどうするのか
単価は一定程度上げていく方向ではあるが、あくまで手の届く範囲というところで、マスマーケットプロダクトだと思っている。一部の高所得者が受けられる高品質なサービスを作っても、日本人は誰でも英語ができるという未来は描けない。そういった意味では、誰もが手にできる価格帯で、それをしっかりとやり込めば英語をある程度できるというサービスを目指していきたい。

―英語以外の言語への展開の可能性は
10年以内に100万人の有料会員基盤を、という話をした。これは子供から大人まで幅広い層の人々がabceedを当たり前のように使っている未来を描いているが、そうなった際には、ある程度バーティカルに、英語教育という分野では、大きなプロダクトを作れたらと考えている。国内では、多教科、多言語の展開は、そのタイミングで進めているのだろう。将来的には言語や教科を問わず、幅広い分野での学習支援を行うプラットフォームを目指していきたい。

―英語以外の学習領域も視野に入るのか
大学受験などはAIとの親和性がかなり高いので、圧倒的に効率よく対策ができるサービスなども今後手がけていきたい。

―海外展開のイメージは
当社の特徴は、コンテンツプラットフォームであるので、グローバルコンテンツを獲得して、例えば、韓国の教育教材や英語教材といったライセンスを獲得して韓国展開を進める。これは韓国にとどまらないというイメージを持っている。

また、映画については、まず日本国内でプロダクトマーケットとして適合させる必要はあるが、それを達成できると、一気にグローバル展開が可能と想定している。ライセンスもグローバルに展開する権利はすぐに交渉できるので、着実に日本で成功させて、世界に展開していくイメージだ。

―国内外を問わず意識する競合はあるのか
当社の事業モデルの構築は非常に大変な時間がかかる、ライセンスを獲得して実装していくことは大きなハードルになるので、世界的にそれをやっている会社は、今のところあまり見えていない。英語教育や語学教育という観点ではデュオリンゴなどがあり、学習者数や利用回数といった規模はベンチマークにしていきたい。

―AIに関する質問が相次いでいるが、具体的な投資額は
指田恭平CFO:現在公表している業績予想が2023年5月期までなので、中長期的な投資戦略は公表していな。具体的な数字は開示できない前提で言うと、基本的には人材、AIを含めたソフトウェアの機能開発、コンテンツの機能開発にかかる人件費を中心とした開発費用への投資で、数億円単位で毎年集中的に支出していくのは、ここ数年変わらないが、向こう数年で、どんどんやっていく。

―株主還元について
数年は、少なくともソフトウェア予約やコンテンツ、営業への成長投資を優先したい。キャピタルゲインというか企業価値の向上をもって株主に対して報いたい。だいぶ先の話になろうかと思うが、成長フェーズに応じて配当や株主還元について、追加的な施策も打っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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