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上場会見:サークレイス<5029>の佐藤社長、内製化支援で価値を生む

12日、サークレイスが東証グロースに上場した。初値は付かず、公開価格の720円の約2.3倍となる1656円の買い気配で引けた。同社は、パソナグループとTquila Internationalの合弁会社のパソナテキーラとして2012年11月に設立。Salesforceなどの導入に向けたコンサルティングやシステム開発、カスタマーサクセス、自社開発の情報共有ツールである「Circlace」などのSaaS製品を提供する。顧客の従業員向けに教育サービスも行う。佐藤潤社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

拡大の速度が速く余地も大きいSalesforceの市場にまずは注力すると話す佐藤社長
拡大の速度が速く余地も大きいSalesforceの市場にまずは注力すると話す佐藤社長

―上場の目的は
社会インフラや、個客の重要なプラットフォーム構築をこれまで以上に積極的に推進したい。そのために、まず公企業としてしっかり知ってもらう。それから社会的な信用や、人材獲得の推進を目指してIPOを選択した。

―目論見書には、一般的にIT プロジェクトの半数が失敗するとの記載があったが、サークレイスでは、どのぐらいの割合で成功させることができるのか
当社の成功の指標だが、契約時に提出した見積金額と納期をしっかり守れたかをチェックしている。昨年度の前の3年間は100%で提供できている。アジャイル開発を得意としており、主に約3〜6ヵ月の契約期間でプロジェクトを回す。顧客のシステム投資の目的や効果との乖離が出ないように、密なコミュニケーションを取りながら進め、成功率を非常に高く保てている。

必ずプライム契約で(受注し)、下請けはやらない。請負契約は締結せず、必ず顧客と対等なパートナーシップを組む準委任契約で進める。加えて、短期のシステム投資だけでなく、中長期の付き合いができるような顧客やプロジェクトをしっかりと見極めて成功率を高めている。

―その際に顧客との接点を密にするために使うのが自社開発のCirclaceというプロダクトだが、個人投資家のなかにはSlackとどう違うのかという認識もあるようだ。プロダクト自体の競合の認識などを聞きたい
Slackの話が出たので、例えて言うと、Slackや、プロジェクト・タスク管理のBacklog、Google DriveやOneDriveのようなストレージツールなどの機能が完全に1つに統合されていると理解してもらいたい。さらに、FAQの機能やインシデント管理など機能は豊富にある。

―現状では完全に競合するプロダクトが市場に存在しないのか
SaaSのプロダクトを利用してもらう際に、これまで数件の商談をしているが、Teamsを使っていて実現できなかったことをCirclaceで構築するケースがある。これはTeamsを使わなくするという話ではない。当社でもTeamsとCirclaceを併用している。今、完全に競合する製品が日本では出てきていない。

―Salesforce導入などのコンサルティングを行う会社が複数上場しているが、正面から競合する会社はどこか
よく競合他社と言われるが、我々は同業他社と呼んでいる。実際にマーケットの拡大も早く需要が旺盛なので、ほとんど競合しない特殊な状況だと思う。ただ、そのなかでも、上場している会社では、テラスカイやフレクト(が競合)だが、得意な業種・業態、特色が出てきている。我々は今、製造業を中心に付き合いをしているし、他社では、金融が得意であるなど、需要が多いのである程度棲み分けができているという感覚だ。

―カスタマーサクセスの顧客が70~80社いて、その9割が他社の開発案件によるものを扱う。普通に考えると導入支援をした会社が引き続き保守を担うが、なぜなのか
システムを運用・利用している企業に、システムをしっかりと理解している人が少なく、いわゆるベンダー丸投げのような状態になっている。加えて、作ったベンダー側のほうも、担当者が変わり、退職することで、作った経緯や中身の設定が分からない状況に陥るケースも非常に多い。それによって完全にブラックボックス化してしまう。

我々が依頼を受けて中身を紐解き、サービスプラットフォームのCirclaceに、設定も含めて情報を落として、顧客が(自律的に)運用できるプロセスを作っていく。それがこれまでの経験から強みになっているし、効率化できている。二度とブラックボックス化しないように、設定を変えた理由や経緯が全部そこに残っているので、顧客のなかでその後に担当者が変わっても、しっかりと引き継げることが喜ばれている。

―保守まで手掛けるからストック型収益になっているのか。また、Circlaceを導入した顧客に関しては、ずっと伴走するのか
顧客の要望次第だが、目指すところは顧客のなかで人を内製化してほしいので、その支援も積極的に行っている。

それによって、契約が途切れて売り上げが減るのではないかという質問をよく受けるが、本質的には、顧客のなかでしっかり使われることでシステムが価値を生むと思う。その成功がほかの顧客に伝われば、我々に支援の依頼が来ると思っているし、実際にそのような話もある。積極的に内製化を支援する。

―プラットフォーム事業が全てストック型収益になることではないと思うが、実質的なストック型収益はコンサルティングも含めて、現状では全体で何割ぐらいか
35%ぐらいだ。カスタマーサクセスは、6ヵ月や1年の契約が主になるので、その間をストックと考えている。

―人員を積極的に増やさないという話だが、どのような形での増加を目指しているのか
来年度の終わりで290人弱の計画になっている。その内訳は、今年は新卒が4月に9人入社して、それ以外は中途だ。まずコンサルティングサービスに従事するのは、20人ほどがSalesforce関連で、10人強をAnaplanの要員として増やす。あとはSaaS関連の従業員もいる。

―全体の社員数に関してどのような増加を目指すのか
全体の社員数が2023年3月期末の予定で、290人程度だ。

―2022年3月期末は
232人だ。

―これまでよりも大きく増やす印象だが、かなり増やすのか
まだ労働集約的な部分が多い。

―再来期以降はどのようなペースになるのか
同じペースで、もしくはそれ以上に伸ばしていきたい。

―60人ぐらいのペースか
そうだ。

―教育関係の事業を立ち上げるとのことだが、どのようなことを計画しているのか
パソコン(の基礎)を教えるということはさすがにないが、例えば、SalesforceやAmazon(AWS)といったクラウドの技術を使うサービスに従事できる人材を半年程度で育成するスクール型の事業を検討している。

我々は、IT未経験の人材の育成を10年間ずっと行ってきた。最初は半年ぐらいかかっていたものが、2ヵ月ぐらいでできるようになってきた。とはいえ、事業のなかでOJTも含めて短期間での育成が可能になっている。スクール型ではもう少しじっくりと進めたほうがいいと考えており、来年度初頭ぐらいに一部のサービスを開始できるように進めている。

―スクール型の授業で育った人材は、どういうところで活躍をする想定か
企業のクラウドサービスを活用するIT部門や、事業部門でもそれらをメンテナンスするような人々が即戦力として従事できる教育サービスに取り組みたい。

―派遣をするイメージか
必要とあれば、人材紹介のような形で企業に紹介することも検討している。

―基本的には人材紹介もあるが、そこでスクールのような事業をして、その後個人がIT人材不足を助けるという意味の事業か
個人がスクールに入ってきて、自分でスキルを高めて転職する、あるいは企業から受託して人材の再教育を提供できると見ている。

―サーキュラーエコノミーの実現・実践を掲げているが、どのようなことを考えていて、業績に与えるインパクトをどう考えているのか
まだ具体的にコミットできている状況ではないが、ソサエティ5.0やサーキュラーエコノミーといった大きな目標にチャレンジしていくことを挙げている。具体的に進めていくものでは、製造業にフォーカスしていると言ったが、製造業は今後、CO2の削減や資源の入手に大変困る世の中になると思う。

その部分を顧客と一緒にデジタルプラットフォームを構築することで、資源を循環させることによる効率化や、SDGsへのコミットメントなどを実現するところから、大きなプラットフォーム同士のがながるような世界に向けて、技術を高めていきたい。

―資源を効率的に循環させるという時の資源とは、ヒト・モノ・カネを問わずということか
製造業では、今は基本的に資源を仕入れて製造して、保守はするが廃棄する世界だと思う。今後、稀少な資源は製造業そのものが、資産管理まで含めて行っていく必要があるかもしれない。そうなった時に、販売したら終わり、廃棄ではなく、例えばサブスクリプションのような形で利用して、ある時期になったらそれを再生していくことも必要になるかもしれない。その場合には、完全にデジタルなプラットフォームが求められると思う。研究も含めながら実力を高めて実現に向けて進んでいきたい。

―まだ中期経営計画を定めていないと思うが、中長期的な業績目標のようなものは
中継はもちろん立てて取り組んでいる。MM総研が国内パブリッククラウド市場は2026年までに平均23%で成長するとしており、IDC Japanはデジタル関連のビジネスが年率30%ぐらいで伸びるだろうと予測している。こういった数値を参考に、25%前後の売上高成長を視野に計画を立てている。年によって若干変わるが、そのぐらいの成長をしていきたい。

―調達資金の使い道を具体的に知りたい
工藤正通CFO:人員増強や借入金の返済、オフィス移転、IT関係の増加費用、それから教育・採用で人育成して強くしていくこと、広告・宣伝といったとこりに活用していきたい。

―SaaSの開発にも投資するのか。宣伝費も考えているとのことだが、それは販売を拡大していくための成長投資として調達資金を活用する理解でよいのか
佐藤社長:その通りだ。ひと通りの開発は終わっている。

―大株主が売り出しを行わないが流動性は
工藤CFO:オーバーアロットメントがあれば、さらに余裕が出てくるが、仮に25%を切ってしまうような場合には、必要に応じてパソナやテキーラに協力してもらえるという話はある。

―大株主による過度の売り出しで株価に影響はあるのか
中長期的な保有でサポートしてもらえると考えており、そこは大丈夫だと思う。パソナやテキーラは、基本的には我々に対して協力してもらっており、どんどん売っていく株主ではない。

―ROEをKPIとして見ているのか
利益率が改善しており、売り上げと利益、ROEの拡大で株主価値の増大に努めていきたい。株式会社として意識しなければならない部分と思っている。調達資金を利益の拡大に使うことで、ROEを拡大させたい。

―株主還元の方針は
佐藤社長:当面、グロース市場というところもあり、積極的に成長に投資しいきたい。その先、スタンダード市場も視野に入っているので、将来的にはしっかりと株主に還元していくことを目指している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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