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上場会見:フルハシEPO<9221>の山口社長、社会インフラの一部に

21日、フルハシEPOが東証スタンダートと名証メインに上場した。初値は公開価格の1140円を52.02%上回る1733円を付け、1606円で引けた。同社は、製材端材のリサイクル処理受託と、それらを原料に木質リサイクルチップを作るバイオマテリアル事業や、木製パレットを扱う環境物流事業、建設副産物の回収・リサイクルを手掛ける。山口直彦社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

バイオマテリアル事業では100%、資源循環事業では90%のリサイクル率になっていると話す山口社長
バイオマテリアル事業では100%、資源循環事業では90%のリサイクル率になっていると話す山口社長

―初値が公開価格を上回った
1733円という非常に良い価格が付いた。当社の社会的責任がますます重要になり、市場の皆さんの期待に沿えるように事業を発展させていこうと強く感じている。

―なぜスタンダードを選んだのか
創業75年でかなり社歴が長いが、一定の成長を続けてきて、東海地区では木質リサイクルのシェアナンバーワンという実績を挙げている。静脈産業として、廃棄物を受け入れる場合、当社側の都合でストップしたり受け入れたりするのではなく、安定的に受け入れ、製品化する社会インフラの一部になりつつある。

その時に、今の状況で成長を止めるわけにはいかない。ヒト・モノ・カネ・情報の全てがまだまだ不足していると思い、株式公開が必然な条件として出てきた。発展し、社会で必要とされるサービスを安定的に供給できる体制を確立するために適切ではないかと思い、公開を選んだ。

―新市場にどのような期待があるか
この20年、日本経済が停滞しているという考え方があるが、我々は企業人として、経済を発展させながら投資なくして成長はないと考えている。当社はベンチャーではないのでグロース市場に上場するものではなく、スタンダード市場を選択した。

我々は資源循環や持続可能性といったテーマで事業を展開して、今回もSDGs-IPO のセカンドパーティー・オピニオンを日本総合研究所者から受けた。調達資金の全額をそのような設備投資に活用する。さらに証券市場では、国内にある資源を有効的に活用していくうえで、一般投資家を含めて資金が必要という期待をしている。

―木質100%のリサイクルに注力する競合はいないのか、オンリーワンなのか
必ずしもそうではない。木材業からスタートして木質を扱っており、オンリーワンというわけではないが、東海地区ではエリアナンバーワンで、木質リサイクル協会を全国の各地区に作っている。かつては中小が乱立して価格競争をして業界の発展が進まなかったが、協会を設けて話し合いの場を作った。それによって業界が整備され十分に話し合いのできる環境の下に適正な競争をする業界に成長することができた。我々はパイオニア的で、リーダーとして業界の皆さんから支持を得ている状況になっている。

まだ発展させていこうと思っているので、M&Aも含めて業界全体の発展のみならず当社も発展させていく。

上野徹取締役:当社のように木質に特化した上場企業はないと思う。ただ、非上場企業のなかにはある。当社と同様に大きなシェアを占めているのは1社ほどで、残りはシェアが小さい零細な企業が多い。

―ハウスメーカーや建設会社からリサイクルを受託するが、現状の受託先の数と、今後広げる目標は
山口社長:現在、関東・東海エリアで、およそ五千数百社の受託先がある。当面の目標としては、その倍程度の数字を計画していきたい。

―大手が中心なのか、小さい事業者が多いのか
基本的に元請け企業やゼネコンと元請け契約をするので、住宅メーカーや建設会社、製造業でも一定量の規模を持った企業を中心に受託契約を結ぶ。その後、地域の優良企業などに展開している。東海・関東エリアではかなりの割合の企業と締結が進んでいる。そういった企業と当社の対応エリアがまだ一致していない部分があるので、新規エリアに進出するという恰好でエリア拡大を進めている。さらに受託量を増やしていく。

―バイオマテリアル事業での鉄くずの売り上げは全体のどの程度を占めるのか
上野取締役:5%程度だ。

―今、相場が上がっていて、今後落ち着いた時に…
上がっているのは収益的にはプラスになっているが大きな動きではない。

―グループ会社のフィニティが自社の物流を担っているとのことだが、最近の燃料価格の高騰は利益にどのように影響してくるのか
山口社長:燃料の高騰は、ウクライナ危機以降ますます激しいが、既にガソリンなどに関しては、2年ほど前から価格が上昇していて、顧客に原価の内容を説明して、商品価格を見直してもらっている。それを上乗せした形での販売を行っているので、収益にはマイナスにならない価格を設定している。

―国際情勢の話題が出たが、一時ウッドショックというような話があったと思う。そのような事柄は、中長期的にどのような影響が出てくるのか
ウッドショックに関して言えば、建設に若干の遅延が発生した。建設住宅価格はその分は上昇している。また、ロシア材の入荷が今後滞ると言われており、針葉樹合板などで住宅の建材市場に大きな影響が及びつつあるところだ。

しかしながら、当社で資源化する木材は10~20年前に入荷した、あるいは日本の山林から調達している材料であり、データで注視しているが、入荷ベースではほとんど影響がなかった。建設現場の工事の減少で何らかの影響が出るだろうかと注視していたが、意外に影響が小さかった。

―今後の見通しは立てにくいのか
例えば、バイオマテリアル事業、木材関連の再資源化、資源循環の住宅産業では、住宅の着工ペースは安定していて、今後も年間約90万戸で推移する見通しが立っている。一方、国内では空き家の問題が発生している。統計の見通しでは、2038年には2200万戸の空き家が発生する。同年の総戸数は7200万戸だがその約30%となる。その建屋の有効利用やスクラップアンドビルドが進んでいくと考えられており、そうすると(再資源化される木材の)発生量は穏やかな上昇基調にある。バイオマテリアル事業の原料となる木材の発生量は、過去5年を見てもずっと上昇している。

―KPIについて
上野取締役:指標としてポイントに置いているのは、バイオマテリアル事業が主体なので、そこでの循環量などを安定的に維持できているかが最も重要だ。成長していくためには、基本的には入荷の製造ができる量だけではなく、供給する販売先も合わせてバランスを取らなければならない。それに基づく今後の投資計画をきちんと見ていくことが一番重要だ。

―ROEの目標はあるか
利益目標について何%と提示するのはこれからだが、株価も今日は初値が付き、そのようなことに絡んでくるので、しばらくは市場動向を踏まえて投資家に当社の計画を発表できる機会を設けていくことができればいい。

―株主還元の考え方は
一般投資家を含めて、我々の事業をよく知ってもらい、当社のファンになって長期に保有して見守ってもらい、確実に応えていくような株主との関係を作っていきたい。

―代替燃料の開発や農産物の水耕栽培など、これまで手掛けていなかった事業を展開するようだが、それらの長期的な見通しは
今までにない事業をいろいろ計画しているが、今の段階では公表することはできない。そのときにプレスリリースすることになると思う。計画的なものは未来までずっと描いているが、この段階では発表を憚らざるを得ない。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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