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上場会見:マテリアルグループ<156A>の青﨑CEO、情報発信戦略を設計

マテリアルグループが29日、東証グロースに上場した。初値は公開価格の1180円を8.05%下回る1085円を付け、1030円で引けた。マーケティング関連の6社を傘下に置く持ち株会社。各種メディアやSNS、イベントなどを通じて新商品やサービスの認知度を高める。大手企業を中心にブランド戦略を支援するPRコンサルティングが売上の85%を占め、デジタル広告の配信代行や、スタートアップ向けPRプラットフォーム事業も手掛ける。アドバンテッジパートナーズが上場前株式の99%を保有する。青﨑曹CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

情報環境の変化によって、企業が一方的に伝えたいことを伝えるのではなく、企業と生活者の間にある共通の興味関心事を紡ぎ出すことがより重要になり、それを得意としていると話す青﨑CEO

―初値の受け止めは
投資家からの評価と思っているが、初値だけというより、グロース市場でこれから投資家の期待に応えていく初日になっているので、初値に一喜一憂せずに、事業成長に向き合っていきたい。

―2020年以降の4年間の成長が著しい。コロナ禍と重なるタイミングだが、成長の理由は
コロナ禍でも、企業が情報発信をやめることはなく、いかなる環境でも、どのように情報を発信していくか戦略を設計するのが当社の強みだ。2020年には多少の影響を受けているが、広告市場全体と比較すると圧倒的に軽微だった。

直近の成長に関しては、経営管理の高度化や買収、オーガニックの成長などを含めて複合的な要因で成長を実現している。今後も、高い成長率を引き続き維持できるように努力を重ねていきたい。

―ただのPR会社ではなく進化を遂げてきたという話があった。コロナ禍で業績を落としたPR会社もあるが、狙っている市場での競合や、ポジショニングは
広告市場全体は、この数年で大きく変わった。これはコロナ禍の影響ももちろんある。市場全体にタックルしており、大手の総合代理店やデジタル系のエージェンシーとぶつかることがある。また、コンサルも広告市場に参画してきている。

今まではかなり障壁の高い、参入がなされなかったマーケットだったが、顧客側も広告代理店だけではない選択肢を思い浮かべながら、当社のような存在にも機会を提供することが始まっている。いろいろなプレイヤーが入ってきているなかで、7兆3000億円の市場の奪い合いがスタートしている。

―価格面を含めた競合優位性は
大手総合代理店は、テレビCMを中心とした提案が主体になっていると見ている。企業がブランド認知を取っていくうえでCMは有効な手段だが、情報環境が変わっている。CM以外の手段も、選択肢として持つことができる時代になっている。

そこは、我々が得意としている例えば、皆と一緒にパブリシティーを作っていく、SNSを活用するというところで、CM以外の認知施策を提案していくと、価格の優位性は一定程度取れる可能性がある。

一方で、「安いから我々に仕事を出してくれ」というよりは、テレビCMや特定の打ち手に固執をしないニュートラルな提案をできる点を強みにしている。コストの観点だけではない部分で評価され、選ばれる存在になっていきたい。

―開示可能な象徴的な事例はあるか
吉田和樹CFO:ホームページでWorksという形で開示している事例はいくつかあるが、このタイミングでの発表の許可を得てから改めて説明したい。

―投資家が人材確保を今後の課題と見ていたようだ。プランナーの存在に競合優位性があるとのことだが、人材の確保のカギは
青﨑CEO:プランナーの確保も重要だが、それだけではなくPRパーソンの数そのものを増やしていくことが重要になる。バランスをもって人員を引き続き確保していく。特定のセクションに依存することはなく、全体としての規模を拡大していく方針を考えている。

―PRパーソンの採用計画は
吉田CFO:期中平均人員は151人で、期末では157人になっている。週明けには新卒がまた入ってくる。新卒・中途を含めて、年間50~60人をコンスタントに採用しており、規模としては、上場を皮切りにPRパーソンの母集団に対して20%程度の成長で、より踏み込んでいきたい。

青﨑CEO:この5~6年のスパンで、PR業界でナンバーワンになっていく絵姿を目指している。20%を堅く見ながら、長期のビジョンとして1000人規模の組織になることを狙っていきたい。そこに向けて規模を拡大したい。

―直近3件のM&Aを内製化しているが、買収の際にPMIを含めて重視していることは
まずは当社のビジョンに共感してもらうということを非常に重要視している。これまでのM&Aもそうだが、経営者には引き続き残ってもらい、当社のグループのビジョンの実現のために経営のトップとして事業に尽力をしてもらうということを、これまでもやってきた。今後も、当社のビジョン実現のために、単体ではなくグループに参画することを相互に合意できたパートナーと一緒に成長を続けたい。

ビジョンへの共感や経営を継続するという前提があるので、高値掴みのようなことは起こっていないが、社内で規律を持って条件を設けているので、そのなかで判断をしている。

吉田CFO:加えて、中核会社であるマテリアルに経営管理やプランニングの強みがある。その強みを持って、グループ入りした会社にも十分にリソースを投下することで伸ばせる余地があるところは重視している。PMI (Post Merger Integration)ではその実現に注力している。

―IRやSRなどリレーションシップ関連の周辺領域に関するサービスへの関心は
青﨑CEO:現時点でIRの具体的な支援は行っていないが、クライアントのニーズに合わせて、サービスを必要に応じて開発していきたい。直接的なIRではなく、企業価値を上げていくための支援という観点では、コーポレートコミュニケーションのサポートは、サービスとして常時行っている。その領域から少しずつ進出して具体的なIRの業務にも入っていく可能性はあり得る。

―資金使途について
コア・準コア事業はともに、人を主体に行うビジネスになっているので、積極的な採用、優秀な人材の確保に活用したい。また、M&Aも自己資金で十二分にできると想定しているが、必要に応じてマーケットからの調達も検討したい。

―初年度から配当を出す狙いは
成長と株主還元は両立すべきということは、マーケットのなかでも言われてきたことだが、上場するタイミングでそれを実現できると判断し、このタイミングでの上場を前提として選択した。

配当性向に関しては初年度33%を予定しているが、株主と当社の中長期的な成長を支援してもらえる関係を築くうえで、株主還元は重要な要素になってくるので、そういった方針を初年度から取っている。

―大株主の戦略PR投資事業有限責任組合と10X Investment、Retweet and Share はどういった属性なのか
その3つは、株式を99%保有していたアドバンテッジパートナーズ傘下の投資ファンドだ。

―それぞれには経営陣がけっこう金額を入れているのか、全くないのか
全くない。

―アドバンテッジが入ることでビジネスの成長に役立ったなど、どういった点が特に良かったのか
事業の観点では、一定程度経営の独立性が担保された状態で、私や吉田CFOを始め執行サイドが率いてきた。一方で、管理面やIPOに向けた準備では彼らがノウハウを持っていたので、当初はその部分を教えてもらうことで寄与した。M&Aに関しても、十分な知見を持っていたので、ソーシングやストラクチャーの組み方を含めて学ぶことが多かった。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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