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上場会見:スマサポ<9342>の小田CEO、管理会社の課題をまとめて解決

29日、スマサポが東証グロースに上場した。初値が付かず、公開価格の800円の2.3倍となる1840円の買い気配で引けた。不動産管理会社に代わって、転居に伴うライフラインの手配をサポートするコールセンターの「サンキューコール」を主力とする。入居者へのインターネットやウォーターサーバーなどの取次手数料が収益源。870社の不動産管理会社と契約する。昨年8月にand factory<7035>から譲り受けた賃貸不動産の入居者アプリ「totono」を今後の成長の柱に据えている。小田慎三CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

管理会社が物件の入居者に導入を促すため、totonoのダウンロードに関しプロモーションが必要ない状態であると話す小田CEO
管理会社が物件の入居者に導入を促すため、totonoのダウンロードに関しプロモーションが必要ない状態であると話す小田CEO

―今日は売買が成立しなかった。その受け止めや市場の期待・反応について
藤井裕介CFO:初値が付かずに終わったが、需給の問題やスケジュールといった要素もあり、買い気配で終了したことは、非常に多くの期待を寄せられていると考えている。明日は大納会だが、来年へ向かっていくにつれて、企業価値を上げていくためにも事業に邁進していきたい。

―上場の狙いは
マーケットに出るので、資金調達はあるが、それ以前に、不動産管理会社の業務のなかに深く入っていき、入居者の個人情報も多く預かる。インフラとして社会的な信用度と知名度を備えていくことが重要であろうと上場を決断した。

―契約している管理会社の規模の広がりはどのようなものか
小田CEO:既存の管理会社に関して、ミニマムに運営しているところでは、100~200戸を管理する会社と取引をしており、大東建託は117万戸と非常に幅が大きい。取引先の平均値では3000戸ほどとなる。今後を見据えていくと、中小規模の会社にもニーズがあり、そういったところは増えてくると考えている。

―競合の認識とそれらに対する優位性は
サンキューコールや入居者アプリには、競合会社は存在する。ただ、我々のように管理会社の問題や課題を解決するソリューションを複合的・包括的に提供している会社は当社だけだと思っている。競合優位性は持ち合わせている。

―調達資金の使途は
藤井CFO:調達した資金を、入居者アプリのtotonoのデジタル分野に全て投資する予定だ。投資をして、さらに不動産管理会社、その先にいる入居者が使いやすいサービスに昇華させていくことを目的として資金投下をしていきたい。

―入居者の年齢層や国籍は様々だろうが、アプリである totonoのUI/UXに関する工夫はどのようなものか
森田団COO:賃貸マーケットの入居者なので、20~30歳代が中心になる。基本的には若い世代向けにUI/UXを作っていく。目線としては、UI/UXをどこかに傾けて、例えば、ターゲットを男性向けや女性向けというように決めるのではない。不特定多数の様々な人に使ってもらうので、アイコン1つで誰でも分かるデザインの仕方や、UI/UXの組み方は非常に重視している。

そういった意味では、外国人の人たちにとっても、日本語が分からなくてもマークを見れば分かるといったデザインの仕方や、ボタンをタップすれば何のメニューが開いたのか分かるような全体のメニューの作り方などを重視している。

―高齢者の人たちは使っているのか
高齢者が我々のターゲットとして多いかといえばそうではない。この入居者向けアプリを高齢者向けの住宅で提供しようという話が寄せられれば、それに向けたUI/UX を作る手段も取れる。

―totonoは1社につき月額10万円で貸しているのか
小田CEO:これはサブスクモデルだ。管理会社1社あたり毎月10万円のサービス利用料を受け取っている。入居者は無料で使うことができる。

―ベースが10万円だが、ほかにオプションでチャットでの対応などを追加していくと(アップサイドになるのか)
昨今、地方などでは、管理会社では、なかなか人材を採用できない問題がある。電話のコミュニケーションをチャットにすることで、入居者とチャットのやり取りをアウトソーシングしたい企業が増えている。そのBPO(Business Process Outsourcing)の部分を、我々が社内外で持つチャットセンターで受託する。この部分も非常に大きな収益になっていく。

―チャットは、現時点で何件ぐらい発生するものなのか
管理会社の規模によるが、管理する部屋の10%程度について1ヵ月の間に問い合わせがある。そのうちの3割ほどがチャットによるようだ。

―大東建託とは元々あるサービスとtotonoと連携させるとのことで、ベースの条件が違うだろうが、同じようなことか
大東建託は自社のアプリの「ruum」を持っているので、今後連携していく形になり、今の料金とは違うサービス提供になると想定している。

―株主にDGベンチャーズが入っているが、純投資以上の関係性が現在または今後あるのか
藤井CFO:DGベンチャーズに関しては、横浜銀行がLP(Limited Partner)となったデジタルガレージのファンドであるHamagin DG Innovation投資事業有限責任組合からも出資してもらっている(ことから)縁があった。

DGベンチャーズはコーポレート・ベンチャーキャピタルだ。デジタルガレージ自体が、いわゆる決済などに関わる事業を手掛けている。政府がデジタルで給料を払うこと(を推進すること)とリンクしてくるかもしれないが、不動産業界や管理業界で1番大きなところでは、入居者の家賃を、管理会社が預かりオーナーに送る部分の決済をよりデジタル化することで、当社1社でやりきれるものではない。

デジタルガレージのような企業とコミュニケーションをしっかりと取りながらやっていこうというところだ。「ベンチャーズ」なので、ある意味では投資だが、純全たる投資よりは、事業シナジーを目論んでいる。

―デジタル化の可能性に触れたが、家賃の収受代行のようなものも、新しいサービスメニューとして今後あり得るのか
小田CEO:非常に中長期的な形になり、現時点で何か具体的にサービスインするとか、その時期が決まっているわけではない。デジタルガレージは、そういった分野に強い会社だと思うので、先方も含めて、いろいろな形でどうすれば入居者がシームレスに家賃決済ができて、オーナーが家賃を収受できることを目指していきたい。

―新電力事業から撤退したとのことだが、提携関係にあるENECHANGEは出ていくのか
藤井CFO:そんなことはない。我々が電気の事業を止めたのは、新電力を我々が仕入れて販売する、リスクを取って販売する事業から撤退したということだ。

―そんなこともしていたのか
そうだ。赤字を計上しているが、新電力事業は御多聞に漏れず倒産や事業撤退が多く、我々は撤退した。ただ、生活者や新入居者に対して新生活のサポートをする時に、電気を付けないことはまずない。どんな人でも引っ越して最初にすることは、電気の通電とガスの開栓といったインフラ関係になる。撤退したが重要なインフラであり、ENECHANGEはエネルギー分野に関して長けたプラットフォームを持つと考えているので、出ていくよりは(関係を)より強固にしていきたい。

―ENECHANGEとのアライアンスでは、どのタイミングで商材を提案するのか
入居時に電気の開通をしなければならないタイミングで、入居前に電気の契約、例えば、関東圏であれば東京電力の電力か新電力かといったことを、ENECHANGEと商材の確認をして入居者に連絡させてもらう。

―それはスマサポとしてか
スマサポとして電話をして、彼らの商材などを紹介していく。また、我々は不動産管理会社が顧客となる。ENECHANGEは、いわゆるEV(電気自動車)の充電ステーションを広げる戦略を持っているようだ。

商業施設やホテル、映画館などにEVの充電器が置いてあるが、家には設置されていない。不動産管理会社が管理する駐車場にも今後設置を広めていこうといったところだ。エネルギーと暮らしは非常に密接に繋がっている分野なので、1つの商材だけではなく包括的に取り組んでいくのがENECHANGEとの資本・業務提携だ。

―スマサポを通じて(ENECHANGEは)管理会社とうまく繋がるのか
そうだ。

―NEXT ONE有限責任事業組合はどのような株主か
我々の母体が大阪出身の会社であり、大阪の投資家たちが集まった私的ファンドのようなものだ。我々が知らない投資家も複数存在する。ただ、組合の代表者は我々も上場前から知っている税理士なので、昔からの付き合いというか、当社を応援している1社だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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