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上場会見:エスネットワークス<5867>の高畠社長、買収後を幸せに

19日、エスネットワークスが東証グロースに上場した。初値は付かず公開価格の730円の2.3倍となる1679円の買い気配で引けた。同社は財務・会計分野のコンサルティングを手掛ける。担当コンサルタントが顧客の現場に常駐し、クライアントの成長に合わせて、M&AやIPOなどの経営支援から再生支援、海外進出までの「CFO機能」をワンストップで提供する。PEファンドが経営支援コンサルティングの主な提供先。高畠義紀社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

経営を支援しながら経営者になるというコンセプトで、3代目の社長に就任した経緯を話す高畠社長
経営を支援しながら経営者になるというコンセプトで、3代目の社長に就任した経緯を話す高畠社長

―初値が付かなかった
投資家の期待が寄せられており、身の引き締まる思いだ。ただ、株価の日々の増減ではなくて、サービスを提供することで業績を上げて、最終的に株主に還元したい。

―上場の狙いや背景は
人材がカギになる。人材採用に向けた信用力の向上がある。今回は売り出しが大半で調達は行っていない。今は、資本は十分と見ているが、周辺の事業に広がりがあるなかでは、調達できる体制を整える。

―上場後に規模が拡大していくと、ターゲット企業の規模はどのように変わっていくのか。あくまでも中堅・中小企業がメインなのか
ターゲットの規模は、売上高1000億円以上の企業にも対応可能だ。だが、切り口としては、大手の会社の発展的な子会社を海外や国内でどのようにしていくかといったものだ。1000億円以上の会社にも対応できるが、顧客としては10~1000億円未満のところがニーズと合致する。

―SBI証券を主幹事に決めた理由は
小回りが利いて、個人投資家を集めることができること。我々が紹介したネット系のIT企業を引き受けてもらった縁があったので、私の代でSBI証券に依頼した。

―上場直前にIPOの株価を操作していると、証券取引等監視委員会が確認しているが、それについてはどのように受け止めたのか。例えば、上場を延期するといったことは考えなかったのか
まだ調査中と聞いている。少なくとも調査が入っているなかでの操作は、我々のタイミングではあったとしてもないとしてもないだろうということは思った。

―ないだろう、とは
事実が確認できなかったことと、SBI証券からは事実の連絡はなかった。それに対して過去に操作をした可能性が、あったかないか分からない状況で、当社の(上場の)タイミングで、調査をしているなかで、操作があるということはないと私は判断した。

―今日の上場に関してということか
そうだ。

―SBI証券から説明はあったか
調査中であるということだけだ。

嶽崎洋一グローバルコーポレート部長:勧告がなされたことに対しての連絡は受けている。その内容については、調査中であるということで知らされてはいない状況だ。

―強みの1つが客先に常駐することだが、コロナ禍でリモートワークが浸透して、回復しても、仕事の仕方が変わるトレンドがあるだろう。事業上のリスクとしての認識は
高畠社長:2020年にコロナ禍が起きた時は非常に打撃を受けた。常駐してやっていくことを価値と見てもらったところで、行けません、来ないでくださいということになった。契約はある、やってほしいことはある、でも誰も会社に来られないから、ちょっと待ってということが続いて苦労した。ただ、結果的に、我々にとっては良いことが起きた。

常駐は、ソリューションを出していくのに、工場やIT部門に赴き、在庫がどうなっているのかなどを見ることには凄く価値があり、客先の担当者の話を聞きながら協力をしてもらうことには意味がある。

社員ではないので9時から18時まで居ることに意味があったわけではないが、「雰囲気としては居たほうが良い」ところから「必要な時に行ったり来たりする」ことを、顧客に認めてもらえるようになった。例えば、コロナ渦では、海外子会社の改善を国内から普通にできていた点が良かった。

また常駐で動けないとなってくると、顧客と伴走していくスタイルは引き続きダメージを受ける可能性はある。ただ、前回受けたほどではない。

―直近3ヵ年のトップラインの伸びを見ると、直近で鈍化傾向にあるようだが、背景は
サービスの種類が少し入れ替わっており、具体的には地方公共団体のサービスやM&Aのマッチングサービスを適宜やめて、現状の実行・実装支援にシフトしていく過程で売り上げにばらつきがある。だが、実行・実装支援だけを見ると売り上げは右肩上がりで伸びている。そのサービスの付加価値が高いがゆえに、営業利益にそのまま跳ね返ってくる。

―事業ポートフォリオの組み替えの途中なのか
そうだ。

―今後の展開として、「より企業の深い課題にアプローチしていくことで拡大・継続」することを掲げており、そこを強化していきたいとのことだが、どういった部分を補っていくのか
例えば、M&Aをした後、企業の課題を100日で可視化できる。見えるようにした後で、そのなかに、経営としてもっと深く理解して変えていくべきものが見えてくる。

最初は会社を買うというざっくりした数字から見ていき、数字を適時に比較して見えるようになってくる。そうすると、この工場の中はどうなっていくのだろう、どうすべきなのだろうというところに深く入っていける。そういったアプローチをするプロジェクトマネージャーとインチャージ(現場責任者)を持つ組織でカバーしていく感じだ。

ニーズはあるが、プロジェクトマネージャー単独でそれをやっていると、そこで終わってしまうので、そこに対して来期以降の計画では、それをサポートする、よりハイレイヤーの人間をぶつける仕組みを作っている。

―今までとは違ったスキルやタレントを持つ人たちも必要になるのか
サービス軸で見たITや人材領域のメンバーを増やして事業を広げていきたいが、究極的には、これらを扱いながらどうやってその経営者の課題を解決していくかという総合型の人材が育っていくことが我々の事業のドライブに必要だ。

―海外に注力したいとのことだが、どのような人材を増やしたいのか
サービスの軸で言うと、CFO領域で入ると会計が中心になる。例えば、会社を買った時の悩みは、会計だけではなくて、特に人材系だ。昔の評価制度などが残っている状態をどうしていくのか、自分たちが買った後で設定するKPIに連動した報酬をどうしたらいいのか。

そのような課題に対応する人事領域のメンバーや、ITメンバー、こういったサービスを総合的に考えられる人材が必要だ。それに加えて、海外でできる人材を幅広に増やさなければならない。そのために知名度や信用力を上げたい。

―海外展開は東南アジアを含めて進めるようだが、人員は半分ぐらい取っているのと比べて、売り上げと後営業利益がかなり小さい。実際にどう利益を上げていくのか
今の海外メンバーで主力となって取り組むサービスが、コンサルティングというよりはアウトソーシングに近いビジネスになっている。進出する会社のために会社を作り、会計を一旦丸ごと請ける仕事は、付加価値が高いビジネスではない。

並行している常駐型の、「M&Aで会社買ったんだけどちょっと見てくれない」というニーズも増えていて、そこにシフトしていくことで海外が広がっていく。

―フィリピンの子会社を売却したが、注力地域が変わっていくのか
東南アジアに引き続き注力するが、譲渡した会社は基本的にアウトソーシングが中心になっており、譲渡先と業務提携している。彼らはアウトソーシングを中心にやっていく過程で、コンサルティングのニーズがあった場合には我々につないでもらうということで共通の共通の拠点を先方に譲渡している状況だ。

過去に拠点がないタイミングでも、サンフランシスコやインドネシア、タイででの実績はあるので、これを広げていきたい。

―それ以外の地域は
ニーズはあるので広げていきたいが、まずは東南アジアを押さえてからと考えている。

―コンサルタントとしてエスネットワークスで働く魅力は何か
新卒のメンバーからすると、経営者やCFOの話を直接聞いて仕事をする成長機会という意味で、当社に入って若手として早く任される点に価値を見出せる。キャリア採用の場合、ほかのコンサルティング会社や、監査法人にいる会計士から聞くところだが、例えばM&Aの買収まで手伝ったが、買って幸せにしていくというプロセスを一緒に味わえない。経営者と伴走する仕事ができることに、やりがいを感じて転職してくる人が多い。

―株主還元について
資本を預かっているという前提で、ROEとDOEを採用している。12億円ほど預かっているので、その資本に見合った10%の還元を約束して連続して配当している。

当期利益からすれば、配当性向が高いと見る人もいるが、12億円に対して利益が少ないだけだと考えている。この瞬間ではそうなっているが、今後、12億円の資本に見合った業績になってくると、配当性向が特別高いということにならないと考えて経営したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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