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上場会見:Recovery International<9214>の大河原社長、看護師の負担を減らす

3日、Recovery Internationalが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の3060円を13.73%下回る2640円を付け、2472円で引けた。同社は在宅療養生活を支える看護師などによる訪問看護サービス事業を手掛ける。各事業所を、看護師6人とリハビリ職員5人の11人体制で運営し、2021年12月期末時点で15の事業所を持つ。大河原峻社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

大河原社長は、追加的な安全性の確保策に関して、リスクが高まる場合にはGPSやカメラの使用も、デメリットを考慮しながら一案としてあると話した
大河原社長は、追加的な安全性の確保策に関して、リスクが高まる場合にはGPSやカメラの使用も、デメリットを考慮しながら一案としてあると話した

―初値が公募価格を割ったが、受け止めは
市場の評価だと思って真摯に受け止めているので、しっかりとした経営に邁進していきたい。その上で、投資家の理解を得るためにもIRや広報活動を頑張っていきたい。

―2021年12月期予想の営業利益率が 12%と業界平均の3~4%に比べて高めだが、それを実現できる最たる理由は何か
訪問エリアを確保して、商圏をしっかり回ることが大事で、1人の看護師がいかに多く巡回するかがポイントになる。管理しないと商圏外の患者を訪問してしまうことがあり、移動時間が多くなり、残業が増え疲弊することにつながる。ICTを使って効率化を図り、看護師の負担を減らすことが一番の肝になっている。

■ベストは11人
―1拠点あたりのスタッフは11人を基本としているが、15拠点全てで11人体制なのか
現時点では、2021年に出した4拠点は11人に達していない。最初は3人ぐらいからドミナントで離れていくが、11拠点では11人いる状況になっている。ただ、11人から13~14人(に増えて)、そこから3人を(新拠点)に出しており、2年ぐらいで11人の拠点にすることを目標にしている。11人では、現在、1拠点で月商が800万円ぐらいで年商1億円で(予算を)組んでいる。

―11人は拠点開設などのコストから導き出された数字だと思うが、例えば、11人にならないと黒字にならないのか。どのような考え方に基づくのか
7人以上いれば黒字化することは見えているが、看護師6人とリハビリ担当者5人は毎日1人ずつ空き日を作るために必要だ。看護師に緊急訪問が多く、平日が5日間あるので、リハビリ担当者は1日ずつでいいので、5人いればいい。看護師はちょっと多くいたほうがいいので6人にする。

看護師はプロ意識が高い人が多く、患者への思いの強さから内部で衝突してしまうこともある。また、(事業所には)所長と、副所長が2人いるが、3人で管理するには11人が、ドミナントで3人いると言ったが、15人がマックスだと思う。11人を超えたら絶対に出店しなければならず、出店がないなら、11人以上は入れない。

―拠点で働くスタッフは正社員か
9割以上が正社員になっている。

―上場の有無は大きいのか
上場はそれほど重要ではない。それよりも安心して働けるとか、体制が整っている、理念がしっかりしているといったことで看護師が選ぶ。看護師達の多くが当社の「あったかい家族」として利用者に寄り添う、利益も大事だが利益利益と言わないようにしている(ことから当社を選んでいる)。また、「オンコール」という電話当番の対応が、多くのステーションは月に7~11回ぐらいあるが、当社は人数がたくさんいるので、月に2~3回で済んでいる点で、選んでもらっている部分はある。

■市場の需給状況
―訪問看護市場の需要と供給の関係は、どういう状況なのか
需要のほうが圧倒的に多く、供給は足りていないのが実情だ。付け加えると、事業の存在を知らない人も多いので、本当に必要だが提供されていない人も多い。そういうところにまだアプローチできていないのが、この業界の、また1つの問題になっている。

なぜなら、多くの人は訪問看護を知っているかと聞かれれば、「介護でしょ」と答え、看護と介護の違いを誰も答えられないというのが業界の問題点だ。

―需要が圧倒的に多く、拠点を出せば患者がすぐに集まる状態は、いつまで続くのか
2025年に団塊の世代の人たちが後期高齢者になり訪問看護が必要となる状況なので、2025年までは伸び続けると言われている。我々が実際に出店して仕事をもらっている状況を見ると、この3年は伸び続けると見ている。

ただ、事業を知らない利用者や地域が多くあるのも事実なので、我々専門職が地域連携活動を通じて地域に知ってもらうことが、ほかの事業所に負けないポイントになるだろう。

―その後は競争が少し激しくなるのか
2025年を機に参入もより多くなってくると思うので、激しくなると思う。対策は必要になる。
柴田旬也取締役:現状、当社が出店しているエリアの75歳以上の後期高齢者が利用者の70%以上を占めるぐらいに多い。エリアに居住する後期高齢者数に、今の訪問看護利用率を掛けると、そのエリアで訪問看護を利用する人数が見えてくる。そのなかで5%ぐらいのシェアを取れると、1拠点で年間1億円ぐらいの売り上げと20%ぐらいの営業利益率になる。

5年後や10年後に競争が激しくなるとしても、その5%、倍の10%を取ればいいというぐらいの競争になると、当社の強みからは、市場シェア20%ぐらいまでは頑張ればいける思っている。業界的に、前に比べたら倍の厳しさがあるという状況になっても、あまり問題なく出店を続けられると見ている。

―国の動きとして訪問のリハビリの保健点数を下げる傾向にあると聞いたことがある。そういったことは事業に影響するのか
大河原社長:訪問のリハビリは徐々に下がっている傾向はあるが、その分看護が上がっている。看護師6人とリハビリ担当者を5人としているので、そんなに影響はない。看護が右肩上がり上がっているので、逆にプラスになっている。ただ、リハビリを縮小しようという世のなかの動きもあるので、当社のニーズが高まっている状況ではある。

―先日の、埼玉県ふじみ野市のケース、現場でシビアなことが起きるのはレアなケースであると思うが、現場で働く看護師の安全性への配慮や取り組みについて聞きたい
当社では必ず、1人の患者に1人(のスタッフ)としないようにしている。月に必ず誰か2人以上は関わるようにしている。同じ目で見ない形にして、何かリスクがある場合には、2人で訪問するなり(事業所の)所長がバックアップするなど、心配があれば必ず相談できる環境を作っている。安心感を得られるようにしている。今回の事件で不安だとか心配だという声は社内ではほとんどない。

どちらかといえば周囲から大丈夫かと心配されるぐらいで、内部の人間は、利用者と向き合ってリスクヘッジをしていることを理解しているので、心配の声はゼロと言っても過言ではない。

■訪問看護に特化
―訪問看護事業以外でコンサルティング事業などいくつか挙げていたが、2024年以降に検討するという理解で良いか
コンサルティングもフランチャイズも訪問看護に特化している部分で考えており、今も何社かの相談を受けてコンサルティングに入っている。それを拡大していくことが2024年からのフェーズと思っている。基本的には訪問看護に特化した部分で事業展開や既存サービスを拡大したい。

―訪問看護以外のところも2024年以降に行うのか
2024年までに構築するために、利用者のニーズや同業他社の比較に着手している。

―コンサルティングとフランチャイズはどのようなものか
訪問看護の事業所運営は、管理者としての所長がメインで行っている。私も看護師をやっているので分かるが、(所長は)効率化よりも患者さんの困っているところを解決しようとする。新宿にいながら、患者が困っていたり馴染みの医師からお願いされたから一時期調布まで訪問していた。これが当たり前の状況になっている。

先程、効率化が収益にとって最も大事と伝えたが、そうしないと、看護師達が疲弊して辞めてしまうことを、我々がしっかり伝えないと、どんどんいろいろな場所に訪問してしまって、効率化できず収益性が上がらない。(訪問看護業界では)5人未満の事業所がほとんどだが、大変ですぐ辞めてしまうので人が増えない。私自身の看護師の経験もあり、当社にそのようなノウハウがあって、それを伝えていく。経営指南も行う。

訪問看護ステーションは年間1000事業所ぐらいが設立されているが、休廃業率が7%もあるような業種なので、当社のICT化や効率化を理解したフランチャイズができれば、今後の見通しは明るいと思っている。

―コンサルティングは同業者向けのものか
訪問看護事業者向けの経営指南であったり、看護師の教育となる。

―撤退しそうな事業所向けか
どちらかというと新規で開設するところに当社のサービスを知ってもらい、一緒に取り組むことを考えている。なぜなら、(訪問看護事業者の多くは)平均年齢40~50歳代で、 ICT化のモデルや効率的な方法による巡回があまり理解されない。「看護師だったら、エリアを決めないで困ってる人がいたら助けに行きましょう」というのが大半なので、理解を得るには最初から当社のやり方を理解してもらわなければ難しい。それはフランチャイズでと考えている。

―フランチャイズ展開は2024年ぐらいからか
今のうちにしっかり情報収集や、基盤を作っていかなければならない。開始するにはそのぐらいの時期に始めたい。

―FCオーナーを集めるところからスタートすると思うが、進捗はどうか
現状はまだそこの動きができていないが、上場を機にしっかりとした広報をしていきたい。

―売り上げの何割かをロイヤリティーとして受け取るのか
そうなる。

―直営事業所を2024年までに4~7拠点、2024年から2026年までに7~10拠点増設するとのことだが、FCの数に関して、どのような立ち上がりを想定しているのか
直営はしっかりやっていかなければならない。2025年からは、5、10、15のような形でしっかりと伸ばしていく。まず基盤を作り、今の直営店ぐらいに増やしていくことが3年以内の目標になる。

■出店方針と新展開
―関東近郊への出店とのことだが、具体的な出店エリアの考え方はデジタルデータなどを活用して決めていくのか
基本的には高齢者マーケットが伸びていくか伸びていかないかが一番になっている。その次に競合として訪問看護事業所がどのぐらいあるかを見るが、今の当社の地域連携活動や広報活動でそれほど困らないと見ている。

もう1つ、役職者がそこに行けるかどうかがポイントになっている。ドミナントに関しては役職者をベースに、行ける人間が行かない限り出せない。当社では、埼玉や千葉、神奈川から通ってる人員も多いため、見込みとしてもかなり高く、そのエリアを中心に考えている。

―看護師をしっかりとケアできる役職者が…
その地域に行けるリーダーがいないとなかなか難しいので、彼らができるエリア、かつマーケットがあるところで作りたい。

―長期的な展望として、家政婦や宅配食事、自宅にある物の買取サービスをクロスセル可能な領域とし、代理・仲介も可能としているが、看護師が営業的な役割もするのか
私も看護師で現場を回っていたから分かるが、このサービスを提供するのはなかなか難しい。

ただ、困りごとの相談は毎回あって、「相続をどうしたらいいか」と言われた時に、どうしたらいいのかそもそも分からないので「ちょっと僕じゃ分かりません」ということになっていた。しっかりとしたバックアップのサービスがあれば、「ここに相談すれば伝えられるよ」というものを、たくさんラインアップとして置きたい。看護師は困りごとを聞いた時に、当社にしっかり返して(もらい)、本部が対応したいと考えている。

―若い人を積極的に採用する理由で、看護師不足を補う以外の理由を改めて聞きたい
看護師が150万人いると話したが、潜在看護師がプラスで50万人いる。若い看護師達は看護師以外の仕事をしようという人が多い。

病院では医師の指示の下で、治療や検査などで患者に関わることができないが、訪問看護では患者に1時間関わる。今まで自分が思い描いていた看護師像に近い仕事をすることができ、ドロップアウトして潜在状態にある看護師を当社に取り入れているイメージに近い。

―訪問看護業界では、大手も含めいろいろなプレーヤーがいるそうだが、今後の人材採用のために、オンコール対応の少なさ以外で差別化していくことは何か
教育がポイントとなる。役職者に週1時間、年50時間の教育をしている会社はない。当社では役職者を目指す人が他社に比べて多いので、教育が受けられることは差別化要素となる。

優秀な看護婦は人員の管理ができると思われがちだが、それは現場が優秀なだけでコントロールできていないことが、当初問題になっており、そこにすごく時間をかけている。また、出店するので(組織上の)ポジションができる。地域の顔になりたいという看護師も非常に多いので、優位性は高い。

また、ICT化しているので、その使いやすさがある。今の若い人たちは、紙媒体ではもう全然見てくれない。それをメールで代替し、通達なども全部PDFにしている。そういう部分がとても好評だ。

―株主還元の方向性について
現状では、会社の基盤を作りながら、価値を向上させながら進めたいと思っている。株価を上げていきながらしっかりとした基盤を作っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]