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上場会見:セイファート<9213>の長谷川社長、美容師に正しい情報を

4日、セイファートが東証ジャスダック・スタンダードに上場した。初値は公開価格の1120円を8.04%下回る1030円を付け、1018円で引けた。同社は美容師の求人に特化したWeb媒体の「re-quest/QJ navi」を中心に美容室の経営をサポートする。美容サロン経営のコンサルティングやマーケティングも行う。長谷川高志社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

長谷川社長は、質問に答える形でフルキャストホールディングスの資本参加の経緯などについても話した。
長谷川社長は、質問に答える形でフルキャストホールディングスなどの資本参加の経緯についても話した。

―初値が公開価格を下回ったことの受け止めは
当社の株を買ってもらった人には大変申し訳ない。我々の実力が至らなかった。ただ、市況の問題もあり、アンコントロールなところなので、この点で仕方ないと思っている。ここから企業価値を上げていけるように努力していきたい。

―株式の売り出しで長谷川社長が保有株式を全て放出しているが、狙いは
上場前の株主が70人いたが、その株が希薄化しないようにということで、不本意ではあるが私の持分を売り出さざるを得なかった。もし私が売り出さないとなると、新規発行で株数を増やさなければならず、そうすると公募価格は、私が全て売り出す計画で1120円だったが、1株も売り出さないことになれば700円台になったと思う。

藤本宏志副社長:社長個人が売り出したと見えてしまうのは事実だが、第1位株主のビューティープロペリティーは、長谷川社長の資産管理会社なので、相変わらず筆頭株主だ。もう1点は、創業して10年前ぐらいして上場しようと思って、美容室のオーナーなどに株をずっと待ってもらっていた。もう20年以上も無配で、このところ有配が続いている。それから、新市場を睨んでというところだ。(長谷川社長は)株主(であること)には変わりない。

―競合の認識について
長谷川社長:メインでベンチマークしている競合サービスは、じげんグループのリジョブ。それから、リクルートのホットペッパービューティーだ。

―採用市場にはどの程度の市場規模があると見ているのか。シェアをどの程度と捉えているのか
美容業界の採用市場は全部合わせて120億円ぐらいと想定している。リジョブの場合は、広告掲載件数としては当社よりも上回っていると思う。ただ、収益としては同じぐらいではないか。

―リジョブは、美容室以外の部分も含めての件数なので、美容室(のみ)と考えた時は、セイファートがだいぶ多いようになっているが
美容室の掲載件数で、我々は下回っていると思う。

藤本副社長:じげんグループは、広告掲載は無料で成功報酬型だ。当社は広告代金を受け取れる。旧態依然としているようだが、制作、広告のコピーライディングや写真などを全部広告(として提供すること)で料金を受け取っている。その代わり成功報酬を受け取らない。

どちらがいいかは顧客が選ぶことだが、当社は顧客企業1社に何十店舗あっても1社としての取引金額だ。あちらは店舗ごとに取り組んでおり、それを顧客が選んでいる。どちらが良いか悪いかは、顧客が選ぶので何とも言えない。

―美容業界の働き方がだいぶ変わって、昔ながらの正社員サロンに比べて業務委託サロンが勢いを増し、美容師がフリーランスとしてシェアサロンで働いているが、今後の採用市場にどのような影響があるか
長谷川社長:我々のデータでも、業務委託サロンへの応募数が急速に伸びている。それを正社員雇用型のサロンからは叱られたりもする。でも、我々は美容師さんがどういう選択をするのかということに対して、思惑を持って運営をしていない。正しい情報が正しく美容師に届くように、そして美容師が(進路を)選んでいくということだ。

最終的に、米国のように98%がフリーランスとしてシェアサロンで働くようになるかというと、日本人の気質からすると、そうではないのではないか。個人的な考えだが、正社員の雇用型が4割、業務委託型が5割で、1割がフリーランスのシェアサロンという割合に落ち着くのではないか。

―成長戦略を聞きたい
短期、中期、長期の成長戦略に分けて考えている。短期的には、現在のコア事業領域である中途・新卒採用市場のシェアを拡大する。具体的には、競合との競争が激しい領域が小規模の美容室のエリアだ。その領域での営業を、インサイドセールスやマーケティングオートメーションツールを活用することでシェアを取り返していく。それを継続する。

そこに振り向けてきた人的リソースも、大手サロンチェーンの営業サービスの強化に振り向けていく。大手サロンチェーン(向けサービス)の売り上げは伸びてきているので、引き続き注力する。

中期的な成長戦略は2つある。我々の1番の強みは、新卒採用市場で圧倒的なパフォーマンスを持って年間 9000 人の生徒が来場する就職フェアを持っていることだ。9000 人の生徒が来場する際に、リアルなタッチポイントでスマホアプリをダウンロードしてもらいたい。

卒業の時の就職活動でも使ってもらい、その先に美容師人生を歩んでいくなかで、ずっとこのスマホアプリを日常的に使ってもらいたい。日常的に使ってもらう履歴を見ることで、その美容師さんに転職ニーズが顕在化する前の潜在的な転職ニーズをキャッチして、それをマッチングにつなげる考え方だ。

どのように日常的に使ってもらうアプリにするかだが、今のZ世代の人たちに向けて、SNS分析ツールを目玉として開発している。そこに、最大の情報コンテンツである「re-quest/QJ navi DAILY」を組み合わせてアプリ化する。開発に着手しており、この3月に第1フェーズがローンチする予定だ。10月に第2フェーズがローンチして、そこからマネタイズを開始する計画だ。

もう1つの中期的な戦略は、当社は「beauqet(ビューケット)」というサービスを持っている。全国に2万店舗のパートナーサロンがあり、そこで、様々な食品や飲料、アパレル、ファッション、日用品、コスメのプロモーションを行っている。このパートナーサロンのなかの5000店舗、25%のパートナーに対してNTTドコモの「dマガジン」という雑誌サービスを組み込んだタブレットを、1店舗あたり5台配置する計画を進めている。2万5000台のタブレットで、顧客へのリーチとしては350万人を想定できる。ビューケット事業をさらに強化する。

長期の戦略は10年後を視野に、(美容室という)「ハコ」を起点としたビューケットから、美容師という「人」を起点としたビューケットに進化させたい。美容師が持つ最強の顧客接点を、デジタルの力で補強して、売りやすい商品を売りやすい仕組みに乗せて、美容師の収入を上げることにコミットしたい。

もう1つ、「美容立国日本」という大きな夢だが、アジアの子供たちが日本に美容を学びに来る時代を作りたい。日本の人口が8000万人になる時、アジアの人口は 6億人増えているそうだ。この6億人はみんな黒髪だ。世界の人たちの髪の毛はヨーロピアン・ヘアとカリビーン(ブラジリアン)・ヘアと黒髪だが、この黒髪を最も美しくプロデュースできるのは、日本のヘアカット技術とカラーリング技術だと思う。学びに来た子供たちが、1人また1人とその国に帰って、アジアの国の美容産業の礎を作る。きちんと発展していくことは、そこで多くの雇用を生み、また、その国の人達をきれいにしていく。日本ができる大きな国際貢献だと考えている。

―ROEについてどのような考えを持っているのか
藤本副社長:イメージとしては15%ぐらいではないか。今までは過小資本だったので、ROEという経営指標をあまり用いていなかった。WACCなどを考えると15%以上は取らなければならないのではないか。

―配当政策の考え方は
長谷川社長:配当性向20~30%ぐらいの配当をここ何年か続けているので、その割合で今後も努力していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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