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上場会見:日本調理機<2961>の齋藤社長、民間市場を再拡大

9日、日本調理機が東証2部に新規上場した。初値は公募価格(2710円)を1.5%上回る2750円を付け、2688円で引けた。同社は、学校・病院など集団給食施設向けに厨房機器の開発や製造、販売、修理を行う。主力製品は、食器洗浄機や消毒保管機、回転釜など。厨房づくりのコンサルティングを通じて、自社のみならず他社製品を販売先に導入することもある。齋藤有史社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

齋藤社長は現場の人材不足がロボットの導入を促すとの見方を示した
齋藤社長は現場の人材不足がロボットの導入を促すとの見方を示した

―70年以上の歴史がある会社だが、この時期に上場する狙いは
我々の業界に限らない話だが、今後の人材採用難を踏まえて、人材確保の安定化を図りたい。また、厨房では、これからますます省人化や省力化ニーズが高まり進んでいくと考えている。ロボットやAI、IoTといった先進技術を持った異業種との開発タイアップが進むと見ている。そのような分野では、総合厨房メーカー独自の技術では追い付かないものも出てくると思う。タイアップが進むなかで、数ある同業のなかから我々を協業先として選んでもらう機会を今以上に増やすためには、企業としての社会的信用を増す必要がある。これが上場の主な目的だ。

―競合状況とシェアは
西山智康副社長:学校給食関係や病院などに分ける。学校給食関係では東証2部上場の中西製作所<5941>と非上場のAIHOで3割程度を持っている。我々は、学校給食の売り上げの割合が総売上高の60%弱だ。

売り上げの約25%が、これから進めようとする病院や学生食堂で、そちらのライバルはフジマック<5965>やマルゼン<5982>だ。冷機関係ではホシザキ<9465>などがあり、その辺りでいろいろと取り合っている。そのシェアはそれほど高くない。ただ、10年以上前は、我々の機械は結構入っていた。その間に選択と集中で、利益が出やすく効率の良い学校給食関係に傾注した。学校給食は160億円ぐらいを大体達成できるので、次は民間市場を狙う方針となった。

―少子高齢化で学校の数が減り、給食市場は縮小する気がするが、成長ドライバーは
齋藤社長:学校給食自体は、児童の数が少なくなるのでそうなるが、現在、全国で非常に多くの給食センターや施設が存在する。厨房機械は業種によって異なるが、学校関係では10~15年で機械を入れ替える。機械の入れ替えを2~3回転するタイミングで、施設全体の老朽に伴う更新が発生する。

今もその状況で、当面は継続して需要が発生する。また、文部科学省などの省庁が、社会インフラの老朽化に向けた予算を継続的に付けていく話もあるので、その需要は変わらないと考えている。また、社員食堂や病院、大学の学生食堂などの分野も多く手掛けている。この10年ほどは学校給食に傾注した時があった。そこから再び民間市場への拡大を図っている。

―コロナ禍で閉鎖する食堂が相次ぐなかでの対策は
緊急事態宣言が解除されているものの、そういった部分では戻ってこないと見ている。ただ、病院関係では、比較的早い段階で、施設や機械の更新需要は戻ってくるだろう。その分野には引き続き今まで以上にアプローチしている。

社員・学生食堂は、コロナ禍の様子をもう少し注意深く見る必要があるが、また戻ってくるのではないか。それに伴う機械の更新や設備投資需要も、どの程度まで、いつのタイミングで戻ってくるかは見通しにくいが、病院に次いで戻ってくるタイミングがあると思う。

―2021年9月期と2022年9月期の売上高の見通しが170億円程度で、前期は160億円ほどだった。今期や来期は2019年や2020年の反動によって上昇したのか、それとも170億円程度の水準が続くのか
もう少し過去の業績を遡ると同様の凹凸(おうとつ)があり、170億円前後で推移している。学校や病院関連など大きな案件が多い年と少ない年があり、それに伴い変動する。今後も一定の変動のなかで進んでいくことが基礎になる。これに加えて、民間市場に再び進出する成果が、どの程度上乗せされるかによる。

―1998年に福岡県の給食センターに導入した洗浄済みの食器を整理するロボットの更新やメンテナンスは収益機会なのか
1998年に納入し、この2~3年の間に1度更新した。機器の新たな入れ替えのタイミングで商機がある。

―関連して、保守サービスにIoTを活用する「キッチンコネクト」と、ロボットとの現状での関連性は
実際に稼働しているロボットとキッチンコネクトはつながっておらず、別のものとなっている。キッチンコネクトは、我々が納入した施設全体の機械のデータを管理して故障時の対応の円滑化や予防保全の提案などにつなげていこうと、今年の9月からモニター的に一部の顧客で稼働している。ロボットとはつながっていない。

―今後、ロボットとつなげていくような展開はあり得るのか
新しく納入する厨房向け機械についてはそのような方針で検討している。ただ、産業ロボット自体は大手産業ロボットメーカーの製品を使い、それに我々の機械を連携させて一連のシステムとしている。おそらく(キッチンコネクトと)つながるのは我々の機械側で、ロボットと直接つなげることは、現在では考えていない。

―先進技術を外部と提携して開発しているようだが、内部で開発する考えはないのか。また、プロパーで勤続年数の長い人材が多いが、外からの風があると成長が大きく変わるのではないのか。外部(の人材)を使う予定はあるのか
西山副社長:今、具体的に外部とどうこうという予定はない。我々の事業は結構閉鎖的で、今まで鎖国していたというぐらい(の感覚)で、自分たちでできることは自分たちで進めていた。

ここまでくると自分たちでできない部分がある。どうしても新しい風が入りにくい部分もある。今は、他社と協力して、新しい技術に基づくものを開発している。そのなかで例えば、機械にIoTの部分が出るようなセンサーを付けるというようなことは、我々がするが、その先のサーバーや周辺領域は我々はできないので、協力願いたいという話だ。

産業機械もそうだ。我々も機械メーカーなので多少は扱えるが、あそこまで精度の高いものをどれほどできるかというと、研究段階にあるため外の会社と協力している。そのうちに自分たちできるものを見いだしたい。上場を機にもう少し広げていきたい。

―社会貢献を社是としているが、ESGの具体的な取り組みは
調理で、例えば、熱効率をなるべく上げる、節水関係、給食なので皆さんに平等に食を供給するためにはどうしたらいいのか、そのような点でESGに向かっている。これからも省エネ関係は充実させていかなければならない。

―ROEやROICなど資本効率の考え方は
当然、ROEを上げていくことを目標としている。ただ、社歴が75年になり安定的に収益を出して株主に配当を差し上げたい気持ちでいる。また、社会貢献への思いも強く持っている。社会貢献を永続体に行っていくためには、急激な成長というよりも安定的な成長が必要となる。

―KPIは変わっていくのか
現時点では、総売上高と3段階の利益と、自社製品の売上高で変えていない。当面はそれらを見ていく。その後、ROEなどを重視していこうかという話も出てくるかもしれない。

―配当性向や、配当利回りの方向性は
配当性向は30%ほどを基準に、実際にはそれよりも高かったり低かったりするかもしれないが、今年度は1株当たり120円の配当を出している。その線で続けたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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