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上場会見:日本電解<5759>の中島社長、強い銅箔で航続距離600キロ

25日、日本電解が東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1900円)と同額で、1967円で引けた。同社は、日米でトップシェアを持つ電解銅箔の専業メーカー。車載電池用銅箔の売上高が総売り上げの6割を超えている。2020年3月に米国唯一の電解銅箔メーカーを買収した。中島英雅社長が東京証券取引所で上場会見を行った

製造する銅箔の優位性や成長性について話す中島社長
製造する銅箔の優位性や成長性について話す中島社長

―初値の感想は
想定の範囲内に近いが、当社に対して投資家の支持が得られたことで安堵している。今後は役員および社員が一丸となって業務に邁進して業績を向上させ、投資家に応える。さらには情報開示を充実させて継続的に投資家とコンタクトを取り、信頼される企業になりたい。

―製品の特性は
遠藤安浩取締役:リチウムイオン電池用銅箔の大きな特長は非常に高い強度だ。電池を加工する際に銅箔の表面に活物質というカーボン主体の材料を塗る。その塗工工程では箔に皺が寄りやすく、場合によっては破断してしまう可能性がある。銅箔の強度があると加工中のトラブルが起きにくく、顧客の安定生産に貢献する。

また、加工工程で熱がかかり銅箔が柔らかくなる特長がある。特に円筒形のリチウムイオン電池は充放電の時に電池内の活物質が膨張・収縮を繰り返す。その力が銅箔や形の変わらない物に繰り返しかかることで最終的に破断してしまう可能性がある。当社の銅箔は非常に高い伸びを持っているので、活物質の膨張・収縮に追随して破断しにくい。航続距離が長く、充放電の繰り返しに耐えられるため、長期間安心して使ってもらえる。それが大きな評価を得て広く使用されている。

―航続距離は他社製品と比べてどの程度長くなるのか
中島社長:具体的に他社と比べるのは難しいが、当社の電池用銅箔を使う電気自動車の航続距離は600キロメートル以上ある。そういった自動車はなかなかない。

遠藤取締役:電池自体の特性に由来するものだが、非常に高い加速性能を持つことも当社の銅箔を使用した電池を使う電気自動車の特長だ。

―新工場は2024~2025年に稼働するのか。生産数量は
中島社長:稼働する。需要によるが、今の日本電解全体と同様の生産量の工場を建てることも可能であるとして計画を練っている。今は月産1100トンだが2200トン規模になるぐらいの工場を作る。ただ、決定はしていない。

―新工場の設備投資の額はどのぐらいで、費用をどのように賄うか
さまざまな資金調達方法を検討している。

―借り入れや市場からの調達を含むのか
借り入れ以外のものも含めて考えている。

―需要が伸びる局面で米国唯一の会社をなぜ三井金属から買収できたのか。どのような経緯で取得するに至ったのか
他社がどう考えたのかは難しいところだが、当社は電池箔で成長してきた。米国市場が当時から伸びることは分かっていたので、米国で電解銅箔を作りたかった。生産の容量も日本ではほぼ満杯になっており、そこにちょうど回路基板用の電解銅箔工場があったのが縁だった。

―パナソニックを介してテスラにも販売しているのか
はっきりは言えないがパナソニックに販売しているので、その先はパナソニックのユーザーだ。

―テスラも自らEVの電池工場を立ち上げようとしているが、そちらとの交渉状況は
そこについては答えるわけにはいかない。いろいろな顧客と話をしている。

―パナソニックのテスラ株売却は事業に影響するのか
今のところはない。新聞情報でしかないがテスラとの関係性は変わらないと言われており、それを見たのみだ。

―全個体電地の開発が進んでいるが、完成した場合の事業への影響は
遠藤取締役:全個体電池は従来の電解銅箔では対応できない。加工の工程で、固体電解質を使うので密着性を得るために非常に高い圧力がかかる。従来の電解銅箔では強度が持たない。

また、固体電解質との接触面積をいかに確保するかが課題で、銅箔の表面形状を固体電解質に合わせた形に制御するために新しい技術が必要になる。先行している硫化物系の固体電解質と銅箔が反応する可能性もあり、それを防止する表面処理が必要になる。これらの技術は当社が培ってきた基盤用の技術の応用が利く。それらを駆使して顧客とやり取りしている。

―試作の状況は
具体的には答えられないが、当社から銅箔を出して評価されている段階だ。

―最近の半導体不足は事業に影響するのか
中島社長:間接的にはEVやHEVに影響するのではないかと推察するが、今のところ当社への影響はない。当社の販売先の電池メーカーの納入先の自動車の種類が半導体の影響を受けない、または優先的に半導体の生産が行われており影響を受けていないと推測する。

―脱炭素など非財務的なKPIを設定しているのか
電池の製造過程でのグリーン調達が非常に重要な指針となりつつある。米国では、40%は非炭素系のエネルギーを使っている。日本では今は難しいが、生産設備以外の部分で、太陽光発電などでのグリーン調達を図るべく計画を立てている。

―株主還元の方針とROEの考え方は
株主還元を当面は予定していない。今は内部留保を確保し、成長の投資につなげることが最大の還元と考えている。

山本洋一CFO:ROEは足元で若干落ち気味だが、2ケタ近いROEを達成したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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