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上場会見:サンウェルズ<9229>の苗代社長、PDハウスは300でも足りない

27日、サンウェルズが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1940円を18.56%上回る2300円を付け、2800円で引けた。パーキンソン病(Parkinson’s disease)専門の有料老人ホーム「PDハウス」を全国展開する。3月末の運営数は12施設・615床で、来年3月末までに20施設・1047床に増える見込み。北陸地方を中心に介護施設も運営する。苗代亮達社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

施設に入らないPD患者向けのサービスをサブスクリプションモデルで提供していきたいと話す苗代社長
施設に入らないPD患者向けのサービスをサブスクリプションモデルで提供していきたいと話す苗代社長

―株価がストップ高で引けたが感想は
ロードショーからもそうだったが、期待値が非常に大きいと感じているので、なお一層気を引き締めたい。投資家からいろいろな厳しい指摘や質問をもらえて、勉強になり、課題も強みも明確になった。さらに磨かれたことで、強化していける。

―進行期の前から看取りまで一貫して施設に入るのか
ほとんどの人が亡くなるまでいるのが現状だ。

―施設利用者の実質的な負担はどの程度か
全て込みで、関東で月額20万円前後で、福岡や札幌、北陸では12〜15円ぐらいと5万円以上安い。関東では家賃が8~10万円近くなる場所もある。

―PDでノウハウを確立したら末期がんやALS(筋萎縮性側索硬化症)に展開するのか
日本で300施設を運営できるキャパシティが優にあり、海外には800万人の患者もいるので、当社のみで独占とは考えていないが、トップシェアは取りたい。それを叶えるだけでも相当の年月がかかるので、PD1本でさらに深掘りしていくサービスのほうが役に立てると思う。

がんやALSに取り組む人は日本中にたくさんいるので、それは任せて、役割分担としてPDに関して日本でトップを目指す。その実績で、日本を代表する医師たちとともに、海外へ輸出できるような役に立つサービスを作りたい。

―300施設は展開できる最大の数か
今後どれだけ増えるか、年々増え続けているが、そのスピードにもより、法改正や制度の問題が出てくる。現状ではその程度の施設が必要なので、まだ増える可能性は十分にある。

認定を受けられない人が多い重症度1~2のPD患者は掴み切れていない。3~5の人には受給者証を発行するので正確な数を掴めており、14万人だ。1~2の人を含めると30万人を超えると見るドクターもいるぐらいなので、1~2の人たちが重度化していくことを考えると、今、施設に入っている患者が4万5000人いて、300施設でも1万5000床で、足りない。

―施設は全て直営か。また、施設数を増やすうえでフランチャイズ方式を採用し得るのか
全て直営だ。フランチャイズは今後の検討材料に入るかもしれないが、我々の業種は覚えてしまえばできてしまう側面もあり、よほどのネームブランドが付くか、提供サービスや機械を開発できるかという縛るものがないと、フランチャイズ抜けする会社ができてくる。法律でも縛れないのではないか。フランチャイズを行う会社のサービスが悪い、または人材の採用ができないという教育力や採用力が低い会社では、ブランドの棄損につながるので、慎重に考えたい。

―新施設を積極的にオープンさせていく計画だが、直近ではインフレで地価や部材も高騰している。それらはオープンに影響するのか
ないとは言えない。直近で建築費が5%ほど上がってきているので、今後はさらに1割程度上昇することも考えられる。ただ、利益性も普通の看護施設の倍近くあるので、利益が大幅に下がるほどではない。逆に、それによって出店を控える同業他社が出てくるので、ペースを変えずに、あるいは上げて出店したい。逆風にはならないのではないか。

―2023年3月期の予想業績の伸びは一過性のものか
基本的には、利益率が毎年上がっていく。店舗数も増えるが、毎年8店舗作っても利益効率がよくなっていく。本社経費や採用費など販管費は、スケールが出るほど割合が小さくなるので、負担が年々軽くなって利益率が毎年のように改善する。今期はまだ10%に到達しないが、来期は十数%、再来期にはさらに利益率が上がる中期経営計画を出している。

―今期に大幅増益した理由も利益率の改善によるのか
そうだ。前期は6施設保有した状態で6施設出したので、出店費用がかなり重い。上場準備などの本社整備にもかなりの費用を使った。採用費や集客にも使った。関東や関西でも知名度が高まっているので、集客も採用も時間を追うごとにスムーズになっている。費用負担も年々下がっていく。金額は上がっているが割合は下がっているので、売り上げの伸びが勝って販管比率が下がって、利益率が上がることがこれからも続いていくと想定している。

―VRリハビリ機器の効果を、原正彦医師と共同研究しているが、PD患者のリハビリをVRで行うのか
VRの機械を作って、PD専用のソフトではないものの、共同で実験して即時効果が認められる結果が出てきているので、今後さらに検証して、我々のサービスにしていくか判断したい。

―VRのリハビリではどのようなことをするのか
VR機器を付けると、上から球が落ちてくる、手を伸ばして卓球のようにボールを打つなど5種類ぐらいのゲームがある。反射スピードが神経に作用して歩行が速くなる、簡易上肢機能検査 STEF(ステフ)で球を移動させるスピードが速くなるので、さらに研究していく。

―VRのリハビリを行うことで得られた知見は、VRそれ自体の開発などに還元されることはあるのか
データの提供はしている。

―ホログラム遠隔診療など新しい取り組みの一環として、患者のコミュニティを作るとのことだが、患者を看る家族のケアに取り組む可能性は
新しく作っていくサービスが、ホログラムやメタバースなど遠隔で行えるサービスで、患者もそうだが、その家族にも寄与できるようになるのではないか。リアルに会うために出向くことや診療を待っていることは、物凄く負担になる。

身体的・時間的負担をかけずに自宅でもそのような環境を作れる。順天堂大学がマイクロソフトと共同でメタバースクリニックを開発しており、それとも連携できると見ている。我々はドクターではないのでリハビリや服薬指導を担う。

今、「パーキンソン病友の会」という患者同士の全国組織があり我々も連携しているが、(リアルの世界では)少し症状が出始めると通えなくなる。情報交換をして相互に励まし合うことが患者の心の支えになるので、そのようなものをデジタルやテクノロジーの力を借りてさらに盛んにしたい。

―配当政策は
今まで30%前後で配当してきたので、株主還元で続けていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]