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上場会見:守谷輸送機工業<6226>の守谷社長、冷凍冷蔵・貨物に自信

17日、守谷輸送機工業が東証2部に上場した。初値は公開価格の810円を1.23%上回る820円を付け、748円で引けた。同社は、横浜市に本社を置く1950年創業の荷物用エレベーターメーカー。物流倉庫などに設置する中大型の業務用エレベーターの製造・設置から保守・修理まで一貫して請け負う。かごの積載量は2トン以上で、フォークリフトの使用にも耐え得る。守谷貞夫社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

守谷社長は、業績やビジネスモデルのほか、劇場の舞台裏に備え付けるエレベーターなど特殊な使用状況が想定される導入例を複数紹介した
守谷社長は、業績やビジネスモデルのほか、劇場の舞台裏に備え付けるエレベーターなど特殊な使用状況が想定される導入例を複数紹介した

―上場のタイミングについて聞きたい。最近マーケットが荒れており、上場を土壇場で延期する例もいくつかある。市場の環境を見て延期を検討しなかったのか。上場を決断したのはなぜか
マーケットの話なので我々にいかんともし難い部分がある。これまで3年間積み上げてきた内容を実現するために、延期は全然考えなかった。業績にしても、企業として弱点はないと思っている。マーケットの悪い時に上場して、株価がちゃんと付かなかったらどうしようということは一切考えずに、予定通り実行した。それはもうしょうがないと思っている。

―初値が公開価格を少し上回り、終値は下回った。これについての感想は
我々が感想を言って何とかなるなら言うが、全てマーケット次第という世界なので、それもやむを得ない。いずれマーケットで戻るであろうと高い安いに一喜一憂はしていない。

―大手も撤退するような荷物用エレベーター市場はかなり難しいようだが、そのなかで業績を伸ばすことができた理由は
我々は、昭和25年(1950年)の創業以来、貨物用のエレベーターに特化してきた。人が乗るエレベーターは既に大手が量産しており、今さら参入してもなかなか追い付けないため、初代の社長が冷凍倉庫用のエレベーターを専門にしていた。冷凍倉庫用は非常に難しい。夏は外の気温が 36度、庫内が(マイナス)30度の状態で稼働するため、エレベーターが動く昇降路に水滴が落ちる。電気系統を完全に防水にしなければすぐに故障するが、そうするととてもお金がかかる。

例えば、ニチレイやヨコレイ(横浜冷凍)、大洋水産、ニッスイ(日本水産)といった大手では、ほとんど我々のエレベーターを使ってもらっている。そのようなところで修行して、貨物用の大きなものは絶対に得意だ。その技術を生かして冷凍倉庫から普通倉庫へ転換したので、性能・コスト的にも絶対に自信がある。大手業者は貨物用も手掛けていたが、特に冷蔵庫に関しては難しいので一切手を出していない。そのような技術の蓄積があって、大手以上の貨物用の技術を取得した。大型エレベーターについては絶対の自信を持っている。

例えば、半導体を作っているキオクシアや、東京エレクトロンの(エレベーターを)全部まかなっている。また、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車の研究所に設置する大きなエレベーターを当社でほとんど一手に手掛けている。

―足元で鋼材価格が上昇しており、流通の混乱もあるが、業績に与える影響やそれらへの対策は
半年ぐらい前からそのような傾向がある。単純な部品は中国で加工して、それを持ち込んで日本で組んでいる。中国では、鋼材の値段が非常に上がり、それに加えて円安で、両方でコストが3割ほど上がっている。それをどうクリアするか、中国以外でベトナムやタイを新たに開拓し、生産を依頼しようとしている。これまでは、価格が上がったものは、原価を低減して、購買部で一定の減額をしてペイしていた。現在ではそれが追い付かなくなり、コストが上がって困っている。

―3月16日の地震では、関東地方でも震度4の地域が複数あった。点検をしなければならない業務用エレベーターは何件ほどあり、どのぐらいで全て復旧できそうなのか
点検するものは、貨物であれ乗用であれ全く同じ規則で運用している。震度4以上(の地震で)は、全て職員が行って、昇降路内の安全を確認してから動かすことになっている。現在分かっているところで、6台を除いて全て復旧している。

エレベーターはウェイトとかごが連結しており、ウェイトのほうが重い。ウェイト側のレールが曲がって、すぐに動かないものが6台あった。まだ電話で聞いた限りだが、手を打って動かせるようにするのが我々の大きな使命で、災害があった時にできるだけ早く動かして、顧客が使えるように取り組んできた。それには自信を持っている。

宮本公夫常務:13時現在で、地震管制が働いて98件・142台の連絡が入っている。全てを回り切れていないが、分かったところでは、停止して対応しなければならないのが、合計6台という状況となっている。現在、現地に向かって対応中で、人身に関わるもの(人を閉じ込めているもの)はない。

―滋賀大学との研究の提携で、データを生かして事業に役立てたいとのことだが、例えば、データからの故障予測を通じた内部での効率化実現などを想定できるが、どのような青写真を描いているのか
守谷社長:データサイエンス学部が国立大学に初めて設置され、データサイエンスが最も進んでいると言われている。

過去の故障事例を全部整理して、強度を増す部分と引く部分を区分けする。増すところはきちんと補強し、必要でないところは軽量化することで、故障の発生率を下げ、発生後の故障対応力を高めようとしている。非常に奥が深いが、デジタル化と一緒に行い、生産効率を上げる方向に進んでいる。

榎本晃総務部次長:大きくは、2つのステップを考えている。1つ目は、社内のいろいろなデータを1つのビッグデータにして、どんな加工ができるかをまとめる。2つ目は、滋賀大の知恵を拝借しながら、いろいろなサービスや業務効率化につなげたい。いろいろな切り口があり、まずビッグデータ作り上げたうえで、さまざまなテーマをともに研究したい。

―直近では、エレベーターの設計への応用か
守谷社長:それはほんの一部だ。

―首都圏で冷凍冷蔵倉庫が不足するのではないかと以前から言われているが、需要の伸びや見通しをどう見ているのか
宮本常務:確定的なデータを収集していないため答えることはできないが、都内にある冷蔵庫が老朽化しており、今、プロロジスやGLPなど物流のプロバイダーが、冷蔵倉庫対応の物流施設を作る動きが出ている。

(既存の倉庫を)壊すためには、(荷物や荷主を)どこかに移さなければ壊せないので、その対応として大きなプロバイダーがそのような動きを始めたのは事実だ。今後、プロバイダーが動くなかで、旧来のものを完全に潰す形で移るか、もう一度元に戻るかという動きが加速すると見ている。

全般として、物流倉庫は増えており、トラックのドライバーが不足するから共同物流のために地方にハブ的な倉庫を作らければならないとして、その動きはこれからも増えていく印象がある。ECの(伸長による)フォローの風もあるが、(荷主側に)ノンアセットのような、(倉庫や物流施設を)買わないで借りていこうという動きが徐々に強くなり、プロバイダーが作る倉庫のニーズが増えるのではないか。

榎本次長:受注残が出ている。第3四半期の受注高91億円に対して受注残110億円で、売り上げを超える受注残を抱えている。これ以外にも断っている案件もあるため、マーケットは好調で、我々の業績としても今後も良い方向に動くと見ている。

―船舶用エレベーターをアジア市場で展開しているが、今後の海外戦略は
守谷社長:今、まさにそれを手掛けている。特許庁に特許を申請しているエレベーターがある。それは、従来にない昇降路が狭い場所にも収まるエレベーターだ。商船にも使うが、観光用のクルーズ船に使う。これは1隻で20 台ぐらいを設置するので、けっこうな商売になるし、それを狙っている。波が出たり、風が吹いたら止めなければならないかなり難しいエレベーターだ。

―今後のROEの考え方は
榎本次長:今後、会社の経営指標として注目していかなければならない。いかに高めるかが経営課題の1つだが、具体的にどのような手立てでというものは具体的にはない。KPIとして重要視していく。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]