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上場会見:BeeX<4270>の広木社長、マルチクラウドを素早く

24日、BeeXが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1600円を134.38%上回る3750円を付け、4155円で引けた。同社は、テラスカイ<3915>の子会社で、基幹システムをオンプレミスからクラウドへ移行するクラウドソリューション事業を手掛ける。インテグレーションとMSP(マネージドサービスプロバイダ)、ライセンスリセールの3つのサービスを展開。広木太社長が同日の正午に東京証券取引所で上場会見を行った。

公開価格以上の買い気配についての質問に対して、広木社長は、
公開価格以上の買い気配についての質問に対して、広木社長は、期待と責任を感じていると話した

―親会社がテラスカイで、SAPに強みを持つBeeXが外に出てきたように見えるが、狙いは
テラスカイ自体はSalesforceがメインだ。IaaSとPaaS、SaaSのうち、彼らはSaaSの部分のみをメインで手掛けている。我々はIaaSとPaaSをメインで行う。同じグループ会社でクラウドを扱っているが、住んでいる場所や狙っている事業が違う。Salesforceは営業主体で、我々は情報システムや現場など刺さっている顧客も攻める場所も異なる。

営業的にも別で動くことが多いので、独立性を持って進める。かつ、我々は大規模顧客向け(のサービス)を手掛けているので、信頼してもらうためには、自身が上場して独立し、信頼できる会社であることを伝えたい。SAPに関しては、テラスカイの看板を掲げても効果があるわけではないので、我々自身のブランディングが大事であり、上場がその1つの手段と考えた。

―テラスカイではそれほど…
SAPのイメージはなく、残念ながらSalesforceのイメージしかない。

田代裕樹副社長:対象とする先が全然違う。同じ会社のなかでもいわゆる利用部門の上のほうに行くのがテラスカイで、我々はIT部門に行っている。営業する先が違う。顧客の規模が大きいので、意外に横連携もないため、我々が独立していることに意味があると思う。

―上場によって営業しやすくなる
広木社長:上場により、DXもしっかり独立してやっている会社ということで、それが1つの狙いでもあり、プラスになる。

―SAP向け事業について聞きたい。2027年にSAP ERP6.0のサポートが終了することで、
ユーザー企業は、クラウド化やバージョンアップを選択するが、実績として、日本でSAP ERPのユーザー企業は何社ぐらいあって、現状ではどの程度がクラウド化やバージョンアップを終え、そのなかでBeeXは何割程度のシェアを獲得しているのか
ユーザー企業数はSAPが公開していないので、私から伝えるのは難しい。アップグレードの市場に関しては、どこも具体的な数字は出していない。ただ、クラウド化は進んでいるが、新バージョンへの対応は、ここで変な数字を出して間違っているとまずいので、資料があれば提供したい。

新しいバージョンに関しては1~2割でしか進んでいないと見ている。SAPを使っている顧客は数多あるので、何%を取りにいくということは難しいが、シェアを何%取ろうということは特に考えていない。我々の特長を活かせるところで取っていきたい。

―新バージョンへの移行が進んでいないとのことだが、クラウド化を指すのか
新しいバージョン=クラウドではない部分がある。(新バージョンである)S/4HANA(エスフォー・ハナ)には提供形態がいくつかあって、我々はクラウド専業とは言いながら、サーバーを調達してオンプレミスでS/4HANAにしている顧客も存在する。

―クラウド化を狙っているので単純なバージョンアップは
クラウド化と、単純なバージョンアップの両方を行っている。クラウドとバージョンアップを両方提案しているが、最終的にはオンプレミスを選ぶがバージョンアップを手伝ってほしいという話を受けることが多い。その時の状況や顧客との関係によるが、受注しているので、結果的にオンプレミス上でSAPのバージョンアップや導入をすることもある。

―割合としては多くないのか
それほどは多くない。

―富士通のメインフレーム生産撤退のニュースがあったが、顧客からの新しいニーズはあったのか
富士通やIBMなどメインフレームのものをオープン化する動きは、2000年代初頭からある話で、いくつかあったが、我々に具体的にというのはあまり多くない。手組みでガリガリ作られているものなので、そこは面倒を見ている大手SIerでなければ直せない部分が多い。

―クラウドに移行するというよりは、一旦(状況に)明るいSIerに入ってもらうということか
そうだ。ただ、SAPの新規導入に関しては、2000年初頭に導入ブームがあり、そこで入れてこなかった顧客が市場に存在している。そこが、業務に合わせていこうと新規に導入することはある。そうなると新しくSAPの導入を受注することはある。

―投資家が、大規模顧客への依存を心配する側面がある。安定的に増収増益を目指していきたいとのことだが、売り上げの面である程度のボラティリティがあるのか。見通しを聞きたい
一昨年は、かなり大きな売り上げが1社であったが、今期は通常に戻ってきた。特に今期は、ライセンスやMSPに関しては多様な顧客を獲得できている。これまでは、どちらかといえばシステムを構築して、そこから保守(につながる)という感じが多かったが、「初めに保守からやってください」というものもあり、事業の多様性のようなものは伸びてきた。

田代裕樹副社長:営業戦略上、1つの打ち手としては、我々のパートナーとの協業がある。具体的には、ローカルで頑張っているパートナーとの協業を広げていく。ローカルは依然としてパブリッククラウドに進むスピードがやや遅いと思うので、我々がローカルのパートナーを支援しながら、地場企業のクラウド化を推進していく。我々の大手企業依存という話がどうしても出てくるが、中堅企業にもそのスキームによってタッチできるように、取り組みとしてはスタートしているが、来期以降の布石として打っている。大手依存を少し変える試みも始まっている。

―ローカルのパートナーとはどのようなものか
例えば、データセンターを自社で保有し、地場の企業にオンプレミスのサーバーをセンターに置いて、システムを構築した提供しているような会社だ。地方に結構あるので、その顧客のクラウド化を進めていくための支援を行う。

―中堅企業にSAP導入支援を広げるとのことだが、SAPのどの辺りのサービス導入をメインで行うのか。どのようなマイグレーションやDXのニーズが多いのか
広木社長:中堅以上の大手が多い。そのなかでどのような会社を狙うかというと、当社には業務や会計のコンサルタントはあまりおらず、横串のテクニカルなところを中心に手掛けている。クラウドにどう移行して運用していくのか、新しいバージョンに上げていくテクニカルな手法などを中心に扱っている。

顧客ニーズとしては、2027年に保守が切れるが、単純にクラウドに移行したいという顧客がまだ多く、半分ぐらいを占めている。現状のものを長く使いたいという顧客がまず1つ。あとは、S/4HANAという新しいバージョンを新規に導入する、あるいは、コンバージョンする流れがある。中堅・大手に限らず、大手だからS/4HANAが進んでいるかというとそうでもない。お金がかかるので中堅ではS/4HANAの導入は遅れている。このような会社に対して、いかにクラウドを使って早く効率的にできるかというサービスを提供している。

―同じ分野の競合他社との違いは
同じ分野と言った時には大きく2つある。1 つは、どちらかというと総合力で勝負しているようないわゆる従来型の大手SIerだ。我々はクラウド専業で、例えば大手で 1 年かかるものを我々は半年でできると、クラウドをよく熟知してる人によって提案ができる。セキュリティーやガバナンスを含めて、しっかりと運用できるように提案している、あるいはスピード感のある導入スケジュールになっている点が特長だ。

もう1つの競合として、我々のような100~200人規模のクラウドインテグレーターが日本にいくつかある。それらに対しては、複数のクラウドを提供し構築・運用することが差別化となっている。大手に対してはクラウド特化、クラウドインテグレーターのなかではマルチクラウドというのが差別化要素だ。

―同じ土俵にいるクラウド専業やマルチクラウドに対応できるライバルは多いのか
マルチクラウドはあまりいないと思う。AWS ともう1つを手掛けている会社はあるが、3つともやっているところはあまりない。あとは、我々の親会社のサーバーワークスは別の会社を作っている。彼らは専門性を強みにしている部分があるので、そこは少し違うのではないか。

―3事業のサービス別利益率の割合は
公開していないので説明は難しいが、比率ではMSPの利益率が非常に高く、その次にクラウドインテグレーションが高い。ライセンスリセールは販売するものなので利益率が少し落ちる。

―利益率の部分でSAPは半分ぐらいを占めているとのことだが
売り上げとしては半分ぐらいがSAP周りだ。利益も半分以上となっている。売り上げ・利益ともと考えてもらえるとよい。

―コロナ禍の影響は
各論で見ると例えば、(顧客で)部品が入らず製造できずにプロジェクトが一旦止まることはある。ただ、IT業界で全体的な話とは思うが、コロナ禍によってDXを進めていかなければならないため、プラスになることが業績面では大きかった。働き方改革など分かりやすいものではないので特需的に上がり、急になくなるというものでもない。しっかりとDXやコスト最適化のためにクラウド化するという中長期的なプラスが大きい。

―在宅勤務が増えていることを機にDXやクラウド化の推進という面は
そういう面はある

―中長期的な業績目標は
今期が閉まってからになる。今期は、発表しているもの以上の数字で確実に着地できそうではある。減益となったが、来期以降は、再度巡航速度で上げていける。

―中長期的な目標はあるのか。中期経営計画のようなものは
内部的には持っているが、外には公開していない情報なので、次の決算発表で提示して話すことができればと思う。

―SAPの移行に関する人材不足がよく言われるが、競業に比べてどのような強みがあるのか、人材に関する戦略は
人材に関しては、どのぐらい採用できるかという課題はある。1つは、他社に比べて、テクニカルレイヤーとビジネスインテリジェンス(データ分析)に特化しての採用・育成ができている。ただ、今は人材不足であり競争が激しいので、次の打ち手をいろいろと(模索しており)、上場も人の採用にプラスになるのではないかと期待している。市場に、回せるだけの人が足りていない状況なので、プラスアルファの施策を取っていきたい。

田代副社長:採用に苦労しているのは業界全体と変わりはない。我々のエンジニア自身が、技術的な部分に触れられるので、満足している社員が多い。(既存の)エンジニアの紹介で入社してもらえることも多く、今期もその割合が非常に高い。この傾向が続いているのは当社の特長と理解してもらいたい。

―年間にどの程度の人数を採用したいのか
来期は、エンジニアを中心に20~30人ほど採用したい。120人の人員を来年に200人にしたいといった大それたことは考えていないが、少しずつ比率を上げていきたい。

―海外展開の計画は
SAPなどグローバルで使っているシステムが多いので、国内の顧客のグローバル対応をしっかりできるように、一部で始めているが大手に比べてまだ見劣りする部分だと思うので、しっかり取り組んでいきたい。海外展開はグループ全体でやっていくことは今後になる。まだ具体的なものはない。

―セキュリティーソリューションに関して、SOAR (Security Orchestration, Automation and Response)などのライセンスを販売するのか、自社で提供するのか。具体的に聞きたい
基本的には、我々で何かを作るというより、セキュリティ製品をかついで、それを使った運用サービスを提供していく。今はテックポイントの製品などを使って、システムのガバナンスや脆弱性を診断して定期的にレポートし、改善を提案している。

―サイバーセキュリティというよりは、システム全体の管理統合をするのか
相談を受けるのはその部分が非常に多い。どちらかといえば堅い会社(との取引)のほうが多いので、今すぐの外部の凄い脅威よりも、ガバナンスをどう効かせるのか。クラウドは少し間違うと変な穴が開いていることが多いので、それを可視化して自動で直していくものを提供したい。

―ROEの見通しと配当の考え方は
配当に関しては、現時点のステージでは成長に投資していくことが重要と考えているので、当面はその形を取りたい。ゆくゆくは配当も行っていきたい。

竹林聡取締役:現状を高めていきたい。

―国産パブリッククラウドが、ガバメントクラウドに力を入れたいという話が出てきている。それらの動きを事業との関係でどう見るか
広木社長:基本的には、今のところ海外のパブリッククラウドが、特にDXの実現においては、コストやアジリティー、開発力の面で、まだまだ(頭1つ)抜けている。製造業や新しいことをやっていきたい顧客に関しては、海外のパブリッククラウドに集中して行っていきたい。

―クラウドとオンプレミスをハイブリッドで運用する動きが増えるという話もあるが
オンプレミスでなければ動かないシステムはある。例えば、工場の現場にあるシステムはあるので、ハイブリッドな形になっていくのは間違いない。一方でクラウド化できないシステムはそれほどあるわけではないので、圧倒的にクラウドにシフトして、今後、5Gやネットワークの通信が上手くなると現場に置いたほうが良いシステムもあるにはあるので、そこはハイブリッドで残っていくのではないか。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]