株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:CINC<4378>の石松社長、“検索”市場を全て獲る

26日、CINCが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(3080円)を28.2%上回る3950円を付け、3830円で引けた。デジタル・マーケティングの調査・分析ツールである「Keywordmap」や「Keywordmap for SNS」を開発・提供するソリューション事業と、コンサルティングを行うDXアナリティクス事業を展開する。石松友典社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

マーケター不足とプラットフォームが増える環境下で、契約件数の増加と単価の向上、プロダクト数の拡充を成長戦略として掲げる石松社長
マーケター不足とプラットフォームが増える環境下で、契約件数の増加と単価の向上、プロダクト数の拡充を成長戦略として掲げる石松社長

―終値が3830円と公開価格を上回っているが、感想は
喜ばしいことであるとともに、とても身が引き締まる。役員・社員ともに業務に邁進して業績を向上させ、中長期でしっかり株価を上げながら投資家の信頼を勝ち得ていきたい。

―Keywordmapの顧客の6割は事業会社だが、業種・業態ではどのようなところが多いのか
結論から言えば、業種や業態、売り上げの規模はバラバラになっている。コロナ禍のなか、また、正常化した後でも、インターネットから売り上げを上げていかなければならないのが、各業界の会社全てが共通の経営課題と捉えており、どこかの業態に偏った取引ではないというのが我々の調査から出ている。

―内外の競合と差別化要素は
ここで具体的な競合名を出すのは難しいが、Keywordmap とKeywordmap for SNS、DXコンサルティングでそれぞれ違う。

Keywordmapでは、海外でNASDAQに今年上場した2社が一部の機能で、ユーザーの使い方によっては競合となる。SaaS型のキーワード分析ツールで上場しており、このツールは、グローバルでこれからトレンドとなるようなマーケットになっていく。国内では、先手で上場している会社はなく、我々が最初の上場企業と考えている。一部の機能に関して、ユーザーのニーズを調査する機能を持ち、コンペでバッティングする未上場の会社はある。

Keywordmap for SNSでは、上場企業が2社あり、両社ともソーシャルインサイトという機能で近いものがある。ソーシャルインサイトは、Twitterでツィートした後に、キャンペーンを含めてどういった反響があったのか調査するものになっている。我々のコンセプトは、自分たちが獲得したいユーザーのためにどのようなコンテンツを作っていけばよいか調査・分析する機能がベースになっている。コンセプトを含めてこのような機能を提供していた会社が過去にないので、我々のソリューションの話をすると、ほぼノーコンペで契約してもらっている。

DXコンサルティングは、統合的にマーケティングの戦略部分から入り、顧客のマーケティング課題を、どの優先順位で進めることがよいかコンサルティングを行っている。一般的なデジタルマーケティングの会社は、コンテンツマーケティングやSEO、SNSマーケティングもTwitterのみ、アクセス解析のみなど分けられたサービスを提供することがほとんどだ。

これは部分最適をするような会社だが、我々は顧客の課題の優先順位に応じてスイッチングオプション(1つのコンサルティング契約内で1ヵ月ごとに施策の変更が可能)ができる。部分的には様々な会社と競合するが、統合的なマーケティング戦略と説明すると、我々と契約してもらえるケースが多いと思う。

―スイッチングオプションの提供という点から、フルファネル型のマーケティング支援を行う立ち位置にあるのか
そうだ。

―そうすると、例えばAppier Group<4180>が提供するサービスと似ているのか
Appier GroupはA/Bテストからの最適化と、そこにおける広告(に関わる)と思う。我々のソリューションは、認知・興味・関心・検討という形で、そもそも広告だけでは集客に限界があるなかで、検索ユーザーをしっかり獲得していく。そのためには、ユーザーがどのような意図で検索するのかというニーズを全て把握したようなキーワードを調査・分析しながら獲得しなければならない。

簡単に言えば、検索というマーケットを全て獲っていきたいと考えている。GoogleやTwitterの検索を含めたキーワードを我々が保有していることで、集客のキーワードを分析するデータを大量に保有する会社という建て付けになっている。

―2021年10月期第3四半期から第4四半期に売り上げは1.3倍となるが、営業・経常利益は微減となっている背景には何があるのか
上場の準備として人材を強化してきた。管理部を含めた内部管理体制を整える人員の補強も行ってきた。同時に、今後の中長期的な成長戦略のために、Keywordmap for SNSを含めたエンジニアや販売の体制強化など人員増加に投資したことで、直近の利益水準となった。

―開発とコンサルティングの人材を確保することは大変だと思うが、確保策に特徴はあるのか
開発人員は、場合によっては採用難度が非常に高くある程度苦労している。その分は業務委託の開発者の支援を受けながら、しっかりエンジニアリングの人員を確保している。一方、販売体制やコンサルティング人員は、新卒と第2新卒で採用している。そこから半年~1年、場合によっては1年半~2年と時間をかけて人員を育てることに、創業当時からこだわっている。新卒や第2新卒を中心としながら、事業拡大(局面)では、事前に教育する期間を含めて採用し、成長している。今後も引き続きそれをしっかり達成していきたい。

―今後は、ソリューション事業のほうが成長のドライバーになるのか
コロナ禍で、インターネットからの売り上げを上げたいとのことで、よりサポーティブな形でのDXを依頼する顧客の引き合いが非常に多くなっている。ソリューション事業だけでなくDXコンサルティング事業も同じく30%以上の成長を達成していきたい。

―成長戦略での商圏の拡大とは
我々はインターネットから見込み客を獲得することがほとんどで、展示会に出展して、名刺交換を起点にウェビナーの開催やメールを送り、興味がある顧客にソリューションの価値を感じてもらいながら契約を得る。だが、そういった場所になかなか来られない顧客もいる。限られた地域のなかで情報を交換し、オフラインのイベントにしか参加できない会社もある。地域に根付いた代理店と共同で我々のソリューションを提案する。インターネットを通じてしっかり売り上げを上げることで、限られた商圏のなかで売り上げ・利益を上げていた会社が、素晴らしい商品やサービスを全国や世界に売れる形で広げていきたい。

―統合的なマーケティングプラットフォームを作っていきたいとのことだが、TwitterのデータはNTTから直接購入しているのか
基本的にTwitterのデータは、NTTデータが日本の代理店として専売しているので、日本から買う場合には直接買うしかない。場合によってはTwitter社から取得する形となる。当社としてもデータの取得元は目論見書に一部記載しているが、リスクと考えているので、今後は様々な形で我々のサービスが止まらないための方策を講じたい。

―InstagramやほかのSNSについても今後、同様にデータを取得していきたいのか
次のソリューションについては、これからなので、どのように情報を取得できるかを含めて研究開発を行いながら、我々のソリューションのアウトプットとして業務の効率化ができ、より成果が出るような顧客価値を提供できるかを、どの部門が担うべきかも含めて検討したい。

―ほかのSNSへの進出にどのぐらい時間がかかるのか
KeywordmapからKeywordmap for SNSまでは、大体3年かかった。SaaSのプロダクトであるので、リリースしてから徐々に機能を開発して、売れるようになって、さらに機能を改善して使い続けてもらう。そこまでに大体2~3年かかっている。Keywordmap for SNSはまだ2年ぐらいなので、体制強化も含めて2~3年ほどで次のプロダクトをリリースできるように、今回の調達資金(での投資)も含めて体制を強化したい。

―調達資金の使途に広告費がなかったように思うが、営業キャッシュフローで賄えるのか
広告宣伝費についても活用すると記載しており、今後チャネルを広げていくことを検討したい。

―コストの見通しについて
現在のところ来期の数字については公表していないので、開示するタイミングで改めて説明したい。

雨越仁取締約:資金使途のなかに採用の拡大や、新サービス開発のなかに広告宣伝費も含まれている。(売上高)成長率30%を目指しており、そういった項目については、売り上げ対比では成長に応じてなだらかになっていくと見ているが、絶対額は増えていく。

―WACC(加重平均資本コスト)とROIC(投下資本利益率)について
資本金1000万円で、自己資本で運営してきたので、そういった指標は今まで特に重要視してこなかった。今後、そのような指標を、ターゲットを置いて目指していくが、現時点では特に目標となる数字は考えていない。

―そうすると、今後は決算説明会などで提示していくのか
今はどちらかといえば売上高成長率と利益、増収増益を株主に見せていきたいが、上場で調達した資金で投資なども行うので、投資対効果や資本に対してどの程度リターンがあるのかを将来的には説明したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]